今はなき、影法師
あれは俺が小学生のころ。家族でバーベキューをしにキャンプ場のある山に行った。何かの記念日だった記憶があるが何の日かは忘れた。
「和希。遠くに行っちゃだめよ。」
両親がバーベキューの準備をしている間、俺は川に泳いでいる魚に興味津々だった。
「すげぇ、あのおっさん魚に負けていない。」
もう少し細かく言うと上流へと泳ぐ川魚と競争して泳いでいるパンイチのおっさんに興味津々だった。
「あ、おっさんが浅瀬で腹を突っかかってる。必死に水を掻いているけど全く進んでない。」
無様にもがいているおっさんは、駆けつけてきた警察官に上着を着せられ、連れていかれているのを見届けると、俺は森の方へと目を向ける。そこには、七色に光る蝶がいた。
「あれ新種じゃね。もし、捕まえたらノーベル賞もらえるんじゃね。不労所得の生活できるんじゃね。」
俺は、小学生のころからがめつい奴だった。そして。誰にも言わずに森へと飛んで行った七色の蝶を追いかけていった。
「見失ってしまった。蝶も道も。」
案の定、遭難した。
「さて、どうしようか。」
周りには木と草が生い茂り、人が通った形跡もない。もちろん人の気配なんてあるわけもない。
「……ひっぐ。」
いくらがめつかろうとまだ小学生だ。静かな山の中、一人になると不安で涙があふれる。
「ぱぱぁ、ままぁ」
ニャ―
その時、小さな鳴き声が木の上から聞こえた。そこには、少しやせ細っていたが優雅で、堂々とした姿のキジトラ柄の猫がいた。猫は、木の上から華麗に飛び降り、着地した。
「猫ちゃん?」
猫は、二足で立ち、ムーンウォークをしたり、何もない手から花を出すマジックをしたりと普通の猫ではなかった。
その姿を見た俺は自然と涙が止まった。
ニャ―
猫は、俺に赤い木の実をくれた。なんの木の実かはわからないが、俺はそれを食べた。少し渋かったがおいしかった。
猫は、食べたのを確認したらまるでついて来いと言っているように、歩き出す。俺はそれについていった。不思議とこの猫についていけばどうにかなる、そんな感じがした。
猫は、俺がついてきているか確認するように何回も後ろを向いていた。今思えば、崖になっているところとか危険な場所を通らないようなルートを進んでいたような気がする。賢い猫だ。
ぐおおぉぉぉ
森の中を歩いていると後ろから野太い叫びが聞こえた。振り返るとふさふさの毛をした黒い獣に出会った。
ある日 森の中 くまさんに 出会った
恐怖で動けない俺の前に猫は、かばうように立ち、くまを威嚇していた。
ニ゛ャ―
猫は、動けない俺を気付けるように聞いたことないような大声で鳴いた。まるで、ここは俺に任せて先に行けと言わんばかりに。
俺はその声に背中を押され、立ち上がり逃げ出した。俺が振り向いたとき、猫はくまに飛び掛かったが、くまの腕で吹き飛ばされた光景を見た。そしてクマは、吹き飛ばした猫の方へと向かっていった。
俺は、その光景の恐怖で、無我夢中に逃げた。山を下り、道に出た時通りかかった人に救助された。
その後のことはよく覚えていないが、両親に泣きながら抱きしめられたことと一時間強くらいトイレにこもったことは覚えている。
俺は、このこと以降にチャオ〇ュ―ルを持ち始めた。まるで、あの猫に感謝するように。そして、自分もあの猫のように強くなりたい。そして、今度は自分が困っている人たちを助けてやりたい、助けてやると誓った。
親の事情で引っ越して一週間。俺は、この町をぶらぶらと探索していた。公園の近くを通ったとき、小学生ぐらいの女の子が、木の上を見て困ったような顔をしている。木に風船でも引っかかったのか。そう思い、木の上に目を向けると
俺は、命の恩人(あの猫)の幻影を見た。
これにて、今はなき、蛮勇者編 終了です。
これまでと微妙に違ったテイストの話になりましたがいかがだったでしょうか?自分的には何だかな〜という感じです。そのため感想をいただければとても嬉しいです。
タイトルは、複数の意味を込めて書きました。考えてみてください。
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