38 再会と事情
「とりあえずこの町で必要なものを買おう、しばらくの食材と、地図だね。」
ニナは僕の話を聞きながら頷く。
「そのあとは、今日ショニーさんから聞いた話だと馬車の乗り合いがあるみたいだから、そこに言って南に行く人がいないかを聞いてみよう。」
ちなみに、ショニーさん達の話の中に冒険者ギルドの支部あるというとても興味がそそられる話が出てきたが、今の僕らにギルドに入るメリットはそんなになさそうなので残念ながらスルーすることにした。
「その馬車の確認が終わったら、残りは町の観光だ。できるだけ早く出たいから、馬車が明日にでるということになったら今日一日軽く観光してすぐに移動することになるけど、それはわがまま言わないでくれよ。」
と僕が言うと、は~い、とやや不満げな返事が返ってきた。
次の日の朝、僕は窓の外をみて驚く。
空一杯に水色の絵の具をこぼしたように曇りのない青空だ。今までの雨が嘘だったかのようだった。
早速用意をして宿を出る。
ニナが「わあぁ~」と目を輝かせる。ミラレスたちの町ほどは大きくないがそれでも、この人々の活気は僕らには刺激あるものだった。
まず、昨日教えてもらった、地図のお店と食料品のお店を回り、買ったものをいったん宿において、馬車が集まっているところに行く。
「すみません、南まで行きたいのですが、近いうち出る馬車はありますか」といろんな御者さんに聞いても、首を振るばかりであった。
曰く、ここ最近の大雨で川が氾濫し、通れなくなってしまった街道が多々あるらしく、数日はこの町から南に行く馬車は出ないらしい。わざわざ通りにくくなった道をリスクを負ってまで運んでくれる人なんていない、と言うことだ。
僕は肩を落とし、ニナそれを聞いて目を輝かせた。
「たくさん観光できるね!!」そう言って彼女は満面の笑みを浮かべていた。
とりあえず、この町でやることは早々に終わったので、ニナ姫のご要望通り観光をすることにした。
フラヌイの町は花が有名らしく、そこらへんにお花が売っていた。
あれなに~と言ってニナが果実のようなものを見ていたので、買ってあげる。
あれ、何かデジャヴだぞ、これ。ガローがニナに何でも買ってあげていた光景が思い出され、なんだかおかしくて笑ってしまった。
「ジークもほら食べなよ!」そう言って僕に差し出してくる。彼女の手からそれをパクッと食べる。味はメロンに近い何かだった。
そうやってニナとぶらり町散歩をしていると前からなんだか見知った顔の人たちが歩いてくる。
ニナが手を振ると、向こうもこちらに気が付いたのか、こちらに手を振ってくれる。
僕たちは彼らの方に駆けてゆき、挨拶をする。
「どうもショニーさん、ゴエさん、今日はお二人なのですね。というか、この町にいらっしゃったのですか。」と僕が聞くとゴエさんは少し気まずそうな顔をした。
「えーと、色々ね。それより、どうだいこの町は?」
ショニーさんが誤魔化すようにそう言ったので、僕は少し違和感を感じつつも、ニナがとても気に入っていた花屋さんの話や果実の話をする。
ショニーさんもゴエさんもは顔は笑っていたが、なんだか雰囲気が不自然でますます僕の中で不安が募る。
そこにたまたま通りがかった見知らぬ男の人が、ショニーさん達に話しかけた。
「おう、ショニーとゴエじゃねえか。お前ら、昨日の雨の中無理やり進もうとして、川で馬車流して、御者にも護衛にも逃げられたらしいな!!
がっはっはっ。まあ命あっただけよかったと思えや。それよりもお前らあんなルート使うなんてあほだな。フラヌイを経由しないルートを使えば、流されずに済んだのによ。
まあ、金貸してほしかったらいつでも言ってくれや。高利で貸してやるよ。」
そう言って、上機嫌でがっはっはと去ってゆく。
僕は驚いて、彼らの顔を見る。
彼らはすごく気まずい顔をしていた。
「い、いや、君たちのせいじゃないんだ。もともと私が納期ギリギリにもかかわらず、のんびりしていてね。それに急がば回れでフラヌイの町から引き返してほかのルートを通ればよかったものの、ちょっと焦っていて、近道をしようとしてしまってね、とほほ」
そう早口でショニーさんは言った。
ゴエさんもちょっと気まずい顔をしつつも「お前たちは心配しなくてもいい」と言って頭をかく。
「そ、それよりも君たち、お腹すいていないかい!?」とショニーが僕らに聞いてきたが、今はおめーもほぼ一文無しじゃねえか、とゴエさんに怒られていた。
結局、彼らの泊まっている安宿の名前を聞いて僕たちは別れた。
きっと彼らは僕たちのせいであんなことになってしまったのだと思う。罪悪感がチクリと心を刺すニナもさすがにそれはわかったのだろう、二人でしょんぼりしながらそのまま宿に戻った。
僕は少し考えて、ニナにお願いをしようと口を開く。
「「ねえ」」
「あ、ニナからどうぞ。」
「あ、あのね、ショニーたちが馬車を流してしまったのは私たちのせいだと思うの。だから私考えたんだけど、私たちのお金で彼らの馬車を買いなおしてあげるのはどうかな」
そうニナが提案する。
僕もそれは考えていた。確かにそれも手の一つだけど、僕らにはきっと馬車を買えるほどのお金がない。それにあの人たちがそれを了承してくれるとは思えなかった。
もう一つ僕には手立てがあった。僕は自分の考えていることを彼女に言うと、少し驚いた後「うん、けどジークならできるかもしれないね」と言って笑った。
その日午後はニナには宿でお留守番をしてもらって僕は町を一人で出ることにした。
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