これが私から妻に贈る最大の愛のメッセージ
こんなに弱った妻を見たのは初めてだ。
健康診断で少し数値が悪く、検査入院をしただけ。
それだけのはずだった。
「 」
妻の主治医がそう言い、入院期間が延びた。
しばらくしてからまた診察に付き合った。
結果は二人で聞いた。
「 」
レントゲンを指しながら淡々という主治医だが、私は雷に打たれたようなショックを受け、隣にいる妻は静かに涙を流した。
妻の手を握る手に力が入る。
「 」
私は主治医に聞いた。
「 」
主治医の言葉に、私は言葉を失った。
定年退職をするまで私は仕事一筋で、家のことは妻に任せていた。
綺麗で可憐な妻は、強くたくましく、そして優しい母となり、二人の子供も立派に育て上げ、これから夫婦二人でのんびり暮らそうと話していたところだったのだ。
「 」
妻がそう言ってしまえば、それで終わりだ。
私には夫として少しくらいは意見を言う権利はあるかもしれないけれど、最後の決断は妻が下すことだ。
私たちは一旦家に帰ることにした。
□◇■◆
「 」
台所に立つ妻が言った。
「 」
匂いでわかっていたが、妻が嬉しそうに言うものだから、気が付いていないふりをした。
あれから私たちは自宅療養を選択し、静かに生活をしていた。
食卓に美味しそうなご飯が並ぶ。
「 」
それぞれ手を合わせ、二人で声を合わせる。
「 」
一口食べた私がそう言うと、妻は嬉しそうにする。
「 」
妻はいつも謙遜するが、私は、妻が嬉しそうにするからそう言うのではない、本心で言っている。
食べ終えた食器を台所へ持っていく。
妻が食器を洗っているので、私は手伝おうと隣に立った。
「 」
慣れないことをするもんじゃないな。
妻には妻のペースがあるのだ。
素直に謝ってソファに座りテレビを見る。
「 」
洗い物を終えた妻が隣に座り、そう聞いてきたので、「 」だと答える。
次々と出題される問題に二人で答える。
三大栄養素のうち、炭水化物、脂質、あと一つは?
「 」
私が的外れな解答をすると妻が笑う。
「 」
妻の答えがあっていた。
クイズ番組が終わった。正解率は五分五分だった。
それぞれお風呂に入り、寝る準備をする。
何気ない日常。
ありふれた毎日。
一般的な家庭。
その瞬間瞬間が愛おしく、そして大切で、胸に刻む思い出となる。
先にベッドに入っていた妻は本を読んでいた。
「 」
私がそう妻に確認すると「 」と答えたので、電気を消す。
「 」
と言って妻はいつも一日に感謝している。
それは私も同じだ。
人生は不思議だ。いろいろなことがある。
悲しいこと辛いこと、楽しいこと嬉しいこと。
そんな人生を妻と送れて幸せだ。
だから私は毎晩寝る前に妻に、おやすみと共にこう伝えている。
「 」
これが私から妻に贈る最大の愛のメッセージ。