きりたちのぼる あきのゆうぐれ
百人一首大会当日。二年生全員、体育館に集まっていた。
「これで全員か。実際に見ると前の学校より少ないと感じるな。」
「ふむ。前の学校はどれくらいの人数だったのかな。」
「ろくでもない奴らしかいなかったが、一学年五百人ぐらいいたな。」
まぁ、ここも人数は少ないが癖の強い奴ら多いけどな。
「よぉく集まったなてめぇら。」
スピーカーから聞こえてきた声の主であろう、体育館のステージにいる人物に目を向ける。その人物は、服を着崩しており、ズボンにチェーンを付け、ピアスを付けているいかにも柄が悪そうな人物であった。
「おい、やばそうな人がいるぞ。あれは誰だ。」
「あれは二年の学年主任の薬膳先生ですね。」
担任主任のビジュアルじゃねぇだろ。絶対あっち側に足どころか全身使っている人だって。俺たちのことてめぇらって言ってるもん。
「これからぁ、百人一首大会を始めるぞぉ。ちゃっちゃと配置につけぇい!!」
人を殺しそうな迫力で開始宣言をする。
俺たちは、あらかじめ指定された場所へ向かう。後半組なのではじめは審判をする。
「おう、お前らが審判か。」
御手洗が話しかけてくる。はじめは、この二人の試合を審判するのか。
「んで、ちゃんと金は用意したんだろうな。」
「なんで、八百長を促されなきゃならんのだ。別にしなくても勝てるわ。」
「何言ってるんだ、隆。八百長しなきゃ俺たちに勝ち目なんてないんだから、十万は用意しとけとあれほど……。」
「八百長のやの字も聞いてないぞ。」
「そうだぞ。お前には、金の力がないと勝つことはできねぇよ。」
そう発言しながら、宍浦が寄ってくる。
「なんで、お前がここにいるんだよ。」
「あぁん、あたしが来たらダメなのかよ。」
混ぜるな注意というやつだな。
「明美ちゃん、落ち着いて。」
宍浦を追ってきたのか、後ろから気弱そうな女子が仲裁に入る。
「ちっ、唯に感謝するんだな。」
「こっちのセリフだ。加納に感謝しろ。」
舌打ちをしながらも、唯という子のいうことを聞く宍浦と御手洗。なんだ、どっかの御曹司とかなんかなのか?
「落ち着いたかな。では、なぜ宍浦氏と加納氏はここへ?」
黛が、疑問を呈す。
「それは、ここが一戦目の所だから。」
この二組が戦うのかよ。注意書きはちゃんと読めって習わなかったのか、対戦カードを決めたやつ。
「俺らもここだからよ。徹底的につぶしてやるよ。」
御手洗と宍浦の間に火花が散っている。その様子を面白そうに見る影沼と淡淡している加納さん、そして、すかした顔で見る黛。もう不安でしかない。あとから来た、後半の俺たちの相手はこの雰囲気に顔を青くしていた。俺は、心の中で手を合わせた。合掌
全員が配置についたであろう時に、スピーカーから声が流れる。
「よっしゃぁ。そろそろ、札を読むからな。それじゃ、行くぞ。」
競技者が構える。
「ぅあぁきのたの~……」
読み方の癖が強い。読み手がドスを効かせて読むな。あと、お前が読むんかい。
「はい。」
加納さんが、札をとる。
「フン。その程度か。」
宍浦、おまえとる体制にも入れてなかっただろ。
「影沼ぁ、なぁにやってんだおまえー。」
「いだぁ。」
影沼が殴られる。俺たちの相手二人が震えあがる。本当にごめん。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ」
「「ぐわぁぁぁぁぁぁ」」
体育館に聞いたことある咆哮と叫びが響き渡る。目を向けると暴れるくまごろうとリードを持つ血まみれの佐上君、そして壁にめり込んでいる≪ツインストライカー≫の二人が見えた。あの熊を出禁にしろよ、マジで。
「くまごろう、佐上チーム、失格。」
担架で運ばれる二人をよそに試合が続く。
「次いくぞー。ぅあぁさぼぉらけぇ~……」
「はい。」
またもや加納さんがとる。
「影沼ぁ、てめぇ何ぼ~としてんだぁ。」
「ひでぶっ。」
影沼が吹き飛ぶ。御手洗、宍浦がかかわるとバイオレンスになるな。
ふと、ほかの所を見る。小島の試合が見える。小島が中央の札をとろうと手を伸ばす。が、届かない。そして、相手にとられる。あいつにはハンデを挙げてもいいのでは。
そんなこんなで試合は進んでいき、最後の二十四枚目が読まれる。今の状況はどちらとも言い分である。影沼が頑張っている。ちなみに御手洗と宍浦は、二枚しか取れていない。
「なぁ、この次のやつ、俺と明美のタイマンでやらんか?」
「おう、面白れぇじゃねーか。唯、いいよな。」
「べ、別にいいよ。」
御手洗が、宍浦とのタイマンを提案する。
「次が最後だ。気張れよ。」
最後の札が読まれる。
「むぅらさめの~……」
読まれたらすぐに札をとる音が聞こえる。
「あっ」
影沼が、札を抑えていた。
「ご、ごめん。これ、得意札だからつい反応して……。」
二人が、影沼を見る。
俺たちは、連れていかれている影沼を静かに見守る。
ちなみに、御手洗、影沼チームは普通に負けていた。
イクラを久しぶりに食べました。おいしかったです。
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