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1.邪な想いなどもっておりませんっ!




ガイザード様が格好良すぎて、直視出来ない。


どうしましょう……!!!



「おはよう」と爽やかに挨拶される姿も、男らしい喉仏を上下させながら紅茶を飲む姿も──目が合うと照れくさそうにはにかむ姿も──キラキラして直視すると心臓がどうにかなってしまいそうなほど騒がしくなる。


この想いを自覚してから、ガイザード様への恋心が止まらなくて、困ってしまう。



今まで、どうやってガイザード様とお話ししていたっけ?


昨日はその唇に──



「きゃーーーっ!!!」



一人で赤くなって騒ぐ私を、ベルローズが汚物を見るような目で見つめてきた。



『『悪役令嬢』の矜持を忘れ、そのだらしのない阿呆のような顔はなんなんですの?わたくしが丹精込めて育て上げたのにっ!!もっとキリッとなさい、悪役感を出すのですわっ!!!』



キーっとベルローズが叫んでおり、それすら私には微笑ましく思えた。全てが薔薇色に見える。素敵な世界。ガイザード様と私の……。


「お、奥様?」


「ふふふ。いやだ、まだ早いわっ!!」


「……どうしましょう、奥様が変です!!しっかりしてくださいぃぃ!!!」



妄想の世界に入っている私をマーロが必死に呼び戻してくれた。あ、危ない、いくら恋愛経験が無いとはいえ浮かれすぎていたと我に返った。



平常心、平常心よ。


いくら旦那様であるガイザード様が素敵だからって。……『旦那様』かぁ……。素敵な響きね。そうよ、私ガイザード様の『妻』なのよね。


そう言えば、落ち着いたら結婚式も挙げる予定になっていた。正装のガイザード様、格好いいんだろうな……。バージンロードを一緒に歩けるんだろうか。


神様に永遠の愛を──



「もう、奥様ぁ!!帰ってきてくださいぃぃぃ!!!早く出発の準備をされなければっ!!」


「はっ!!ご、ごめんなさい!!」



脳内結婚式を挙げていた私は、やっと現実へと帰って来た。今日は、王都から辺境へと帰る日だ。三日間の馬車の旅が始まる。


馬車ではガイザード様と二人っきりなのだろうか。


何を話そう。

馬車と言えば昨日──



延々とループしそうだったので、頭をフルフルと振り、今度こそ、キリッと頭を切り替えるのであった。




◆◆◆



「ロザリナ、手を──」


「えっ!!きゃっ!!は、はいっ!!」



馬車に乗り込む際に、ガイザード様が手を差し伸べてくれた。大きな手。剣を握るからか、とっても皮が厚い。そっと手を乗せると、ガイザード様の体温を感じる。


ドキドキと、心臓がうるさいくらいに鼓動する。



「ロザリナ?具合でも悪いのか?……顔が赤い」


「いいえ、いいえ、邪な想いなどもっておりませんっ!!!」


「…………?」



ガイザード様と守護霊のポメちゃんが同時に首を傾げた。あああ、私のバカっ!こんな変な態度を取るつもりなんて無かったのに──。



むしろガイザード様は平然とされていて……。


私だけなのかしら、こんなにときめいているのは──。



ちょっと寂しく思いつつ、馬車に乗り込みガイザード様と向かい合って座った。


膝が触れ合いそうな距離にガイザード様がいる。それだけで、こんなにも緊張してしまう。


駄目よ、こんなカチコチになっていたら、ガイザード様に失礼だわ。


そう思って前に向き直ると、目の前には、カチコチに緊張しているポメちゃんがいた。ガイザード様は普通にしているのに、ポメちゃんがカチコチになっているってことは──。



「ふふっ──」



つい笑みが零れてしまった。良かった。ガイザード様も同じ気持ちなんだ。



「……ロザリナ……?」


「ごめんなさい。おかしくなってしまって。ガイザード様、私、ガイザード様と想いが通じ合って、浮かれていたみたいです。初めての気持ちでドキドキして。ガイザード様にいいところも見て欲しくって、緊張したり。もしかしてガイザード様も──」


「……ああ、柄に無く、浮かれているようだ。そして、君に良く思われたくて……緊張していた」


緊張しちゃうガイザード様、可愛らしいっ!!!

好きっ!!!


どうしよう。好きに果てはないのだろうか。どんどんガイザード様を好きになっていく。


「どうしましょう……ガイザード様」


「どうした、ロザリナ!」


「好きですっ!!」


「っ!!!」



『バカップルですの!?見てられませんわっ!!!』


ベルローズがなんやかんや言って、そのまま消えてしまった。ポメちゃんはピシッと固まって動かない。あれ?っと思うと、目の前のガイザード様も動きを止めていた。



「ガ、ガイザード様!?」


「……う、馬をくれっ!!!私はこの空間に居てはいけない、馬で並走する、すまないロザリナっ!!!!」



慌てて馬車を停め飛び出して行ってしまい、呆れたようにマーロが代わりに乗り込んできた。



「マ、マーロぉぉぉ、私、何かしちゃったかしら……」


「旦那様もまだまだ恋愛初心者ですからね。奥様、手加減してあげてください。……と、ロバートさんが言っていました」


「へ………?」



手加減ってなにかしら……?

ポカンとする私に、マーロが気遣わし気に微笑んだ。



馬車の窓からのぞくと、「うぉぉぉぉぉ!!!」『きゃうぅぅぅぅん!!!』と言ってガイザード様とポメちゃんが激走していた。



こうしてガイザード様との馬車の旅は、一瞬でマーロとの馬車の旅に変わってしまったのだった──。





第四章もどうぞ宜しくお願い致します!!!

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