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26 sideB 守られる者と守る者

町を出て、森を探す。それはすぐに見つかった。どうやらミクの情報によると、あの森は結構危険らしい。


「ったく、この森はマジでバケモンがうようよしてやがるな。」


俺たちは1日ほどかかったが、特に何事もなく森を抜ける。


森を抜けた先には草原が広がっていた。

「すごい。不思議。」

ミクがその光景を見て驚いている。


「とりあえず、適当に走るぞ」


数時間ほどミクを抱えて走っていると、どうやら目の前に貧相な小屋が見えてきた。白い髪の女が白い犬と遊んでいる。


そして俺は見つけた。じじいがその家の近くで何やら作業しているのを。


口角が上がってしまうのが自分でもわかった。


俺はとりあえず挨拶がてらじじいに雷を落とす。



爆発音が周囲に響き、爆風が頬を撫でる。


音に女が驚いていたようだが、じじいはその落雷をいとも簡単にはじいて、周りを警戒する。


そして、俺をみて驚いた顔をする。


俺はにやりと笑う。


ミクを降ろすと、じじいと見合う。周囲の音が消えたようにしんと、静まり返る。


瞬間、俺は地面を蹴り、間髪入れず雷を打ち込みまくり、じじいの方に走っていく。そして、剣を抜き、切りかかった。剣の風圧で周囲の空気がゆがむ音がする。


じじいは持っていた鍬のようなものでその斬撃をはじいた。どうやら腕は衰えてないようだ。


俺はそのまま、剣に電撃を纏わせ、連撃を繰り出していく。じじいはただの鍬でそれをすべていなすが、体制を崩した。俺は、チャンスはここしかないと思って力いっぱいの雷撃剣をお見舞いする。


「魔道朱殷流 剣式 雷撃一閃」


あたりに雷鳴が響き、砂埃で周囲が見えなくなる。


雷を纏わせた一太刀。魔王国でもこれに耐えられるものはそうそういない。


まるで、ここを中心として爆発が起きたかのように、空気が同心円状に揺れていく。


舞い立った砂埃が風に流され、次第にじじいの姿が見えてくる。


「くっくっく」俺は笑いが止まらない。


じじいは、


じじいは俺の剣を、渾身の一撃を、まるで造作もないかのようにそこらの農具で止めやがった。


あのスキも誘い込まれたのかもしれない。


俺は周りを見回す。俺とじじいの足元は深くえぐれている。しかし、俺の後ろの草原が更地になっているのに対して、じじいの後ろの家や、雑草でさえ、何もなかったかのようにそのままであり、雑草は知らぬ顔でそよ風で靡いていた。


じじいはたかが農具で、俺の連撃をすべて、俺にも、ミクにも、背後にも影響がないような場所に意図的にいなしていたのだ。


やっぱりじじいは、在り得ねえほど強い。


俺は剣を収めて、じじいを見る。


「おい、くそじじい、久しぶりだな」


「シュルク、大きくなったのう」じじいが呑気に答える。


そこの女の子はどうしたのじゃ、とじじいが聞くので、奴隷商をぶちのめして拾ったことを話すと、俺の頭を撫で、「えらいのう」と言った。


もう身長も変わらないじじいに撫でられて、俺はなんだか顔が熱くなってムカついたのでその手を振り払う。


「今日はじじいを連れ戻しに来た、殺してでも連れ戻す」俺がそう言うと、じじいは困った顔で「それは無理じゃのう」と答えた。


俺は予想していなかった答えに戸惑う。


その白い髪の女のせいなのだろうか。じじいは続ける。


「実はの、あの後、魔王国に滅ぼされる国を救うために、何度か魔王軍と衝突してしまってのぅ。そのうち魔王直々に攻めてきたので、わしではどうにもできんかったが、割と魔王国側に損害を与えてしまって、魔王がかんかんなんじゃよ。」と頬をかいた。


たしかに、魔王の野郎はここ近年、個別にじじいを探しているようだった。それは俺と同じく、じじいがいなくなって困っていたからだと思ったがそうではなかったか。


クソ魔王はとにかく頭のねじが外れていて、壊すことしか考えてない。まあ、俺もじじいに会ってなかったらああなっていたのかもしれないから、一概にあいつがおかしいとは言えねえが。


それに加えて魔王の野郎は規格外に強い。噂じゃ、五大古書のうち一つを持っているらしい。とにかくあいつはやばい。そんな奴に狙われていて生き延びているじじいもじじいだが。


おれは少し考えてじじいに言った。

「じゃあ、俺たちもここに住もう。最近は治安維持隊もな、俺の天才的な頭脳によって無能どもを効果的に教育することで、俺がいなくても回るんだぜ。」


じじいは驚いた顔をして「うむ、どうかね、それもよいかもしれんのう。それにしても、シュルクはやはりすごいのう」と優しい目をする。


ミクはいつも無表情のくせに、今日はやけに俺をにやにやした目で見ている気がした。


そのミクに、見てるんじゃねぇとでも、言ってやろうと思ったときである。





空間が裂けた。





俺は嫌な予感がした。


「ポルト、探したぞ」空間から声がする。


じじいは警戒した様子で、シュルクその子を守って下がっておれ、と言う。


俺は頷いてミクをかかえて裂け目から距離をとる。

少し離れたところにいる白い髪の女の前には白い犬が守るように立っている。


「なんじゃ、魔王よ」じじいが裂け目に問いかける。


「わからないはずがないだろう。いまや我が国の最大の障害はお前だ。お前は個としても、何かを組織するとしても、どのみちわが魔王国にとっては脅威となる。


さて、この数秒空間を繋ぐだけでも、いかに我といえども疲れるのでな、早速で悪いが本題に入ってしまおう」



そして魔王はこともなさげに、こう告げた。


「我は悩んだ末、ポルト、貴様を殺すことにした。シュルクよ、我でも見つけられなかったポルトを容易く見つけるとは、やるではないか。帰ったら功績をやろう」


俺はかっとなって、「じじいを見たことはお前に伝えてなかったはずだっ」そう怒鳴ると、クソ野郎は大きく笑った。


「そんなことわかるに決まっておろう。貴様がポルト関係以外で名乗り出て仕事をするようには見えない。もしかしてと思って貴様に魔法を仕込んでおいて本当に良かった。」



くそがっ、こいつ俺に何かしてやがったな。俺は空間に殴りかかる。


「やめるのじゃ!」そう言ってじじいが俺を止めた。


「賢明な判断だ。」と魔王が笑う。


「じじいは絶対殺させねぇ。」裂け目にいるだろうクソ野郎を睨んで叫ぶ。


そのために、おれは強くなったんだ。


「そうか、残念だ。君は我が国の貴重な魔人の一人だったのにな。だが、致し方ない。二人もろとも死んでくれたまえ。


さらばだ。」


そういった瞬間、空間の裂け目が小さくなってゆき、そして小さく黒い球体に収束していく。


じじいはそれを見てとっさに球体の方に駆け寄っていく。


「皆、伏せるのじゃ。ポロ、ニナを頼む!」


そういうとじじいは黒い球体を両手で包み込むと、魔力を込める。


「待てくそじじい、やめろ!」俺はじじいのところに行こうと地面を蹴る。

次の瞬間、俺は爆風で吹き飛ばされて、気を失った。





目が覚めたとき、じじいは腕を失っていた。瀕死の状態だった。

俺は急いでじじいの方に駆け寄る。じじいは相変わらず呑気に笑っていやがった。


俺のせいだ。

俺のせいでじじいが死んじまう。

俺がここに来たせいで、俺が魔王の魔法に気が付けなかったせいで。


俺が弱くて、何もできなかったせいで。


じじい、お願いだ。まだ話したいことがたくさんあるんだ、育ててもらった恩返しだって出来てない。


じじい、頼むよ、死なないでくれよ……。


俺は人生で初めて神にすがる思いで、そう願った。



しかし、その願いは届かなかった。




そうしてじじいは死んだ。



俺は結局なにも守れなかったんだ。



なにも……。




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