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45 sideB エンジンダンジョン

元魔王国十人衆のシュルクは育ての親、ガローに最期の別れを告げ、魔王の暴挙を止めるために、付き人のミクと共に修行をしながら、魔王国に向かうのであった。

オレンジ色の髪をした青年が、赤い髪にどくろの髪飾りをした少女を抱えて、海の上を走っていた。


「ったく、大陸は遠すぎるんだよ。」


「シュルク、お腹すいた」


「うるせぇ、おめーは俺に抱えられてるだけだろ。俺が何時間走ってると思ってるんだ。」


「むぅ」


俺たちはとりあえず大陸にいるという魔人を探すことにした。


噂に聞く、大陸にいるという魔人は、漆黒の魔人、鮮血の魔人、強欲の魔人の三人だ。


そのほかに一人、ニホン国に大刀の魔人がいるらしいが、魔王国時代の都合でそいつに俺が会うのは、あまりうまくないと思ったので、大陸にいる魔人の誰かを見つけて、そいつをぶっ倒すことにした。


その名も強い奴を倒して強くなる理論だ。


ミクがお腹すいたとあまりにもうるさいので、海を凍らせて座れるところを作る。


俺は海に向かって雷を落とす。すると、気絶した魚たちが浮かび上がってくる。ほい、とミクにどっかの町で買った鉄の槍を渡すと、ミクはそれを受け取ってプスプスと魚を刺して獲ってくる。俺はその槍をミクから受け取ると、火の魔法を槍ごと熱して魚を焼く。そして氷の上に焼けた魚をぶちまける。


二人、無言で魚をもぐもぐ食べる。


「よっしゃ、行くぞ」俺がそう言うと、ミクがコクンと頷く。俺はまたミクを抱えると、海を走り始めた。





そうして数日海を渡って、大陸についた俺たちは適当な街で早速魔人の情報を集める。


ここから、二か月ほど西に行ったところの町の地下に暗黒の魔人がいるという噂をミクが持ってきた。地下ってことは谷底ってことか?


しかし、西に進めるのは丁度いい。


とりあえずその情報をもとに、俺たちはその方向に進むことにした。




俺の足だと一カ月ほどでその噂の町に着いた。その街はエンジンという町であり、俺が見る中でもかなり大きい部類の町だった。


町の奥には本当に自然物かと疑うほどの綺麗な山が屹立しており、そのふもとに広がる形で町並みが作られていた。


城壁は何十メートルも続いているようで、町を囲むように建てられており、いまだ建設中のようだ。町の建物の多くは木造建築であり、瓦の屋根に赤い壁、そして至る所に文様が刻んである。


「オリエンタル」


ミクがポツリと呟く。意味は知らん。


至る所で人々が活気に満ちた顔で過ごしている。俺たちはその街に滞在してしばらく情報を集めることにした。


数日間(主にミクが)情報を集めて分かったことがある。


まず、漆黒の魔人というのは、都市伝説のような人物であり、会ったことがあるものはいなかったが、それらしきものを見たという噂はあった。

ある者は町の奥に聳え立つ崖のような山「武神山」から降りてきたと言った。

ある者は、数年前、禁忌の井戸の近くで見たというものもいた。


そしてもう一つ、都市伝説級の話だが、この町には「エンジンダンジョン」なるダンジョンが存在しており、そこからは色々な古代魔道具が発掘されるらしい。ただ、いまだかつてそのダンジョンを見つけたものはおらず、都市伝説とされている、とミクは話していた。


そっちは興味ねえ。


俺が今興味あるのは漆黒の魔人だけだ。


とりあえずミクの情報をもとに俺たちは情報にあった禁忌の井戸というものをとりあえず見に行ってみた。


その井戸に落ちると、二度と帰ってこなくなるという噂から禁忌の井戸と言われているらしい。



「まさかあの井戸がそうなのか?」


俺がミクに尋ねると


「多分、そう」とミクは頷いた。


それはまるで神殿のような建物の片隅にポツンとあった。


そこには一見普通の井戸があり、立ち入り禁止と書かれた看板と木の柵がその井戸を囲んでいた。


俺はミクを抱えて柵を飛び越えて、恐る恐るその下を覗いてみる。下は真っ暗でよく見えない。


入ってみるか。

いざとなったら、飛べばいいしな。


「いくぞっ」そう言ってミクを抱えてその穴に飛び込む。


その穴に入るとすぐに地面に着地する。拍子抜けかと思ったが、傾斜が付いているようで、だんだんと滑り落ちてゆく。


それはまるで滑り台のようになっており、しばらく俺たちはその太い管のようなものを滑り落ちて行った。


どれくらい滑り落ちたかもわからないくらい時間が経った。


そして終着点なのか、よくわからない小部屋のようなところにたどり着く。まるで雨水の排水管のような仕組みだな、と思った。


「ったく、意味わかんねーな」そう言って頭をかく。ミクはその滑り台のようなものでぐるぐるしたせいで酔ったのか、目を回していた。


「吐きそう」


「ったく、吐くなら俺から離れて吐け」そう言って彼女を地面におろす。


「手掛かりはこの扉だけだな。」

小部屋には、俺たちが地上から降りてきた巨大な排水管のようなものと、質素な鉄のドア一枚しかなかった。天井では明かりのようなものがちかちかと今にも消えそうな具合に光っている。


「開けるぞ」


酔って口に手を当てているミクを無視して俺は扉に手をかけ、開く。


「っっっ!?」



俺の目の前に広がるのは見たことのない光景だった。


それはまるで未知の世界だった。


「おいおい、こんなの魔王国でも見たことねえぞ」


そのエンジンという町は、地上はよくある大き目の町という印象であったが、地下は全く違ったものだった。


「これはもう都市だ。」


魔王国でも少ないコンクリートの建物が空高くまで屹立しており、ひしめき立っている。そこの建物を縫うようにたくさんの人が行きかう。こんなのが地下にあったなんて信じられねえ。


なぜか地下なのに明るい。これは明かりが天井についているのか?

そう思い上を見上げるも、天井は見えない。どれだけの高さなのだろう。


周りには、至る所に看板や標識が乱立している。



俺が呆けていると、扉の目の前にある店のようなところにいる婆さんが手招きをしている。その建物には前面に惜しみもなくガラスが使われており、建物の中が丸見えである。

看板には「案内」と書かれていた。


俺はミクを引っ張って、その建物の中に入る。驚くことにその建物の扉は自動で開いた。


「兄ちゃん、訳が分からないだろう」婆さんがにやけながら、俺に言う。


「あ、ああ。何が何だかだ。ここは何なんだ……?」俺がそう聞くと婆さんはひっひっひっと不気味に笑って言う。


「ここは世界屈指の古代都市エンジンだよ。地上のあれは飾りだね。この都市はどこの国にも属さない独立都市、いわばこの町が一つの国のようなものだ。


そしてかつて繁栄したと言われている古代都市がそのままに残っているから、失われし古代技術(ロストテクノロジー)がそこら中に溢れかえっておる。


珍しかろう。」


そう彼女は笑った。


その都市の光景は本当に圧巻だった。

至る所に建物が屹立していて、その間を人々が縫うように歩いてゆく。人々は見たことのない素材の服を着て、見たことのない道具を操作していた。



そしてその婆さんはまるで、魔女が悪だくみをしているときのような顔で俺にこう告げる。


「ただね、あんたが知っとかなきゃならんことがある。


この都市はね、一度来たら、もう帰る方法はないんだよ」


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