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どんなものでも凶器になる

 週明けの放課後。俺は、剣道場の前に建石に連れてこられた。そこには、4人の部員がいた。3人が男子で、1人が女子だった。


「あっ、建石先輩こんにちは。」


「ん」


 女子生徒が挨拶をしてきた。先輩ってことは、彼女は一年生か。建石さん、あいさつはちゃんと返そう。


「その人は……」


「新しい部員。」


「違う、ただ拉致られた見学者だ。」


 適当なこと言ってんじゃねーぞ。


「ったく。二年の三上だ。今日は、よろしく。」


「はいっ。よろしくお願いします。私は、高梨たかなしといいます。あと、右から佐藤、加藤、伊藤です。」


「「「よろしくお願いします。」」」


 紹介が雑だな。あと語呂がいい。この感じだと全員一年か?


「建石さん以外は、一年なのか?」


「いや、伊藤だけは三年です。」


「先輩なのかよ。敬語を使わないのか?伊藤先輩は、こんな感じでいいんですか。」


「先輩なんて敬称いらないよ。そう、雑に扱われるのがとてもいいんだ。君もそう思わないか?」


「いえ結構です。」


 やばい人と会ってしまったようだ。





 剣道場に入り各々防具を着ける。その中で俺だけぼーっと見ている。


「三上君、私がつけてあげよう。」


「ありがとうございます。」


 面と小手以外を付けた伊藤先輩が、着け方のわからない俺に教えてくれる。


「まずは、垂から着けよう。大垂を前にして腰の所に持って行ってくれ。」


「ここらへんでいいですか?」


「もう少し上だな。」


 そういって、伊藤先輩は、俺の垂を上げてくれる。


「三上君、いい体してるね。」


「佐藤君変わってくれない!!」


「ふっふっふ。照れなくていいんだよ。」


 気持ち悪がってるだけだ。


「紐を後ろに回して、クロスさせて締める。そして、紐を前に持って行って垂名札の裏で蝶結びをする。結んだ紐は、横垂に押し込んでくれ。」


 おぉ、着けれた。初見だと結べないなこれ。


「次は銅だな。これを胸の所に持って行ってくれ。」


 防具を胸の所へ持っていく。


「これももう少し上だな。」


 伊藤先輩は、一度防具を外し胸を触ってもう一度防具を付ける。


「先輩。一回外す必要ありました?」


「ないっっっっ!」


「加藤君変わってくれないかなぁ!」


 もう、いやだ。


「胴紐を胸乳革、右上と左上についている奴に持って行き。グルっと1周〜2周させる。輪っかを作り、その輪っかを胸乳革に通す。下の巻きつけた紐を引き上げ、きつく締める。」


 教え方は、うまいんだがなぁ。輪っかつくるの難しい。

 胴を付け終わると伊藤先輩は、面を付けてくれた。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。どういたしまして。」


 俺に防具を付けた伊藤先輩が、竹刀をもって、すでに準備をし、素振りをしている建石のもとに向かう。


「さて、やろうか。」


 伊藤先輩の防具は、俺に付けているから先輩は何もつけていない状態である。その状態で稽古だと……。まさか、防具など必要ない、すべて剣で受けるか受け流すかするという感じなのか。そこまでの実力者なのか!


 バチンーーーーーー


「アフンっ」


 バチン「あぁ」、バチン「いぃ」、バチン「うぅ」……


 あぁ、そっちの意味で防具など必要ないということか。俺は、しっかりと失望した。


「三上先輩は、こっちでやりましょう。」


 あれに何も反応しないあたり一度や二度のことじゃないな。伊藤先輩とても気持ちよさそうな顔しているし。

 俺は、小手をつけて一年チームのほうに向かった。3人はすでに防具を付け、素振りを終えていた。高梨さんと加藤君は、すでに互いに練習していた。手の空いている佐藤君が面をとり、こちらに来る。


「先輩には、僕が教えます。まずは、素振りから始めましょう。」


 佐藤君が、そう仕切る。こっちは、教えてもらう側だから、敬意を示さなくては。


「おねがいします!」


 俺は元気よく頭を下げて言う。

 

「頭上げてください。先輩にこんな態度されるとこちらが困ります。」


「いえ、新参者の俺にそんな敬意を示さないでください。」


「えぇー」


 佐藤君は困惑しているようだが、こちらも譲れない。


 俺は、自分が思うように竹刀を上下に振るう。


「せんぱ「今は三上と呼んでください。」……三上さん、姿勢はとてもいいんですけど、力入りすぎていますね。竹刀の軌道が右にずれています。右手の力を少し抜きましょう。」


「はいっ、師匠!」


「師匠はやめてください!」


 そして、俺は師匠の指摘を意識して、竹刀を振るう。


「もう少し振り下ろすとき、力を抜いてください。一本取るのにそんなに力を入れる必要はありません。まして、力入れて相手を打ったら、相手がいたがりますよ。」


 なるほど。それは気を付けなければ。スポーツマンシップには則らないとな。


「相手を打った後も、あてたまんまにしないで竹刀が跳ねるようにすると相手が

痛くならないので意識してください。」


 大会とかで面を一本取った後って、竹刀と腕を上げているけどそういうことだったのか。面勝ち割ったぞって喜んでいるのかと思った。

 ある程度素振りに慣れてきたころ、師匠から新たなミッションを与えられる。


「次は、前進と後進をしながら振ってみましょう。一歩踏み出しながら振るという感じです。」


 師匠がお手本を見せてくれる。俺も見本を真似して振る。


「せんぱ「三上」三上さん、センスありますね。僕が、初心者の頃よりできていますよ。」


 俺は、師匠から称賛されて、顔をニヤつかせた。


「ふっ、今ならだれにでも勝てる気がするぜ!」


「気のせいです。」


 急に突き放すじゃん君。

 その時、ひと際大きな打撃音が剣道場に響いた。音のほうに目を向けるとそこには、パンツ一丁の伊藤先輩がボロボロな状態で倒れていた。


「佐藤君、さっき相手を痛めつけないとかなんとか。」


「常に例外とは存在するものです。」


スポーツマンシップぇ。


「わが生涯に一片の悔いなし。ガクッ。」


 言っとる場合か!あと、自分でガクッとは言わないんだよ。

 伊藤先輩をぼこぼこにした張本人の建石さんがこっちに近づいてくる。嫌な予感がするぞ~。


「三上、やろ。」


「いやです。」


「先輩、これが我が部の登竜門です。」


 いやな登竜門だな。くぐりたくねぇよ。

 そんな嫌がっている俺の首根っこをつかみ連れていく建石さん。いやだー、死にたくない、死にたくな~い。

 そんな抵抗もむなしく俺は戦場に立たされる。今の俺は、生まれたての小鹿のように足を震わせていた。師匠、本当に気のせいでした。


「佐藤、審判。」


「はい。準備はいいですか~。」


「帰りたいです。」


「それでは……はじめ。」


 無視しないで!合図と同時に腹部に殺気を感じる。思考より先に体が動く。俺の体は、胴を守るように竹刀を動かす。


バキィィィィィン


 何があったのか理解できないが俺の竹刀が折れていた。


「すいません!竹刀折れたんですけど!!」


 俺が叫び終わったと同時に頭にとんでもない衝撃を受け、俺は意識を失った。


 最近、疲れが抜けません。

 下のほうにある星を押してくれると作者が狂喜乱舞します。

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