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31 運命の悪戯

今ミラレスは「ニホン国」と言わなかったか。


「すみません、もう一度今なんて言ったか教えてくれますか」と彼女に聞くと、彼女は不思議そうな顔をして、もう一度繰り返す。


「えっと、ここニホン国の皆さんは優しいと言ったのですが……。」


すると彼女は、

「そういえばジーク君はここでガローさんに拾われたのですものね。すみません、気が至らなくて。不快にさせてしまいましたね。本当に申し訳ないです……。」と悲しい顔をした。


「い、いえ、別にそういう事ではなくてただよく聞き取れなかっただけなので気にしないでください。」


島国とも言っていたし、もしかしたらと思って、ミラレスになにか地図のようなものはないか尋ねる。


「地図ですか?すみません、私は持っていなくて。


もしかしたら、町に行けば手に入るかもしれません。一週間くらいお待ちいただくことになると思いますけど……」と困った顔で言った。


僕は慌てて「違うんです」と言って話を続けた。


「じゃあ、もしよかったら地面にこの国の地図書いてもらえますか?」


僕が頼むと彼女は「いいですよ」と言って木の棒を拾い、地図を描き始めた。


正確ではないですけれど、と言って彼女が描いた地図は、おそらく日本地図だった。


「今はどこですか?」と聞くと、だいたいここですね、と彼女は木の棒で指し示す。


木の棒は前世の記憶だと、北海道の真ん中のあたりを指していた。


では先ほどから言っていた南の海というのは津軽海峡のことで、西の大陸というのはユーラシア大陸のことか、と思い至る。


「どうしましたか、難しい顔をしていますけれど」


待てよ。ということは、僕はここが異世界だと思っていたが、そうではないのかもしれない。けれど僕のいた日本とはやはり全然違う。もしかしたら、パラレルワールド、もしくは過去か未来なのかもしれない。


「お~い、ジークく~ん」


僕がいたころの文明の痕跡は今のところ見当たらない。どの道、旅をしながら、情報と手掛かりを集めるしかなさそう。


「??????」


それにしたってここが日本だって分かったところでやることは変わらないし、精々地理感覚が少しある程度だ。まあ、あんまり意味のないことなのかもしれない。



「ジーク君!!」



ミラレスに呼ばれて僕は現実に戻ってくる。あまりに突然の情報開示に色々なことが頭を駆け巡ってしまった。


僕が、すみません、少し考えていました、と言うと、もうっ、と彼女はふくれて、クスッと笑う。


「不安ですか? もしよろしければ、私も一緒に行きましょうか?」


僕は横に首をゆっくりと振る。


「ありがとうございます。でも、大丈夫です。これからやることは僕がやるべきことで、ミラにはミラのやることが別にあると思うんです。

それでもミラには色々お世話になりました。本当にありがとうございます。」


すると彼女は僕の方を見て微笑んだ。


「少し見ない間にすごくいい目をするようになりましたね、ジーク君は。


そうですね、もしよかったら、あなたのやるべきことに区切りがついた後、またあの町へいらしてください。


大きくなったジーク君とお酒が飲めること、楽しみにしていますね。」と唇の前に人差し指を持ってくるようにして笑った。


その笑顔は、今まで見たことないような、まるで魔女のような妖艶な笑みで、僕はドキッとしてしまう。


その時、彼女が魔女であることを、僕は改めて思い知った。









次の日、ミラレスは町に帰っていった。彼女の町の方向は北の方で、僕らが今から向かう南とは逆なのだ。


僕たちは大きく手を振りながら、ミラレスを見送る。彼女が見えなくなるまで僕らは手を振っていた。




そして、ついに、ニナと二人きりになった。


あ、ごめん、そうだよな、お前もいるよな、ポロ。


そう言ってわふわふ言ってくるポロを撫でる。


この世界の僕のファーストコンタクト、第一村人は君だ。

大ちゅきですよ~ぽろ~とポロとじゃれていると「何やってるの」とニナが冷たい目線を浴びせてくる。


う、なんか、二人になった瞬間、気まずくなる、この現象は何というのだろう。


それはニナも同じようで、「さっさと、出発の準備をしましょ」と言って自分のテントに戻っていってしまった。





僕らも明日出発する。





ガローと過ごしたここは、とても名残惜しいが、ここにいてもガローは返ってくるわけではないし、僕らには彼から託された、為すべきことがある。

いつまでも思い出に浸ってのんびりしようとは思えなかった。


ニナも少しずつ元気を取り戻して、旅も前向きそうだった。


出発前夜、旅の行程確認のためにミラレスに書いてもらった手作りの地図をみんなで囲んで見る。


「いいかい、まずこの大森林の南側を抜ける。


この南側は僕たちの通ったことのないところだ。と言っても、ミラ曰く、南側が一番安全でそこまで危険な猛獣はいないとのことだったけれど、十分注意していこう。」

ニナが頷く。


「森の中の陣形としては僕が先頭、ニナが次、最後尾がポロだ」


ポロがワンと吠える。後ろは任せたぞ。


「森を抜けたら、ずっと南に進む。野宿の日が多くなると思うけど、なるべく町に泊まれるようにしようと思っている。ミラに聞いたところ、ここから南に言って初めにある町はフラヌイという町らしい。ミラの住む町よりは少し小さいらしいけど、初めはそこに滞在して情報を集めようと思う。」


ニナが手を挙げる。はい、ニナさん。


「そのフラヌイっていう町まではどれくらいかかるの?」


「僕もミラからの伝聞情報だけど、ここからミラが住む町までと同じくらいらしい。だけど、僕らだけだから、一週間くらいかかると思っててくれるといいかな」


ニナは、はーいと言って手を下げる。


「ほかに質問はない?じゃあ、総員、明日に備えて早く寝ること!」


一人と一匹はおのおのに返事をして、一緒に彼女らのテントに戻っていった。


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