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2章:触手と姫騎士(6)

◇ ◆ ◇


 真白さんに連れてこられたのは、小さな会議室だった。

 長机を挟んだ向こうに真白さん、僕のとなりには白衣を着た研究員風の女性が一人、座っている。

 後ろ姿だけなら小学生と間違われそうな背格好だが、どうやら20代中盤らしい。

 なんで僕、こっち側なの?


「山本さん、あなた処女よね?」


 真白さんが急にとんでもないこと言い出した!

 女性同士とはいえ、明らかなセクハラである。


「うん、そう」


 無表情のままさらりと答えおった!

 え? 僕が気にしすぎなのかな?


「じゃあ、これ飲んでみて」


 真白さんが、透明な液体の入った紙コップを差し出した。


「……水?」


 山本さんは、手で扇ぐように液体の匂いを嗅いだり、コップを少し傾けてみたりしている。

 理科の実験みたいだ。

 格好から察するに、本当の科学者なんだろうけど。


 ところで、「じゃあ」の前後が全くつながっていなことを気にする人は、ここにはいないのかな?


「毒なんて入ってないから、ぐいっといっちゃって」

「何を入れたのか、詳細なデータを後でちょうだいよ」


 そう言いながら、山本さんはコップの水を飲み干した。

 すげえ! 何か入れられてるのを確信しながら飲んだぞ!?

 2人に信頼関係があるのか、単に変わった人なのか……。


「ん……?」


 やがて、山本さんの目がとろんとしたものに変わり、頬が紅く染まった。

 あれ? この症状、見たことある。


「なにこの気持ち……」


 山本さんが遠慮がちに、僕のシャツの裾をつまんでくる。


 なにこのかわいい生き物!?


「真白さん! いったい何を入れたんですか!」


 半ば答えがわかっていての問いである。


「さっき検査目的で唾液をもらったじゃない? アレよ」


 少しは悪びれて!


「私のナカにまだ残ってるのを使ってもよかったんだけど、さすがにそれはね……」


 なんのことかは聞かないからね!


「やっぱり新鮮じゃないとデータとして扱いにくいし」


 そんな理由!? ホントにそれが理由!?

 倫理観は国家試験会場に忘れてきたのかな?


「あれだけで効果があるのね……」


 真白さんは、僕にしなだれかかってくる山本さんをまじまじと観察している。

 僕が山本さんのとなりに座らされたさ理由がわかったよ!


「いやいや、これで姫騎士化したらどうするんです?」

「その時はその時だけど、多分大丈夫。昨日の実験データによると……」

「あれ? わたしいったい……ひゃっ!?」


 山本さんが僕からぱっと体を離した。


「ほらね。あれくらいの量だど、体に浸透しきらないみたいなの。効果は極めて限定的よ」


 ほらね、じゃないが……。

 完全に人体実験だよね?


「でも効果が出たことは確かね。やっぱり条件は『処女』かしら……。決めつけるにはデータが足りないけれど……」


 PCになにやら打ち込む真白さんである。

 この組織、人権とか気にしないんかな?


「ちょっと見せて」


 ててて、と真白さんのとなりに移動した山本さんが、PCの画面を覗き込む。

 こうして並ぶと、完全にお姉さんの仕事を覗き込む子供だ。


「なるほど……興味深い……」


 自分が実験台にされたにも関わらず、真剣にモニターを見つめている。

 本人が気にしてないならいいか。

 ……いいのかなあ?


 手持ち無沙汰になった僕が、ぼけっと二人の様子を眺めていると――


 ――ビー! ビー! ビー!


 館内にけたたましい警報が鳴り響いた。

 続いて、ブツッというスピーカーのスイッチか入った音。


『害異出現! 害異出現! 職員はA級対応配置! これは訓練ではありません! 繰り返す! 害異出現! 職員はA級対応配置!』


「もう次が出た!? ジュン君! 一緒に来て!」


 部屋を飛び出す真白さんに続いて、僕は廊下を駆けた。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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