汰介の過去2 <幼少期編2>
僕には親友がいた。名前は名乗らず、ただ「フロウ」と呼んで欲しいとだけ言われた。フロウは一年生の頃から仲良くしてくれている。
この頃に至っては小学生とは思えないほどに気遣いが丁寧だった。
ヒソヒソ話を見かけたら少しテンション高めで話を振ってみたり。相談に乗ってくれたり。その後に彼がなんと言われているかも僕の耳には入っていた。それでも彼はその気遣いをやめなかった。
訳を聞いても、押し黙るだけで何も教えてはくれない。そんなところまで気を使わなくてもいいのに。
6年生にもなって、卒業を近く控えたある日。
僕はとうとう1年半片思いしていた子に想いを伝えるべく、放課後その子を呼び出すことにした。その日は小テストがあったらしいが、全て空白だった。
後日家に帰ってから母親に死ぬほど怒られたのはまた別の話。
待ちに待った放課後。体育館の裏で待ち合わせ。
足取り軽く体育館に向かっていると、聞こえてきたのは数人ほどの高めの笑い声。
「ところでさ、あんた今日呼び出されてなかったっけ?」
「あーあのうるさいやつ?いいんじゃない?すっぽかしちゃえば」
「やだ〜w最低〜w」
「だってどうせ告りに来るんでしょ?あんなん彼氏とか無理ww校長と将来結婚した方がマシww」
「ひっどぉ〜ww」
足が止まった。回れ右の態勢をとったが直立に戻った。
このまま帰ることは僕の良心が許さなかった。
その後の記憶はない。おそらく目的は果たしたのだろう。
次の日になってもその子らは何も言ってこなかったから。
春は別れの季節。桜と共に地面に落ちるのはしょっぱい水滴だった。