53 sideB リンリン工学研究所
「もともと、今いる場所は地上から入っていわば地下一階なのだ。チルチルが行きたいのはそのもっと下、最下層なのだ。」
「お前はどうしてそんなこと知っているんだ?」
チルチル曰く地上に向かう際に、よくわからない部屋などを探索していると、壁に貼り付けられた地図があり、それをわかる限り読み解いたらしい。そしてさらに地下があるということを知ったのだという。
「よくわからない言語で書かれているからほとんどはわからなかったのだ。それでも、さらに地下には、何かがあるらしいのだ。」
チルチルがそこまで話すと、ミクが俺の服をちょいっと引っ張る。
そうして俺にダンジョンカードを渡した。大会でもらったやつの残りの一枚のようだ。
俺はダンジョンカードを見る。カードは右下に黑い蝶のマークがあり、何やら読めない字が色々と書かれていた。
「これがなんだ?」
「ミクはこれ読める。その言語これ?」
そう言ってミクはチルチルにカードを見せる。
「たぶん、そうなのだ。この複雑な文字が色々なところに書いてあるのだ。」
「なんで読めるんだよ。」
俺が投げやりに呟くと、ミクはこちらをふふーんとみて自慢げな顔をした。
「ミクはこれでも魔王国で第一級諜報員。」
こいつ頭だけは良いからな。
「おい、ミク、このダンジョンカードにはなんて書いてあるんだ?」
ミクは少し不満そうにこちらを睨む。俺は知らんぷりをしていると、諦めたようで、しばらくカードを見つめて、考える様子を見せた。そして口を開く。
「玲玲工学研究所 来客用入館証」
俺はそれを聞いて驚く。リンリンっつったら、知らない奴はいない。
黒の魔法使い。
またの名を武神リンリン。
始祖の五人の魔法使いの一人。
「訳が分からねえ。」
そのリンリンに因んだ施設なのだろうか。有名だから名前を使うこと自体はそれほど珍しくはない。武神と言うことで人気もある。
それになんだ、工学研究所とは。俺はいくら考えてもわからないので、仕方なく考えるのをやめた。
「まあいいか。んで、チルチル、お前が地下に何があるのか知っているのか?」
チルチルは首を振る。
「何かすごそうなものがありそうだから、行きたかったのだ。ロマンなのだ。」
俺はため息をつく。
「なんだそれは。俺たちはそんな暇じゃねえ、チルチルには申し訳ねえが「待って」」
突然ミクが俺を制止する。
「思い出した。リンリン工学研究所、何か引っかかってた。」
「「???」」俺とチルチルはミクを見る。
「ここに五大古書の一つ、ある、かもしれない。」
俺たちが驚くのを片目に、ミクは続ける。
ミクの話によると、魔王国にいた時に見た文献では、黒の魔法使いリンリンは、自分の生まれた国に戻り、その民を救うため戦い、そしてその民と共に姿を消したと言われている。
つまり、魔神ロアンと違って、死んだとはされていない。
そして、そのリンリンが姿を消した先がこの地下だとすると、辻褄が合う、ということらしい。
ならば、その武神リンリンが残した五大古書ならば……
「『工学の書』か……。」
「何なのだ?そのコウガクの書というのは。」
チルチルお前、知らねーのに驚いていたのかよ。
俺は呆れつつ、教えてやる。
「そもそも五大古書っつう始祖の五人の魔法使いが記したと言われている五つの書がある。
そのうち武神リンリンが記したと言われるのが、『工学の書』。内容はまったく分かっていないが、噂では、万物の製造法が書かれているらしい。」
チルチルは「そ、それは凄いのだ」とアホみたいな顔をして驚いていた。
本当にそうならば事情が変わる。この地下にある、「すごそうなもの」が五大古書ならばそれを探さない手はない。
「おい、方針変更だ。チルチル俺たちをその地上に行く途中で見た地図があるところに案内してくれ。」
「いいけど、結構遠いのだ。それにロボットもいるから、戦う準備もしなければいけないのだ。」
そう言って、チルチルは黒い鎧を見る。
「お前、あれなくても戦えるだろ。」
そう言うと、チルチルは少ししょぼんとした顔をして
「ロマンなのだ……」と呟いた。
俺はため息をつく。
「というか、そもそもロボットってなんだ?」
俺がそう聞くと、チルチルが雄弁に話し始める。
それは生物ではないが、魔法のようなものを使い、またある程度の魔法を無効化する鋼鉄の体を持ったものらしい。ここを守るように働いているようで、侵入者である俺たちを攻撃してくるらしい。
まず、魔法を使ってくるという時点で厄介ではあるが、さらに魔法を無効化するときた。
「はあ、わかったよ。長丁場になりそうだからな。俺たちも町で色々道具をそろえてから挑むことにする。その鎧を治すのにどれくらいかかるんだ?」
「う~ん、三日もあれば治せるのだ。」
案外早く直るな。
「じゃあ、三日後から攻略開始だ。チルチル、とりあえずそれお前ひとりじゃ運べないだろ。俺が持って行ってやるから、お前の家に案内しろ。」
俺がそう言うと、チルチルは首を振る。
「自分で持てるのだ。」
そう言って、鎧の方に手を向けた。
すると鎧が浮く。これはチルチルと戦った時に使っていた魔法か。見たこともないし、使い方もわからねえが、これは相当規格外であることは確かだ。
「行くのだ。付いてくるのだ」
そう言って俺たちが入ってきた方とは逆方向にチルチルは歩いていく。
「おい、そっちは逆だぞ。」
「どこからでも出れるのだ。チルチルの家はこっちから出るのが近いのだ。」
そう言って、チルチルがすたすたと歩いていくので俺とミクも駆け足でついていく。
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