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40 商人の心得


「それじゃあ、無事馬車が直ったことを祝して~」


「「「かんぱーい」」」


ショニーさんが連れて行ってくれた酒場はとっておきのところらしく、ゴエさんも店に行くまで楽しみでそわそわしていたほどだった。


僕らはジュースを、ショニーさんとゴエさんはビールのようなシュワシュワとしたお酒を飲んでいた。色はなんだか茶色っぽい。


でてくる料理は見たことのないものばかりだった。


「これは岩名羊のソテー、それは夜鳴き魚の香味蒸しで……」とショニーさんは一品一品説明してくれる。


試しに夜鳴き魚の香味蒸しなるものを食べてみる。不思議な色の魚だったが、身はホロホロしていて、噛むとうまみが口に広がった。そしてスパイスのピリッとした香味もいいアクセントになっていて、本当に食べるのが止まらなくなってしまいそうだ。


横のニナは、そりゃそうだろ、と思うくらいに感動、感激、完食の三拍子である。次々と料理が彼女の口に吸い込まれては消えてゆく。


「おいひい!!!!」


いつから彼女は大食いキャラになってしまったのだろうか。



ある程度食事も進み、会話も弾んできた中でショニーさんが切り出す。


「それでね、私から提案がある。」


僕とニナがショニーさんを見る。


ショニーさんの提案は僕らを南の海を渡るための港まで送ってくれるということだった。


僕は少し考えてからそれに答える。


「あ、あの、とても嬉しい提案なのですが、今回はお断りさせていただいてもいいですか。」


ショニーさんもそしてゴエさんも意外な顔をした。


ど、どうしてだい?とショニーさんが困ったように聞いてくるので、これ以上僕たちがショニーさんの商売の妨げになるのも気が引けると、伝える。


「そんなこといいのさ!!大丈夫!君たちがそんなこと心配することないよ!!」とかなり大げさな、まるで演劇のセリフのように言った。


そこに口を挟んだのはゴエさんだった。


「おいおい、そんなこと言ったってな、ショニー。ジークたちには本当に申し訳ないが、私らの商売だってギリギリなんだ。」


どうやら二人ともお酒がかなり入っているのか口論は熱くなっていく。


「そんなこと言ったって君、この子たちはどうするんだい!!」



「それはよ、本当に申し訳ないと思うぜ。けどよ、言っちゃ悪いが、あんたは損得勘定がなっちゃいない。商人じゃないあたしから見てもわかるよ。だからもっと損得にシビアにならなきゃいけねえ。今回は本当に心苦しいがよ、ジークたちを送っていくのはやめるべきだと思うね!ない頭でも考えればわかるだろそれくらい!」


ゴエさんは次第に感情が高ぶったのか、ショニーを睨みつける。


僕らはアワアワしてしまってどうすればいいのかわからない。


「違うね」ショニーさんがぽつりとつぶやく。


今までの二人のやり取りならばここでショニーさんが謝って終わりだ。

しかし、そうならなかったので僕は少し驚く。



「違うよ、ゴエ、僕の目指す商人ってのは金を数えて増やす商売をする人じゃないんだよ。それは、僕がなりたいのは人と人を繋ぐ商人なんだ。だからね、人を大切にすることが何より大切なんだよ。」


「んなこと言ったって、稼げてなくて、自分の店も持ててねーじゃねーか!稼げない商人がなんも価値がねえことなんて世の中の常識だろ!」


「うっ、痛いとこをつくね。


……でもね、こうやって君たちと美味しいご飯を食べれるくらいはお金があるさ。


それにね僕はさ、お金は多ければ多いほどいいとは思わないんだ。確かにある程度は必要だけどね、でも例えば他人が僕のことをお金が少ないから不幸せだなんて言うことは絶対許せない。」


ゴエさんは首をかしげる。


「わからないかいゴエ。僕の幸せは僕が決めるのであって、他人の、お金あれば幸せみたいな、クソみたいな価値観で判断されるのはまっぴらごめんってことだよ!!!」


だから!!とショニーさんが続ける。


「僕はその子たちと道中でたくさん話をして、無事南の町までたどり着いて、そして何年後かわからないけれど、無事成長して立派な大人になった彼らと一緒にあの時ありがとうございますとか言ってもらって、またこうやってお酒を飲むことが、何千の金貨よりもずっとずっと欲しいものなんだよ!!!」


僕たちもゴエさんもショニーさんのあまりの気迫に驚いて言葉が出なかった。

そして店の中もいつの間にか、しんと静まり返っていた。


それにショニーさんも気が付いたのか「え、いや、あの、え、私はただ……」と戸惑っているとほかの席の方から「よく言ったぜ兄ちゃん!!」とヤジが飛んできた。

そのを皮切りに「感動したぜ!」「いいこと言うじゃねえか!」と次々に賞賛の声が飛んでくる。


ショニーさんは「あ、ありがとうございます」と言って縮こまって頭をかいている。

それをみてゴエさんも、腕を組んで、ため息をつく。


その日は夜遅くまで店全体がどんちゃん騒ぎとなっていた。






次の日、僕らは僕らの宿で目が覚める。昨日はいつの間にか寝てしまっていて、宿の主人に聞いたところ、ゴエさんが僕たち二人を担いでポロと一緒に帰ってきたらしい。


少しも起きなかった自分が恥ずかしい。


寝ぼけたままのニナと宿の食堂で朝ご飯を食べながら、今日ショニーさんたちの宿にお礼を言いに行こうと考えていると、僕らの宿の入り口の戸が開き見知った顔の女の人が入ってくる。


「おう、ジーク、ニナ昨日は、よくお休みだったな」


「すみません、ゴエさん。これを食べたらお礼を言いに行こうと思ってたのですが……」


「んなこといいんだ。


それより少年少女、冒険の始まりだ。それ食ったら15分で用意して来な。」


そう言って彼女は出て行った。


それはつまり……。


僕は急いで朝ご飯を平らげ、寝ぼけるニナをせかして、用意をして、宿の主人に丁重にお礼を言って宿を出た。


宿の前にはショニーさんとゴエさん、それに馬車が一台止まっている。

二人はもう馬車に乗っており、ショニーさんが御者の席に座っていた。


「乗ってください、お二人とも。私たちが責任をもって南の町、マコマイまで連れて行きましょう」


そう言ってショニーさんが笑った。


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