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6.これはまた波乱の予感ですわぁ!!




『怪物だぁぁぁ!!!』



『私に触れないでっ、化け物っ!!!』



物心ついた時には、辺境伯である父と共に、魔獣の討伐や、人間同士の争いに駆り出されていた。


父親譲りの戦闘能力に、『怪物』だの、『化け物』だと言われるのには、いつの間にか慣れてしまった。


誰かに自分を受け入れて欲しい。

愛して欲しい。


そんな愚かな願いなど、持つ資格さえないと思っていた。そんな息子を心配し、もう一線を退いた父と母は、縁談をいくつも持ち込んできたが、『怪物』になった自分を見て、逃げない令嬢など居なかった。



ロザリナを除いて──。



『私が愛おしく思うのはガイザード様だけなんですけど!』


『ガイザード様を好ましく……そう思っているのです!!』



自分には一生縁がないと思っていた、好意を向けてくれる。



『……私が、触れても、嫌では……ないか?』


『え……?嫌ではないです』



血濡れた、恐ろしい手を振り払うことなく、握り返してくれる。


何重も厳重にかけていた鍵を呆気なく全部開けて、心の奥底まで入り込んだ『ロザリナ』という存在。


この気持ちはもう誤魔化せなかった。


彼女が私へ向ける気持ちが好意でも、『愛』や『恋』といった色めいたものでなくても構わない。



彼女の望むまま。

幸せに笑って過ごせるように、例えこの身が打ち滅ぼされようと。



ロザリナを生涯をかけて愛すると、そう誓ったのだった──。




◆◆◆



「どうしましょう……」



好意を伝えたあの日から、ガイザード様が更にお優しくなった気がするわ!!


ヴィセンド殿下をまだ愛しているという誤解は解けただろうし、私の気持ちは多分伝わった。でも、なんだかモヤモヤする。


私のこの気持ちに名前が付けられないからだろうか。


だって、怖くて仕方ない。

ベルローズ曰く、『悪役令嬢』は破滅に向かうのが運命らしいし、私が好きな物は全部……──奪われるかもしれないから。


ジワジワと心の中に不安の渦が広がっていく。



そうよ、『愛』だの『恋』だの、考えるからややこしいのだわ。ガイザード様とは、夫婦として、仲良くすればいいのだもの。



大丈夫。まだ、大丈夫よ──。



「王都行きに向けて、準備を頑張るわよっ!!」



自分を奮い立たせて、そう叫ぶのであった。



『あらあら、なんだか、面白くなってきましたわねぇ!!!王都でもまた何か起きるかしらぁぁぁ!!!これはまた波乱の予感ですわぁ!!ほーほほほほほ!!!!』



そんな私を見て、ベルローズが高笑いしているのに、気付かないふりをした──。




◆◆◆



その頃王都では──



「ほう、ザグリオン辺境伯は夫婦で王都に来るか。楽しくなりそうだな。ナーサリー、君を苦しめた悪女に今度こそ思い知らせてあげるよ」



「まあ!ヴィセンド様、そんなっ!ナーサリーはそんなこと望んでいませんー。でも、お義姉さまに久々にお会いできるのは楽しみですぅー!!」




第二王子であるヴィセンドとロザリナの義妹のナーサリーがそう言って笑い合っているのを、ロザリナは知る由も無かったのであった。









第二章END





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