3話 ~夢は劇場で踊る~
僕らは少ししてからゲーム会場、B-298に向かうことにしたのだった。
<<夢は劇場で踊る>>
「ここもハズレか・・・。」
俺たちは今、この燐毒劇場の出口を探していた。
この劇場は意外と広く、寄せられたマップでは3棟もの広さだそうだ。凪の能力にも頼って一気に探しているのだが、さすがに時間がかかるため3棟あるうち1棟は僕に、2棟は凪に任せたのだ。
こんなことしていて、凪の家族は心配しないのだろうか。凪にはまだ小さい妹がいるという。いつも保育所行なので、少し遊んであげようと思っていると凪は言っていたが・・・。このゲーム、デスゲームなので命の保証はないのを承諾しているうえでやっている。僕はそんなことを知ったうえで参加しているんだ。失敗したら、命の保証はない・・・。途端に悪寒がしたので、そこで考えるのはやめた。
「・・・・・・・あれ、なんだ、ここ。」
僕が立ち止まったホール4のトビラには、謎の小さい看板がかかっていた。
『新たな発見、きっと見つかる。死島の冒険者たち この意味を解読せよ。さすれば出口は開かん』出口のヒントが見つかったのはいいが、この看板の意味が分からないとダメということか・・・。死闘が、死島になっている。誤字では・・・ないだろう。劇場でやっていた項目だろうか?それにしてはすこし、この劇場には不似合いだ。ヒントは4ホールの中にあるかもしれない。そう思った僕は4ホールの扉を開けようとした瞬間―――。
「あの、すみません。私、爾志晴香っていうんですけど。」
突然、女の人の声がしたので振り返ってみると、そこには僕と同じような背丈の子がいた。茶髪でショートヘアー、服は黄色の花柄の服を着ていて、意外とオシャレだ。
「あの、ええっと・・・。」
爾志さんは大分緊張しているのか、さっきから同じ言葉を繰り返していた。すると、後ろに控えていたらしい強気の、今度は僕より少し上の女の人が僕に言ってきた。
「この劇場の出口知ってる?出れねぇんだけど。あと、アンタの連れか知らないけど風のように走ってきた奴が私の妹とぶつかったんだけど!責任取ってよね。」
ああ、風のように走ったということは、絶対凪だ。あいつ、また人を迷惑させて僕に謝らせようとするなんて。それにしても、この二人は姉妹なのか。性格が真逆だな。
「ねぇ!何とか言いなさいよっ!!」
「あ、ごめんなさい。僕は入江櫂って言います。えっと、出口は僕と・・・。風のように走っていた、という人が探してて・・・。すいません、ぶつかってしまって。二人はハンター×デスターの参加者なんですか?」
「はい・・・!そうです。あの、すいません、うちの姉が。」
「晴香のバカ。あたしゃ誰にも迷惑かけてねぇよ。」
「そういう態度よ、月帆おねえちゃん。あ、姉の名前は爾志月帆って言います。あの、短い付き合いになると思うんですけど、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。ええっと、夜海さんと・・・、」
「晴香です。」
「晴香さん。よろしくね。」
「ぜってェあほな船っていうなよ。」
あほな船・・・・ひどいあだ名だな。別に月帆さんはコンプレックスを持ってなさそうだけれど。人はやはり外見だけで見てはいけないのかもしれない・・・。こういう時に使う言葉なのかは別として。
5分後
「それで、意味が分からないここのホールの看板を見つけたんですね?」
「そういうことなんだ。うーん、暗号か・・・なぞなぞか・・・どちらかだろうな。」
「それらしいヒントはないのかい」
「わからない。ホールに入ってみようとしたときに、晴香さんに呼び止められたから。」
「晴香でいいです。なるほど、そういうことなんですか・・・・。では、ホールに入ってみれば何かヒントがあるかもしれません。行ってみましょう。」
晴香は意外と怖いという感情がないらしい。ドンドン先へ行くので少しびっくりしてしまった。こういうところは月帆さんと似ているのかもしれない。や、この人も月帆でいいか。
そうして僕は、同じゲーム参加者の二人とともに、4ホールの看板のヒントを探しに、ホールへとはいっていった・・・。