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4.まあ!聞きたいんですの?



「ここはどこ……?」


川沿いを進んできたけれども、全く開けた所へ出ない。森の奥に潜り込んでしまったかの様に険しくなってくる。


ベルローズは嬉々として、このサバイバルを楽しんでいる様子だし、本気で守護する気はないみたいだ。



『ほほほほ!!!念願成就は近いですわねっ!!お母様にお聞きした『悪役令嬢の物語』がやっと実現できそうですわ!!』


「全く……主人がこんな大変な思いしてるっていうのに……。その『悪役令嬢の物語』ってなによっ!!」



先程から何回も出てくるその単語が気になって仕方ない。ベルローズは機嫌がいいのか、ニッコリと微笑んで私の目の前まで降りてくる。



『まあ!聞きたいんですの?では教えてさしあげましょう!!わたくしのお母様は、この世界と別の世界で生まれて死んだ記憶がある特別な人間でしたのよ!!そこでは、『ヒロイン』と呼ばれる主人公が、様々な試練を乗り越えて幸せになる物語がいくつもあったんですって。でも、『ヒロイン』が幸せになる影では必ず『悪役令嬢』の活躍がかかせませんのよ!!』



興奮気味に語り出したベルローズに私は若干引いてしまう。150年前は、母親が娘にお伽噺として、こんな突飛な物語を話すのが流行っていたのだろうか。


『『悪役令嬢』は、気高く、最期まで自分の信念を曲げませんの!!『ヒロイン』を虐めるにも手を抜かず、婚約者に婚約破棄されようが、破滅の道を辿ろうが、華々しく散りますのよ!!!わたくし、お母様のお話を聞いて、絶対に『悪役令嬢』になりたかったんですの!!』


あー、ベルローズのお母様、教育失敗しているわ。きっと、『悪役令嬢』を反面教師にして欲しくて、作った物語が、まさかの『悪役令嬢』に憧れてしまうという事態に発展しているわ。



『ですから、先ずは王族の婚約者になる必要がありましたので、必死に自分を磨き、婚約者の座を手に入れ、『ヒロイン』らしき令嬢を虐め抜いたり、色々としましたが……結局、わたくしは『悪役令嬢』になりそこないましたの……』


ああ……。

第二王子と婚約して、婚約破棄されたら、王太子に求婚されて、そのまま王妃として幸せな最期を迎えたって言ってたっけ。



『悔しいですわ……。わたくしの縦ロールも、気品漂うこの『悪役令嬢メイク』も全て没収され……普通の姿にされて……。普通に幸せになってしまいましたのっ!!!あの憎き国王のせいでっ!!!』



なるほど、だからベルローズの肖像画が無かったのか。今のキメキメ縦ロールや、バッチリメイクもしてないなら、きっと別人のような感じなんだろうな……。


いや、今でもかなり美人なベルローズが普通の装いになったら、かなりの美女になるのでは──



150年くらい前の美女と言えば──




歴史的にも有名な、レオンハルト国王の薔薇姫──!??




大陸を統一し、このマークガスト王国を確固たるものにした伝説の国王、レオンハルト・マークガストは、薔薇の妖精と誰もが心を奪われる寵姫、薔薇姫を生涯の妻として愛したと語り継がれている。



王国民ならば、誰もが一度は聞かされる恋物語。憧れの薔薇姫が──




『ほーほほほほほ!!!『破滅』はすぐそこですわぁぁぁ!!!!』



こんな残念な守護霊になっているだなんて……。




「残念すぎる……」


『なんですの!?あら?あちらの方が騒がしいですわね』



ドドドドドドドと大きな音がして、目に見える範囲の木々が一斉に倒れていく。まるで何者かになぎ倒されてく家のような様子に私は危機を感じ、後ずさる。



『あら!?魔獣じゃなくって!?魔獣に襲われるエンドもお母さまが良く話してくださったわ!!!さあ、行きましょうっ!!!』


「逃げるに決まってるでしょうっ!!!」



全く、本気でこの守護霊様をどうにかしてほしい。いいえ、自分の身は自分で護るのよっ!!!



逃げようとすると──



『きゃんきゃんきゃんっ!!!!』




聞き慣れた、可愛らしい救世主の声が聞こえた──。






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