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49 sideB 魔法を使わない魔法使い

俺が、はあ?と聞き返すとミクはもう一度繰り返す。


「ミクも大会に申し込んだ。」


「なんでだよ!!」


俺は思わず怒鳴ってしまう。


するとミクは俺の目をちらちら見ながら、弱弱しく答える。


「今回は魔法なし。シュルクだけ戦わせてミクだけが見てるのはおかしい。」


ミクは本気のようで、俺はため息をつく。


まあ、俺が守ればいいか。俺はしぶしぶ折れてミクと競技場に向かう。


競技場に入ると、そこはまるでアリーナのように、だだっ広い円形の場所が、5メートルほどの壁に囲まれており、その壁の上に観客席がある。


俺もミクも、会場を埋め尽くす観客と、その熱気に思わず息をのむ。これは確かに大イベントだ。



「さあ~、今年もやってきました。『エンジンでもっとも強い奴はだれだ!大乱闘競技大会!』今年は参加者がなんと216人!!……え、なんだって、昨日二人増えた?


え、えっと間違えました。なんと218人、過去最大の参加者となりました!


それは当然、そう!なぜなら、今年の景品はダンジョンカード三枚!上層部によると、従来一枚にでしたが、パーティー制を取った方がダンジョンでの生存率は高いということで今年から三枚に……え、何、この話したらダメ? 



と、とにかく、今年は過去最大の規模で開催されています!そして参加者も、歴代最強と称しても過言ではないでしょう。歴代優勝者も軒並み参加しております!


今年の優勝は、ダンジョンカードは、誰の元に!!!


ではレギュレーションを確認していきたいと思います。……」



どうやら、そのどうやってるかは知らんが、会場に響くほど、やたら声が大きい司会によると、魔法なし、武器なしでこの会場で最後まで立っていたやつが勝利、ということらしい。


単純かつ残酷なルールだ。下手したら死人が出るだろう。それでも、この地下の住人たちはそれだけ刺激に飢えているのかもしれない。


ミクが俺の袖をぎゅっとつかむ。


ったく、こえーなら最初から参加しなけりゃいいのによ。

俺はため息を漏らす。


競技開始は3分後らしく、それまではその場で待機となった。周りからはごちゃごちゃと話す声が聞こえてくる。


「……前チャンピオンのジグラードも出てるらしいぞ。あいつダンジョン探索者のくせにさらにダンジョンカードを集めるために参加してきたらしい。」


「そんなこと言ったら、べマフ流の師範も来ているって話しだ。」


「おい、あそこにいるの、破滅のジュマロじゃねえか。」


「今年はやべえぞ、虐殺アボロが参加しているって話だ。流石に死んじまう。俺は早々に倒れたふりをする」


「おい、あのゴイル財閥は御曹司を勝たせるために、すごい人数のやつ雇ってるらしいぞ。」




ふん、くだらねえ、俺はそう思うが、どうも俺の袖を掴むバカは震えているらしい。

こいつの思考がアホ過ぎてわからねえ。マジでなんで参加したんだよ。


三分はあっという間で、司会がカウントダウンを始める。


「…5、4、3、2、1、始め!」


その号令と同時に色々なところから雄叫びや、悲鳴、怒声が響き渡る。


俺らも当然例外ではなく、まだ子供のような奴らが競技場の隅でちょこんと二人いたら鴨として目を付けられる。


ギラギラとした目のやつらが俺たちの方に向かって走ってくる。ミクがぎゅっと俺の袖を掴んだ。



「おい、ミク、俺の陰に隠れてろ。」



そう言って俺の袖を掴んでいるミクを引きはがし、持ち上げて競技場の壁の近くにポンを置く。


「ここでいい子にしてろ」


ミクはこくんと頷くが、それでも不安な顔をして俺を見上げる。俺は呆れてため息をつく。


「なんだっけ?エンジンで一番強い奴が、ってか。あほくせえ。」


ミクが不思議そうに俺を見る。


「俺はなぁ、世界一だ」


そう言ってミクに笑って見せる。


「目つぶってろ。砂が舞って、目に入ったらいけねえ。」


ミクにそう言って、ふぅ、と息を吐き呼吸を整える。


「魔道朱殷流 脚式 無魔一閃」


俺は振り向き様に左脚を軸にして右足で後ろ回し蹴りを放つ。


風を切る音がして、その瞬間、あたりの時間が止まったかのように、すべての音が消える。



「おい、ミク、目開けていいぞ。」



目を開けたミクは、驚きで目を見開く。



「まあこんなもんだ」



その場にはもう俺とミクの二人しか立っていなかった。


蹴りの風圧で、全員が気絶し、地面に倒れている。


まるで時間が止まってしまったかのように会場は静まり返ってた。



「おい、ミク。俺を叩け」


呆けていたミクは俺の言葉で現実に戻ってくるも、俺の言葉を理解できないのか、不思議そうな顔をする。


「いいから、ほら、早くしろ」


ミクは頷いて、トコトコと俺の方に来て、ぽかっと腹の辺りを叩く。


「やられた~」そう言って俺は倒れた。



それを見て、クスっ、とミクが笑う。


俺はなんだかそれが嬉しくて、口元がにやけてしまう。



「おい、司会者!」そう叫ぶと、


「え?は!えーと?」司会者が戸惑っている。


「ん、こいつが勝ちだろ」そう言ってミクを指差す。


「あ、はい!勝者!赤毛の女の子?!……え、誰?」


司会がそうアナウンスした.


瞬間、会場がワー!と一気に盛り上がる。



魔法なしの大会だってか。


クソ魔法が弱いくせに、魔王国二位まで登り詰めたじじいの一番弟子が、魔法でしか戦えねえわけがなねーだろ。



おい、じじい、ちょっとはお前の修行、役に立ったぞ。



競技場の青く塗られた天井を見て、心の中でそう呟いた。


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