上には上がいる
俺は意識を取り戻した。
「知らない天井。私は誰。ここはどこ。」
「頭、大丈夫ですか。ここは保健室です。」
「一度言ってみたかっただけだ。」
俺が、目を覚ました時そこには、白衣の天使ではなく、ただの佐藤君がいた。露骨にテンションが下がった。そして、頭を心配された。確かにまだ、頭が少しずきずきするが、大丈夫だ。先生は、用事があるのか保健室にはいなかった。
「で、あの時何がどうなったんだ。」
「まず、試合開始と同時に建石先輩が、三上先輩の間合いに踏み込み、胴を狙いました。しかし、三上先輩のファインプレーにより、その一発目は、竹刀を代償にして防ぎました。が、その後、三上先輩が竹刀に気をとられている間に、建石先輩が面を打ってその衝撃で三上先輩は意識を失いました。この一連の出来事が一瞬にしておきました。」
最後の一文だけで非日常感が出てくるのはすごいな。
「それにしても三上先輩すごいですね。」
「えっ」
急に佐藤君に褒められた。うれしい。
「だって、初心者なのに、建石先輩の一撃を防いだのですから。僕は、まだ一発も防いだことないんですよ。」
「あれは、体が勝手に動いただけだから。」
昔鍛えていた貯金で偶然防げたからだろう。今も少しだけ筋トレを続けてはいるが。
「それでもすごいですよ。これでも、中学生の時から剣道しているんです。それでも、防げていないんです。」
そんなになのか。確かに、あれにもう一度反応できるかっていうと難しいと言わざるをえない。そう考えるとあの時の俺凄くね。やばくね。天才じゃね。
「信じられないかもしれないけど、伊藤先輩って全国大会に行けるほどの実力者なんです。そんな人でも、一発を防ぐのに数か月かかったって言っていました。」
信じられん。あの人が実力者だと。金払って八百長でもしたんじゃないのか。
「建石先輩は、それほどの実力者であり、そして、それほど剣道が好きなんです。だから、どこの部活にも所属してない三上先輩にも、剣道のおもしろさを知ってほしくて今回の部活体験をしたんだと思います。」
「確かに、楽しかったな。やっぱり男の子は、剣を振ってみたいものだしな。強制的だったのは腑に落ちんが。建石さんにも楽しかったと伝えておいてくれ。」
「わかりました。」
「しかし、それほどの実力者なら敵なしだろうな。」
剣道だけの世界を超えてな。
「それがそうでもないんですよ。」
「なに?」
あれより強い人がいるのか?俺が知ってる世界が狭すぎたのか。
「実は去年、非公式の男女混合の団体戦があったのですが、二葉高校という剣道強豪校に、剣崎っていう人に負けたんですよ。それで、今年こそはって建石先輩張り切っているんですよね。」
建石さんが負ける姿なんて想像もできないな。
「今日、体験したようなことを部活でやっているので、興味があったり、楽しそうとか思いましたら入部申請してください。」
「保健室で目覚めるのは、毎日なんですかねぇ。」
ちょっと嫌味な感じで言う。
「そうだ、ほぼ毎日だ。最高だろう。」
カーテンが開かれ、隣のベットにいた伊藤先輩が返答する。
「それは伊藤先輩だけですよ。」
「先輩なんてけいs「はいはい。」」
あの人が実力者とか絶対信じない。
「さて、用もないし、帰ります。」
「そうか、荷物はその机の上にあるぞ。」
長机の上に俺のカバンが置いてあった。相変わらず汚れてんな。自分のだとすぐわかる。
「ありがとうございます。」
「礼には、及ばないさ。」
俺は、カバンをもって保健室のドアに手をかける。
「それでは、お先に失礼します。」
「さよなら」 「お疲れ様です。」
挨拶をし、保健室を去る。
「しかし、久しぶりに見た。」
「何をです。」
保健室に残っている伊藤先輩の発言に佐藤君が疑問を問いかける。
「建石くんが、剣道の途中で表情を変えることだ。」
「?」
追加の発言を聞いても、佐藤君は首を傾げたままだ。
「建石くんの攻撃を三上くんが防いだ時、目を見開いて驚いていたんだ。そして、少し笑みをこぼしながら、面を放っていたところが珍しくてな。」
「へぇ~。全然気づけませんでした。」
佐藤君は、そのことに気づけない未熟さ痛感しながら、あの時伊藤先輩の意識があったことに驚いた。
接続するアダプターとかって種類ありすぎて困るよね。作者は、間違えて買いました。
下のほうにある星を押してくれると作者が狂喜乱舞します。