47 sideB ダンジョンカードと闘技会
「ってなことで、婆さん。俺たちダンジョンカードをどうにか手に入れたいんだ。ミクが言うにはこの都市で高額で取引されているらしいが、俺たちは一文無しだ。なんかいい方法知らねえか。」
俺たちはまた最初の『案内』に来ていた。
ミクが集めてきた情報によると、ダンジョンに入るためには一人一枚、そのダンジョンカードとやらが必要らしいのだが、如何せんそれは数が少なくものすごい高値で取引されているらしい。ダンジョンカード自体はダンジョンの中から見つかる遺物のひとつらしく、入手に相当な手間がかかり、数に限りがあるのだ。
「そうだねぇ、あたしが知っているのも、お金を出して買うくらいかねえ。」
俺たちはがっくりと肩を落とす。
「すまんね、力になれなくて」そう言って婆さんは謝る。
「いいんだ、婆さんが謝ることじゃねえ、むしろありがとうな。」
これはそう言い、その『案内』を離れようとする。
「おい、あんた。」
突然婆さんに声を掛けられ俺は不思議に思って振り向く。
「どうせ、ここらじゃ、泊まる場所もないだろう。もうじき辺りも暗くなる。うちに泊まったらどうだい?」
「いいのか?こんなあったばかりのよくわからない奴を家に泊めて。」
婆さんはひっひっひ、と笑い
「あんたみたいな魔人が悪い奴だったならもうあたしゃ生きていないよ。ほら、こっちだ。お嬢さんもおいで。」
そう言って、婆さんは奥へのドアを開けて俺たちに手招きする。
「なんだか落ち着かねえな。」
婆さんの家はコンクリートのようなものでできていて、壁を触ってみるとひんやりと冷たかった。
木でも、レンガでもない。コンクリートの家に庶民が住めるなんてこの町はなにかずれている気もした。
「すまないねえ、外から来たあんたたちには合わなくて、くつろげないかもしれないけれど、せめてゆっくりしてっておくれ。」
そう言いながら婆さんがお茶を持ってくる。
「あれ、なに」
ミクがお茶を飲みながら、部屋にある、何かを指差した。
それは動く絵だった。音を出しながら、その絵は動き続けている。
「これはテレビっちゅうもんじゃ。都市の誰かが、この流す映像を作って、それをここに送ってくれて、私らが見れるってわけさ。」
「お~」ミクが感嘆の声を出す。
よくわからねえな。
俺はその動く絵、テレビを見る。
中にはおっさんが、話している。おっさんはこちらを向いていてまるで俺たちに向かって何かを話しているようだ。
「さあ、さあ、今年もこの時期がやって参りました。いよいよ明日、年に一度の大イベント、『エンジンでもっとも強い奴はだれだ!エンジン大闘技大会!』
数年前の漆黒の魔人の大波乱を受けて、レギュレーションとしては、素手のみ!武器の仕込みもなし!強者なら拳で語れ!
そして皆さんお待ちかね、優勝賞品は多額の賞金に加えて、例年通り『ダンジョンカード』。だあーーー。」
「これだ!!!」俺はその男の話を聞いて叫ぶ。
婆さんとミクが驚いたように俺を見る。
「この競技会ってのに出て優勝して、ダンジョンカードをもらえばいいんじゃねえか!」
「ああ、そんなものもあったかね。でもその大会では魔法が禁止だよ。数年前に漆黒の魔人が数年優勝して、視聴者からのブーイングがひどくてね。つまらないってことで、漆黒の魔人が参加しないように魔法が禁止になったのさ。」
婆さん曰く、強いものを見つけて、ダンジョン攻略を進めてもらい、都市をより発展させようという都市全体の意向による大会らしく、このエンジンでは年に一度の一大イベントらしい。
「だから、魔法を使えるあんたにゃ、出れないよ」
それに出るったって危ない大会だから怪我じゃすまないよ、そう続けた。
「待て、じゃあ、あれだ。俺が魔法を使わなければ出場できるってことだろ。」
婆さんは驚いた顔でこちらを見る。
「それは、まあ、そうだけどね。」
「なら、それで俺が優勝すればいい。簡単な話じゃねーか」
それはそうと決まったら、大会に出場の応募をするだけだ。
「婆さん、どうやったら出場できるんだ?」
「ダンジョンの近くに大きなアンテナがある建物がある。それがテレビ局だから、そこに行けば応募できると思うがね、前日だしどうだろう。それにしたって、その大会は魔法に頼らずに戦ってきた猛者ばかり出場するんだよ。」
アンテナっていうのはこういうやつだよ、と言って婆さんは紙に不思議な形のものを書いた。
俺はその紙をもって部屋を飛び出す。
「大丈夫だ、婆さん。俺は魔法なしでも死ぬほどつええんだよ。ミク、行くぞ、ついてこい」
その建物は確かにそのアンテナとやらが目立つのですぐに見つかった。
申し込みは終わっていたらしいが、ミクが何か交渉してくれたようで、無事参加できるようだ。
手続きも簡単に終わり、二人でばあさんちに戻る。
「シュルク、本当に大丈夫なの」
ミクが不安そうに俺を見る。
「大丈夫に決まってるだろ。」
俺は、ミクをこの都市から出す方法を見つけなきゃならねんだ。
心の中でそう呟き、自分を奮い立たせた。
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