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3.私、絶対に『破滅』しない!!



知らなかった……。ベルローズがやけにこの国や、情勢に詳しいなとは思っていたけれども……。


でも王子妃教育で歴史を学んだ時、歴代の王妃様の肖像画を見たけれど、ベルローズは居なかったように思うのだ。こんな超絶美形なベルローズがあれば目につきそうだけど。



疑いの目を向けると、ベルローズは憤慨したように私にズイっと近付いた。



『失礼ですわねっ!!わたくしは不本意でしたけど、れっきとした王妃でしたのよ!!……元々、第二王子殿下の婚約者でしたが、『悪役令嬢』らしく、堂々と婚約破棄されましたの。後は『破滅』さえすれば完璧でしたのに……あの国王にさえ捕まらなければ……』



今まで聞いたことのないベルローズの生前の話に、私はポカンとする。



『王太子だった国王に求婚され、王太子妃から……順調に王妃になって、あろうことか幸せな最期を迎えてしまいましたのよ!!!母に聞かされた『悪役令嬢』のようになりたかったのに、本当に無念で、無念でっ!!!成仏できず、『悪役令嬢』の素質のありそうな令嬢の守護霊になっては、完璧な『悪役令嬢』になるように守護しましたのにっ!!!』




情報が多すぎて良く分からない。ベルローズが成仏できない理由は、『悪役令嬢』が『破滅』する完璧なラストを向かえないから……ってこと?


それじゃ……歴代の『悪役令嬢』たちは──



『そう、わたくしが守護すると……みんな最後には素敵な殿方が現れて、幸せなラストを迎えてしまいますのよーーーーっ!!!!』



悔しそうにハンカチを噛み締めるベルローズに私はポカンとしてしまった。



『島流しにあったあの子は、島の領主に気に入られ、領主夫人として幸せに……。処刑台に上った彼女は直前に無罪が分かり、裁判官の彼と後々夫婦に……。国外追放された彼女は、あろうことか隣国の王子に見染められ……!!!!誰一人『破滅』してくれませんのよ!!!!』



だから、ベルローズは口酸っぱく私に『破滅』するように言い聞かせてきてたの!?


『貴女が最後の希望ですのよっ!!!婚約破棄され、『怪物辺境伯』のもとに嫁がされ……王家の刺客に暗殺されかけ、谷に馬車ごと落ちるなんて最高ですわ!!!このまま、このままいきましょう!!!!』



力説してくるベルローズに私は絶対『破滅』したくなくなった。絶対にガイザード様の元に帰って、ベルローズが悔しがるような幸せな結末をむかえてやるんだと、力が湧いてくる。


「ありがとう、ベルローズ!!私、絶対に『破滅』しない!!!」


『な、なんでですのぉぉぉぉぉ!!!』



幼い頃から、ずっとベルローズに植え付けられた『悪役令嬢』と『破滅』する未来が怖かった。でも、実際は、みんな幸せになっていたと知ったら、希望が見えたきがした。


こんな絶望的な状況でも、頑張ろうと言う気持ちになれる。



ベルローズにとっては本意ではないかもしれないけど。



「よしっ!!!川沿いに進めばきっとどこかへ辿り着くわ!!!この山を抜けるのよ!!!」



生き残るために、私は一歩踏み出すのであった。




◆◆◆




「ば、化け物だ──……」




ヴィセンドは目の前の光景が信じられずに掠れた声を出した──。




ナーサリーに──


「怪物辺境伯様も、王家直属の暗殺集団には敵わないわ。ピンチに駆け付けた殿下にお義姉さまはまた恋するはずですわ。私は瀕死の辺境伯様を介抱して、お義姉さまの代わりになるわ。殿下はお義姉さまと王都に戻って、王位継承権を取り戻せば、全てうまくいきますわ」



そう言われ、第二王子の権限で、王家直属の暗殺集団を、辺境に帰る道中の渓谷付近で差し向けた。


ナーサリーと共に安全な場所で待機し、そろそろいい頃合いかと思い、外に出ると──




「グゥゥゥゥゥゥゥ────っ」




獣の鳴き声のような恐ろしい声が聞こえた。木々はなぎ倒され、差し向けた刺客たちは皆地面に倒れ、刺客達の従魔だけが、その声の主に向かって飛び掛かろうとしていた。



黄金に輝く鬣に──鋭い爪と牙。


まるで獣人のような風貌の『怪物』がそこに居た──。




「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!か、怪物よっ!!!」



ナーサリーが叫び、腰を抜かしたようにその場に座り込んだ。怪物はこちらをきにすることなく、従魔に鋭い爪を向け、瞬時に真っ二つにしていった。



「旦那様っ!!!静まり下さいっ!!!敵はもう全て倒しました!!ロザリナ様を救出に向かいましょうっ!!!」



その怪物の周りでは、辺境伯の護衛と見られる兵士や、使用人が必死に呼びかけていた。


我を忘れたように咆哮する怪物の正体は──



ヴィセンドは恐ろしさのあまり、その場で意識を失うのだった──。








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