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58 sideB 蝶

俺とチルチルは扉から出る。


ゆらりと人影が揺れ、こちらを見た。


その姿に息をのむ。それは異質だった。人ではない。だが、人からできているようだった。


腹部には水槽のようなものがあり、脳やいくつかのほかの臓器が複数個ぷかぷかと浮かんでいた。頭部は人の顔をしていた。それも不気味な笑顔だった。ぶらぶらと手を垂らし、こちらに歩いてくる。


「いらっしゃいませ、IDカードを提示してくださイ。」


その不気味な生物ともロボットとも言えないものはそう言った。そういう声の音を発した。


チルチル曰く、IDカードとはダンジョンカードのことらしい。


「おい、俺にダンジョンカードを貸せ。」


チルチルから銀色のカードを受け取る。


俺はそれを持って、そいつの近くに寄っていく。そして、少し緊張しながら、カードをそいつに渡した。


「ただいま職員情報とIDを照会いたしまス。しばらくお待ちくださイ。」


そうして、そいつはカックン、カックン、と首を揺らす。


「照会完了しましタ。」


そいつはこちらを見た。


「あなた、職員じゃありませんネ。」


そう言って首を不自然に伸ばすと、ずいっと頭をこちらに伸ばしてくる。


「何者ですカ?」


俺が答えられずにいると、そいつは訳もなさげに言葉を続ける。


「困りましたネ。あなたたちがこの職員証を不正入手していたなら私はあなたたちを拘束しなければなりませン。それは実に面倒ダ。だが、それが仕事ですからネ。」


そう言ってそいつはカックンカックンと不気味な笑みが描かれた顔を揺らす。


「只今、上位の許可が下りましタ。施設規約第五十八条第三項に則り、被疑者らの拘束を開始しまス。」


そいつはこちらを見る。


「できれば抵抗しないでくださいネ。」


カクッと首を傾げた瞬間そいつの手が俺の方に伸びてきた。


「チルチル、ミクを連れてエレベーターで上に戻るんだ!!」


俺は叫ぶと同時に後ろに飛ぶ。と同時に、そいつに雷を打ち込んだ。雷はそいつを貫き、あたりに煙が立ち込める。


「ほう。あなたオリジナルでしたか。でも、無駄ですヨ。エレベーターは動きませン。あなたたちはこの場から逃げることができませン。私たちの腹の中にいるも同然ですもノ。」


「エレベーターが動かないのだ!」


チルチルが後ろから叫ぶ。


クソ。


「抵抗はしないでくださイ。間違って殺してしまってはまた私が0号に怒られてしまウ。人間と言うのは本当に脆くて困りますからネ。」


こいつを倒すしか方法はない。


「チルチル!援護を頼む。何ならこいつを潰してしまっても構わねえ!」


叫びながらそいつに向かって空を蹴る。ロボはミシリと音を立ててよろめいた。チルチルの魔法だ。


「ほう、オリジナルが二人。これは予想外。そして、私一人では無理そうでス。しかし、これほどの脅威はここで消さなければなりませんかネ。


仕方ありませン。まあ、怒られるのは慣れっこですかラ。


私知っているんですヨ。」


そいつはミシミシと音を立てながら、ヒヒヒと笑う。


「人間と言うのは、バックアップがないのでしょウ?」


そう言うと、腹の水槽が赤く光り始める。


「チルチル!ミクを頼む!」


俺は全力の魔力を手のひらに込めてそいつの腹部にぶち当てる。


目の前が眩く光った。熱か爆発か魔力の反作用かわからないがすごい量のエネルギーが放散してゆく。抑え込め。二人を守るためだ。


自分の体が、指先から、徐々に無くなっていくのがスローモーションで見えた。





ああ、じじいの約束守れなかったな。




そして俺は意識を失った。









「4号信号消失しました。被疑者排除のために自爆したと思われます。」


その女性は背中から蝶の羽が生えていた。とても美しい女性だった。

彼女は、額に手をやり、ため息をつく。


「はあ、なんで彼はいつもそんな自分勝手なのでしょう。そもそも玲玲リンリンはロボットに自我を持たせすぎなんですよ。管理する私の気持ちにもなって欲しいです。


それで、被疑者はどうなりましたか。」


モニターを見ていたロボットはしばらく考えたのち、彼女に伝えた。


「オリジナルと人間は損傷なし。4号と交戦していたと思しき、もう一人のオリジナルは4号とともに信号消失しました。」


「オリジナルが居たのですか!?しかも、一人失ってしまったと。


はぁ、何が起こっているやら。私たちも平和ボケしすぎたようですね。いいです。私が行きます。彼らの居る区域を教えてください。」


「UG3―O3です。」


「わかりました。しばらく指揮系統は2号に任せてください。どうせあの子はゲームでもしているのでしょう。引っ張り出してきてください。」


女性は部屋から出ると、立ち止まってため息をついた。


そして背筋を伸ばすと凛として歩き始めた。


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