28 sideB もう一つの物語の始まり
じじいが死んだ。
俺の目の前で、じじいは死んでいった。
俺は、自分を救ってくれたじじいを守れなかった。
俺は何もできなかった。強くなんてなかった。
自分を育ててくれたじじい一人守れなかった。
俺は自分の無力が悔しくて悔しくてたまらなかった。
この先どうすればいいかわからなくて、まるで真っ暗な迷路に迷い込んでしまったようだ。
俺が座り込んで、うなだれていると、そんな俺の横にミクがちょこんと座る。ミクは少し躊躇った仕草を見せる。
俺が反応する気力もなく、地面を見つめていると、ミクは何か覚悟を決めたかのような声色で俺に言う。
「……シュルク、ごめんなさい、ミクがシュルクに伝えたのが全部の原因。本当にごめんなさい。」
そう言ってミクはぽろぽろと泣き始める。
俺は思わず驚いて、ミクの顔を見る。
ミクは何度も俺に謝る。その目はいつか見た、俺もよく知っている目だった。これは絶望の目だ。
俺は胸が締め付けられる。
本当に何をやっているんだ、俺は。
俺が守るべきやつをこんな全く関係ない罪悪感で泣かせて、こんな顔させて、本当に情けない。
じじいならこんな情けない真似しねえのだろ。
なのに、なんだこの様は。死んだじじいに顔向けできねえよ。
ダメだろ、じじいが苦労して育ててくれた結果がこれなんて、俺が許せねえ。
こんなんでいいはずがねえんだ。
あの能天気で、あの最強を名乗れるほど強くて、優しかったじじいは誰よりも人の幸せを願っていた。
そんなじじいに生き方を教えてもらった俺だからこそ、決して下を向いてはいけないんだ。
思い出せ。
じじいは最後に、俺に希望を託したんだ。それはきっと……。
俺は立ち上がって、ミクの方を向き、ミクの頭に手をやる。
「大丈夫だ、ミク。めそめそすんじゃねえ。1ミリたりともミクのせいなんかじゃない。だから、泣き止め。」
俺はじじいの意志を引き継ぐ。それが俺のできる唯一の孝行だ。
それはきっと、かつてじじいが夢見たみんなが笑って幸せに暮らせる世界を作れるように、もう大切な人を目の前で失わないように、どんなものにも立ち向かえる勇気ある者に俺がなることだ。
以前じじいが耳に胼胝ができるほど言っていた言葉を思い出す。
俺のできることに限界なんてないことは俺が一番よく知っている。
俺はしゃがんで、ミクの頬の涙をぬぐってやる。ミクは不思議そうに俺の目を見る。
お前も、周りのやつも何から何まで、俺が全部まとめて守ってやる。
だから、
「お前は俺の横で笑ってろ!」
そう言って、俺は精一杯の笑顔をみせてやった。




