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37 フラヌイの町


彼女は両手を挙げながらゆっくりとこちらに来る。


目の前まで来ると小声で「大丈夫だよ、何もしやしないよ」と肩を竦めて僕の隣に座った。



「すまないね、私たちのせいで、少ししか寝れなかっただろう」



「そんなことないです、もう慣れました」



僕は首を振る。



彼女はそうか、と言って少し悲しそうな顔をした。


きっと悪意はなさそうだと思い、魔法を発動できるようにしていた手の力を抜く。

ほっと、胸を撫でおろした。


護衛の強そうな女の人、ゴエさんは商人のほうをちらと見る。


「あいつは悪い奴じゃないからさ、むしろ情にほだされやすいというか、本当に商人に向いてないよ」そう言って笑った。


きっとこの二人はかなり長い付き合いなのかもしれない。やり取りの節々にお互いの信頼が垣間見れた。



「このかまくら、お前が作ったんだろ?」と彼女が僕に尋ねる。


やばい、ばれてる。僕がどう誤魔化そうか考えていると、


「いやいいよ。お前、体から魔力が漏れているからわかるぜ。かなり魔力が多いね。私も魔法使いの端くれとしてさ、魔力くらいは感じられるからね。」と言って右手に小さな火をともす。


彼女の顔がぽっと映し出される。暗くて今までよく見えなかったが、釣り目で若干怖そうな印象があるが、凛々しい顔立ちに、優しい眼をしていた。


「けど、お前ほどの魔力をもつ子供となると、貴族の子供かい?親御さんが……、いや聞くのはよそう。きっと辛いことを思い出させてしまうね。」


そう言って彼女は申し訳ない、と僕に謝る。僕は首を振った。


そのあとは特に会話を交わすことはなかったが、彼女は僕の隣に座って日が出るまでずっと起きていた。それはまるで、僕を孤独にしないように慮ってくれているようだった。


次の日、周りは明るくなっても、雨は止まなかった。


「どこまで君たちはいくのかい」


商人のショニーが僕たちに尋ねる。


僕がフラヌイの町まで行こうとしていたが、雨のせいで足止めを食らっていたことを説明すると彼はまるでオーバーリアクションのようにして


「それはそれは大変だ。私たちもフラヌイは途中で通るから私たちと一緒に来るといい」


そう言って僕らの同行を許してくれた。ゴエさんはそれを少し呆れた顔で見ていた。


僕らは荷物をまとめてショニーたちについてゆく。雨は降り止まず、冷たい雨に打たれながら、彼らについてゆく。



彼らは馬車だった。少し離れた木陰に馬を繋いでいたらしく、二台の馬車で移動しているようだった。どうやら雇われの人のうち二人は御者だったらしい。


僕たちは一台目の馬車に乗って移動する。二台目の馬車には、もう一人の雇われの人が怖そうな人が護衛として乗り込んでいた。馬車には屋根がなかったが、カッパのような水を弾く布のようなものをもらってそれを被っていた。


「むしろ子供たちだけで、徒歩で移動なんて聞いたことがないよ。でもそうだね、仕方ないよね……。本当に大変だったね……。う、うぅ」


「ほらショニー、子供たちが引いているだろ、全くもう」と護衛のゴエがため息をつく。


少し行ったところに街道があったらしく馬車はその街道に沿って進んでゆく。


「フラヌイの町にその君たちを引き取ってくれる人がいるのかい?」


僕は首を振り南の海を越えてそのあと南西に進むというと二人は身を乗り出して驚く。


「それをお前、子供とワンころで、歩いていく気だったのかい」


僕が頷くと、ゴエは呆れた顔をして、ショニーは少し考えた顔をした。


「そうだ!君たち!「おい」」


ショニーが何か言おうとしているのをゴエが制する。


「てめーの商売のこともきちんと考えろ」とゴエが一喝すると、ショニーはしゅんとしてしまって黙ってしまう。


その後、車内が何だか気まずい空気のまま、無事昼頃にフラヌイの町に着いた。


その町はミラレスの住んでいる町よりは小さいものだったが、レンガからなる町並みは見覚えのあるもので、真っ黒い煙突が生えているのも同じだった。きっと、気候はそれほど変わっていないから、生活様式も同じなのかもしれない。


「本当にありがとうございました。」そう言って僕とニナは頭を下げる。


「う‘ん‘、本当に気をつけてね‘ぇ」とショニーが泣きながら別れを告げる。


ゴエと彼らの部下たちも僕らに手を振って去っていった。


結局彼らは手ごろな宿まで教えてくれて、その宿の前まで送ってくれた。この世界の物価が分からなかった僕たちに、物価や貨幣、この町にある建物などについても教えてくれた。


僕とニナは、宿で一息つく。ここの宿は、今の時期はあまり泊っている人はおらず、ほぼ貸し切り状態だった。


今の僕らの所持金はミラレスが言っていた通り、結構あるらしく、宿屋は選ばなければお金は足りそうで一安心する。


とりあえず、その日は休んで次の日から情報を町で集めることにした。


明日、町を観光できると思って、ニナはルンルンと鼻歌を歌っていた。宿の一階が食堂になっているそうで、そこで晩御飯を食べた後今後の方針を相談することにする。


ショニーが感情豊かに宿の主人に僕らの状況について説明してくれたらしく、主人が気を使ってとてもおいしいご飯がたくさん出てきて、ニナは本当に喜んでいた。


「これも美味しいわ!それも美味しい!ん~、もう最高ね!」とほっぺたが膨らむほどに頬張りながら食べるので主人も思わずニコニコしていた。



僕らは部屋に戻り明日の予定、そして今後の方針の作戦会議を開いた。


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