デジャヴって怖いよね
下校中。俺は、昨日とは違う道を使って帰っていた。公園の横を通っていると、女の子が困っている現場に遭遇した。どうやら、木に風船が引っ掛かっているようだ。あれ、デジャヴを感じるな。
「お嬢ちゃん、風船をとってあげようか?」
「うん。おにいちゃん、お願い。」
よし。この木は登れないからな。毛虫まだうじゃうじゃいんな。なんで、この木に運命感じなきゃいけないんだよ。幸い風船のひもの部分はジャンプすれば、届く位置だな。
そして、俺がジャンプしてひもに届きそうになった時、横から飛び出てきた影が、ひもをつかんでいった。あいつは、
「猫ちゃん、ありがとう。」
くそ猫――――――――。あのキジトラ柄の猫が女の子に風船を渡していた。俺のかっこいい場面をなに横取りしてくれてんだ。俺は、『おにいちゃんかっこいい』をもらいたかったんだぞ。許せん!
「よかったね。」
俺は子供に見せちゃいけない顔を出さないように気を付けながら、女の子に言った。
その時、後ろから声がした。
「良子ちゃーん、どうしたの。」
このゆるふわっとしているvoiceは……
「あっ、めぐみおねえちゃんだー。」
後ろを振り向くと不藤先輩が手を振りながらこちらに近づいていた。ていうか、この女の子、良子ちゃんていうのか。
「あれ、三上君、こんにちは。」
「不藤先輩、こんにちは。」
「良子ちゃん、三上君のこと知ってるの?」
「うん。困っていた時に助けてくれる、おにいちゃん。」
「あら、そうなの。三上君、ありがとうね。」
やった、先輩に褒められた。もう死んでもいい。
「不藤先輩とこの子、良子ちゃんは、どんな関係?」
「良子ちゃんは、家が近くて、よく遊んでいるから、妹みたいな感じかな。」
ほう。俺は、ほほえましい光景を思い浮かべる。
「私と良子ちゃんの家は、この公園の近くにあるからよくここで遊んでいるのよ。」
マジで!この近くに先輩の家あるの!俺の登校ルートと下校ルートが決定しました。ん?ストーカーじゃないかって?違います。安否確認です。ぐへへへへ。
シャー!
うわっこの猫顔にとびかかってきやがった。顔をひっかくな、マジでいたい。いたい。
「猫ちゃん、その人をひっかいてはいけません!」
「猫ちゃんそのおにいちゃんは悪い人じゃないよ。」
さっきまで犯罪者予備軍みたいなこと考えていました。すいません。悪い人です。
不藤先輩が、優しく猫を抱っこし、俺から離れさせる。おい猫その席変われ。チャオ〇ュール一年分あげるから。プレミアムな奴。一生のお願いだから。
そんな下衆な願いは、かなうはずがなく俺の顔から血が垂れる。
「おにいちゃん、大丈夫?」
「三上君、顔血まみれだけど大丈夫。病院行こうか。」
不藤先輩は焦り気味に心配しながら猫を手放し、ハンカチで血を抑えてくれている。猫は、陽子ちゃんとじゃれあっている。
「大丈夫です。この程度の傷日常茶飯事です。」
なわけねぇだろ。格好つけるため、うそを言う。
「ほんとに大丈夫?うちにいって治療しようか。」
不藤先輩の家だとぉぉぉぉぉぉぉ。うれしい。うれしいがいけない。今、不藤先輩の家に行ったら興奮でもっと出血してしまうのが目に見えている。くそう。一生に一度あるかどうかのイベントだが、ここはおとなしく帰宅しよう。不藤先輩と陽子ちゃんにこれ以上迷惑はかけれない。
「じゃあ、俺帰って自分で治療するので。ハンカチ俺が、洗って返します。」
「いいよ。私の家で洗うから。」
それはきけねー相談だなぁ。他人の血が付いた奴なんて気持ち悪いだろう。
「いえ、俺が洗います。」
「そう、じゃあよろしくね。」
はい。今度会えることが確定しました。やったぜ。おい猫、今にも俺にとびかかろうとするな。こいつ俺の考えでもわかってんじゃないかと思えるほど鋭いな。
「それじゃあ、不藤先輩、陽子ちゃんさようなら。」
「さようなら。お大事にね。」
「お兄ちゃんバイバーイ。」
俺たちは、互いに手を振りながらお別れをする。
帰宅中、顔面をハンカチで覆っているからか、通りがかる人たちから奇異の目で見られた。
ようやく、10話、1万字だよー。
ちなみに単行本1巻の文字数は、8万~10万字らしいです。私の場合、100話書いて一冊分。本物の小説家ってすごいね。
読んでくださる皆様本当にありがとうございます。まだまだネタはありますので、皆様を楽しませることができる作品が完成するよう、これからも頑張ります。応援よろしくお願いします。