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プロローグ



私、ロザリナ・ハッシュベルト侯爵令嬢には、人と異なる異能がある。それは、人の背後に『守護霊』が視えるのだ──。



私が物心ついた頃、父親にも、兄弟にも、使用人にも、その後ろに『守護霊』がいて、自分にしかその存在は視えていないと気付いた。


そして、私の背後にも、例外なく、私を護る『守護霊』が居る。


それは──



『ほーっほほほほ!わたくしが視えるの?幽体になってから人と話すのは久しぶりですわ!わたくしはベルローズと申しますの。彼の昔、わたくしは『悪役令嬢』として名を轟かせていましたの!そして、わたくしが守護する者は漏れなく『悪役令嬢』になってよ。貴女もわたくしが立派な『悪役令嬢』に育てて差し上げますわっ!!!』



初めて自分の守護霊と意思疎通できた瞬間に、絶望に突き落とされた。ドリルのような縦ロールをキメた、化粧の濃ゆい迫力美人の守護霊様は、自分のことを『悪役令嬢』だと胸を張って言い切った。

……そして、私も同じく『悪役令嬢』とやらになるのだと──。


幼い私が未来に何の希望も持てなくなるのには十分な出来事だった。



ベルローズが語る『悪役令嬢』は、必ず、婚約者に近付く令嬢を邪魔しまくり、悪役に回る。その成果で婚約者と婚約破棄して、己の犯した罪(またもや謂れのない罪)によって断罪され、破滅の道を辿る。


え……、なにそれ、絶対にいやなんだけど……。


幼いながらも自分の未来を否定したくなった。どうにか回避できないかと。しかし、興奮気味に今まで守護した令嬢たちの辿った運命を延々と聞かされると、もうベルローズが守護霊だった時点で自分は詰んだのだと悟った。


『ああ、ワクワクしますわっ!貴女はどんな破滅の道を辿るのかしら!処刑?修道院送り?国外追放!?それとも、島流しとかかしらっ!!?』


「どれもいやです!」


どうにか、どうにかして、破滅の未来を防がなきゃっ!!『悪役令嬢』になんかならないわっ!


そう誓ったはずなのに──





「ロザリナ・ハッシュベルト。お前との婚約は破棄させてもらうっ!!!」




煌びやかな卒業パーティーの中、十八になった私は婚約者である、マークガスト王国の第二王子であるヴィセンド殿下に婚約破棄を堂々と宣言されていた。



「お前は、義理の妹であるナーサリーを妬み、虐め抜き、挙句の果てには殺害までも企てた!恐ろしい悪女だ!お前を断罪し、私は新たにナーサリーを婚約者として迎え入れよう!」


「まあ!ヴィセンド様!嬉しいですわっ!!」



母亡き後、父親が迎え入れた愛人との子がナーサリーであり、私の異母妹になる。ナーサリーは元庶民であるが、着々と私の居場所を奪い、婚約者であるヴィセンド殿下まで手に入れようとしていた。


決して、私はナーサリーを虐めたり、暗殺したりしようとなどしていない。むしろ王子妃教育が忙しすぎてそれどころでは無かった。



禿げたおっさんの守護霊に護られるヴィセンド殿下を愛しているわけでも、見たことの無いヘンテコな衣服に身を包み黒髪黒瞳の守護霊の女に護られているナーサリーを悪役として虐めたわけでもない。


ただただ大人しくしていたのに!!



『ああっ!!素晴らしいですわねっ!!悪役令嬢の一番輝く断罪の瞬間ですわっ!!』


自称『悪役令嬢』である守護霊のベルローズの歓喜の声も何処か遠くで聞いていた。



う、嘘でしょうっ!!??やっぱり、私はどんなに頑張っても……悪役令嬢として断罪されてしまうの!!?



絶望に打ちひしがれていると、満足気に微笑んでいるナーサリーと目が合ってしまった。



「ヴィセンド様ぁ!でも、お義姉さまがそれでは可哀想ですぅ。お義姉さまにされたことは、私気にしてませんから、お義姉さまにも幸せになってもらいたいですぅ」


「ああ、何て優しいんだ、ナーサリーは。慈悲深いナーサリーに免じて、お前には新たな縁談を用意してやろう!ザグリオン辺境伯へ嫁ぐのだ!!あの怪物伯と恐れられるな……。お前にはお似合いだよっ!!!ははははは、幸せに暮らすんだなっ!!!」



「まあ!ヴィセンド様ったらお優しい!良かったですね、お義姉さま!」



満足気に言い切ったヴィセンド殿下と、ナーサリーに、もう何も言い返す気にもなれなかった。



「謹んでお受けいたします」



こうして、私は怪物と恐れられる辺境伯──ガイザード・ザグリオンの許へ嫁ぐことが決められたのだった──。






ここまでお読みいただき誠にありがとうございます!!

久々の連載になります!!(ワクワク)


どうぞ宜しくお願いいたします!!!

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