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59 本州上陸

日本から転移してきた工藤仁ジークは異世界で共に育った銀髪の少女ニナと共に、大刀の魔人に会うために海を渡るのであった。

船の旅は二日ほどだった。


そして到着した港町はマコマイの町と同じくらいの大きさの町だった。



「……ってことで、こうやって南下して、まずここの大きな町で大刀の魔人の情報を集めるのがいいと思う。」


僕たちはその町で宿をとると、今後の進路の確認をする。海を渡るときにお世話になった商人のショニーさんたちにもらった地図を見ながら、僕はチヨという町を指差す。ちょうど日本で言う仙台らへんだろうか。


ここからはおよそ歩いて一か月ほどだ。うまく馬車を使えればもっと早く着くかもしれない。


「あの、一つわがまま言っていい?私、魔法都市に行ってみたいわ!」


ニナが珍しくそう提案してきた。魔法都市は日本でいう東京の位置に当たる。つまり、チヨの町から二か月ほどだろう。


「うん。ミラレスが言っていたところだよね。それじゃあ、とりあえずこう行って、こう行こう。」


そうして僕たちはかつて日本でいう奥州街道のルートで南下することとなった。


僕たち二人だけの冒険が改めて始まった。


ある程度旅慣れてきたのと、商人のショニーさんたちに旅について色々教わっていたおかげで旅は大きなトラブルがなく、予定通り1月ほどでチヨの町についた。


「もう私はどれだけ大きい街があっても驚かないわ!!!」


ニナはチヨの町に圧倒されながらそう叫ぶ。


チヨの町は僕を懐かしいような、初めて見るような不思議な感覚にした。町の入り口には二つの大きな仏像が聳え立っており、町の中心にはお城が高く聳え立っていた。


チヨの町はまさしく城下町という雰囲気で建物も北の島のフラヌイの町で見たレンガ造りとは違って木造建築がほとんどだった。まるで時代劇の世界に入り込んだみたいだ。


ニナは早速、店で買った饅頭を頬張りながら歩く。ポロに分けてあげるのに、僕が一口頂戴と言っても分けてくれなかった。ショックを隠せずに、僕はとぼとぼ歩きながら今日の宿を探す。


すると、どこからか、楽器の音がする。


「不思議な音!」


ニナとポロが音の方に駆けてゆく。


僕も彼女らに付いて行ってみると、そこには着物の青年が三味線を弾いていた。


この世界の服装は和装ではない。上下に分かれていて、つまりは洋服に近い。だから、彼の和装は一際目立っていた。彼は民家と民家の間の路地の前で座り三味線を弾いていた。


ニナとポロはその前にかがんで揺れながらその三味線を聞いている。


唄がない、いわば独奏の三味線だった。


一曲が終わったのだろう、彼はふぅと息を吐き、そして目の前でずいずいと自分を見つめる一人と一匹に少し驚いた顔をする。


「とても素敵だったわ!」


食い気味にそういうニナに、青年はかなり驚いていた。ドン引きだ。


僕は青年が可哀そうだったので、ニナを引っ張り上げる。青年は訳も分からずポカンとしている。僕は気まずくて、彼に対して不器用に笑顔を作りながら頭を下げてそそくさと退散した。



彼の三味線は僕も詳しくは知らないのだけれども、津軽三味線と言うものだろう。太棹が用いられた三味線を思い浮かべて、僕はそう思った。


「もっと聞きたかったわ」


ニナはまた串焼きのようなものを食べながらぶつくさと文句を言っていた。


「あの人はびっくりして困っていたよ」


そうして、その青年を後にして、宿を再び探し始めた。


僕はその時、青年の服装や、三味線、何より、腰に差された日本の刀が少し気になったが、それ以上は深く考えずにいた。



その町でしばらく大刀の魔人の情報について聞きまわった。まだ大刀の魔人がいるところから離れているのか、詳しい情報はなく、北の島でショニーたちから聞いたあまりよくない噂を聞くだけだった。


そして、至る所で聞こえた噂がもう一つある。この町には今、『殺し』がいるというのだ。


ここ最近、何者かによって、町の役人や商人が次々に八つ裂きにされ、首を晒されているらしい。最近は町の裏の人間までもが殺され始めていてどの方面の人たちも躍起になって犯人捜しをしているそうだ。


治安も悪化しており、住人たちは戦々恐々と暮らさざるを得ないということだった。


ある日、ニナと歩いていると、僕たちはその現場に出会ってしまった。


それは人間の首だった。口を開け、目が開いたままで道端に首が落ちていた。あたりの地面には血が染み込んでいて、少し離れたところに体が落ちていた。腹部を一閃に切られたのだろう腹からは臓物が出ていて、手足は不自然な方向に曲がっていた。


人々は怖がった顔をしながら、それを避けて歩いていた。


それを見て呆けていると、衛兵だろうか、甲冑を来た者たちがやってきてその死体を検分すると数人で手分けして運んでいった。


後に聞いた話だと、また役人の一人が殺されてしまったらしい。


僕たちは、暗い気持ちで、その現場を後にすると、宿に帰った。


「ここではもう情報は集められそうにない。それに物騒な事件も起きている。なるべくはなく魔法都市を目指して、南に向かうのがいいと思うな。きっと僕の予想だと、その魔法都市はここより大きいはずだ。」


ニナとポロはそれを聞いて頷く。


僕らは旅の準備をして、二日後町を出ることにした。


その次の日も、誰かが殺されたらしい。


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