表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/34

1.おめでとうですわ!!貴女は追放パターンの断罪でしたのねっ!



『ああ、ロザリナっ!!おめでとうですわ!!貴女は追放パターンの断罪でしたのねっ!!怪物辺境伯とやらに嫁入りとは、新たな種類の追放パターンですわっ!!ワクワクしますわね。怪物辺境伯に甚振られるのかしら、それとも魔物の生贄に捧げられるのかしらっ!!ふふふ、わたくしを楽しませてくださいませねっ!!!』



ザグリオン辺境伯領に向かう馬車の中で、守護霊である『悪役令嬢』のベルローズは興奮気味に捲し立てている。


甚振られるのも、生贄も絶対に嫌なんだけどっ!!!


冤罪を被せられ、断罪された私は、異母妹であるナーサリーの慈悲で、辺境の守護を司る王国最強の武人、怪物と恐れられるガイザード・ザグリオン辺境伯の花嫁として辺境に嫁ぐこととなったのだ。


牢屋に生涯幽閉とか、処刑とか島流しよりはよっぽどマシな処遇であると受け入れたものの、意気揚々と破滅の未来を語るベルローズの話を聞いていると、不安が胸に押し寄せて仕方ない。



「だ、大丈夫よ!!取って食われたりはしないはずだわっ!!」


『あら!?有り得るのでは無くて!?だって怪物辺境伯ですわよ!!人間ではないかもしれなくってよ!!』


「ひっ!!も、もう、ベルローズは黙っててよーーっ!!」


『ほーほほほほほほ!!!ぱっくり食べられたら、わたくしが貴女を冥界まで案内してさしあげてよっ!!』


「っ!!!!」



はしゃぐ守護霊に頭を抱えながら、遠い目をしてザグリオン辺境伯領へと向かう馬車に揺られる。

余談であるが、一人馬車の中での私の声を聞きながら御者の男は私の気が狂ってしまったのだと密かに同情していたのに私は気が付く余裕もなかったのであった──。




◆◆◆



馬車に揺られること3日、マークガスト王国と隣国との国境にある、国の護りの要、ザグリオン辺境伯領へと到着した。


道中散々守護霊であるベルローズに悪役令嬢の末路を聞かされ、ぐったりしていたが、気を取り直して恐る恐る馬車から降り立った。


要塞と言ってもいいような造りの辺境伯邸に圧倒され、馬車を出迎える使用人や兵士達の多さに度肝を抜かれた。ハッシュベルト侯爵邸でもこんな出迎えをされたことなどないのに……畏れ多いと縮こまっていると、ふっと目の前に影が下りた。


はっとして顔を上げると、見上げるほど大きな背を持ち、屈強な体つき、長い前髪で顔が覆われ全く表情は読み取れないが只者ではないようなオーラを持つ男が目の前に立っていた。


「……長旅、ご苦労だった。……俺はガイザード・ザグリオンだ」


地から響き渡るような恐ろし気な声に自然と肩が震えてしまう。


駄目よ、この方は、私の夫となる方なんだから。怪物辺境伯だからって、失礼な態度を取ってよいのでは無いのだから。しっかり向き合うのよ、ロザリナっ!!


自分を叱咤しながら、もう一度顔を上げた。すると、私の目に信じられない者が映り込んだ。



『きゃんきゃんっ!!!!』



モコモコの毛並みに、ふさふさの尻尾が揺れる。怪物辺境伯の後ろに居るのは、まさかの可愛らしいポメラニアンの守護霊だったのだ──。



「っ!?!?!?!?!」



なぜ怪物辺境伯の守護霊が、可愛らしい愛玩動物なのだろうか。しかも思いっきり嬉しそうに彼の頭の上で走り回っている。辺境伯様の恐ろしさよりも、頭上のポメラニアンの可愛さに目が釘付けになってしまい、はっと我に返った。


「っ………、あ、あの、ハッシュベルト侯爵家からまいりました……ロザリナでございます。どうぞ、よろしくお願いいたします」


「……ああ」


どうにか紡ぎだせた自己紹介に、辺境伯様は素っ気なく頷くだけで、背を向けて歩き出してしまった。


しかし、守護霊であるポメラニアンは嬉しそうに走り回っては、時々こちらをチラ見してくる。


ま、まさか……歓迎されているのかしら……?


動物系の守護霊は、主人の気持ちを代行していることが多い。見た感じだとポメラニアンは好意的に歓迎してくれているようだ。恐らく主人である辺境伯様も……。



『きゃんきゃんっ!!くぅーん!!』



早くおいでよっ!!とでも言っているかのようにこちらを見ては尻尾を揺らし、着いてくるよう促す可愛らしいポメラニアンに苦笑してしまう。



考えてても仕方ないわ。なるようにしかならないのだからっ!!


ぐっと決意し、私は一歩踏み出すのだった。




◆◆◆




「私は家令のロバートと申します。奥様、以後宜しくお願いいたします」



キリっとした佇まいに、銀縁眼鏡が似合う初老の家令、ロバートの背後には、同じくキリッとしたロバートと瓜二つの家令の守護霊が頭を下げている。


守護霊まで家令だなんて……きっと出来る人に違いないわね……。


ゴクリと息を呑む私に、ロバートはピシッとした動きで色々と説明してくれる。


「屋敷のご案内は、メイドのマーロに」


「奥様付きのメイドのマーロと申します。奥様、どうぞ宜しくお願い致します」


ロバートに紹介されたマーロは、優しそうな顔立ちで私と同じ年位のメイドであった。マーロの後ろにはふくよかな女性の守護霊が浮かんでおり、美味しそうにお菓子を頬ばっていた。見ているだけで心がほんわかしてしまうから不思議だ。


「ロザリナです。来たばかりでわからないことばかりですが、どうぞ宜しくお願い致しますね」


紹介された使用人たちに丁寧にお辞儀すると、皆温かい目で迎え入れてくれた。


使用人たちがこんなにも温かな者達ばかりならば、きっと辺境伯様も優しい人の筈だ。


少し希望が見えたとほっと息を吐く。その後ろで……


『怪物辺境伯も大したことなさそうですわねっ!でもまだ分からなくってよっ!!ああ、ワクワクしますわぁっ!!』



ベルローズが興奮気味に飛び回っており、私はその声が聞こえないように耳を塞ぐのであった。




ここまでお読みいただきありがとうございます!!

明日より20時に更新になります(*^▽^*)!!

どうぞ宜しくお願いいたします♪♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ