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24 澄んだ空に花弁が舞う。

まず、距離が近かった女の子を見る。気絶しているようだが息はある。


その女の子は赤い髪をしていて、どくろの髪飾りをしていた。年齢は僕より少し幼そうで11歳と言ったところか。服装はよく言えば動きよさそうな、悪く言えば盗賊のような服装だった。本をもって、彼女に触れる。


『脳震盪』『骨折(肋骨)』


どうやらそれぞれの項目を見てもそんなに重症ではないようだ。このまま寝かせておいて、も大丈夫そうだと判断して、男の子の方に駆け寄る。

男の子は僕より少し年が上くらいのようで、オレンジ色の髪に黒いコートを着ていて魔法使いのような服装をしていた。同様に本をもって彼に触れる。


『脳震盪』『骨折(肋骨、右小指)』『先天性魔臓症』


最後の項目は聞いたこともなかったのでよくわからなかったが、ざっと読んだ感じ、緊急の治療を要するものはないようだ。


ミラレスの方に走ってゆく。


「あの二人は命にかかわることはなさそうです。」


するとミラレスは「そう、良かったです」とガローの処置をしながら言った。


ガローはというと、両手の肘からなくなってしまった部分を縄と布できつく縛られていた。


「ミラ、ガローは大丈夫なの?」と彼女に聞くと、彼女は難しい顔をした。


僕がガローを見ると、こほっと血を吐いた後に彼が口を開く。

「ミラ、ありがとうのう。けど、自分でもわかるわい。さて、ジーク、ニナ、おいで。」


僕らはガローが話したことに驚いて、急いで彼のところに駆け寄った。


「ジーク、あっちの男の子と女の子は無事だったかい。」


僕が頷くと、それは良かったわい、と彼は心底安心した顔をした。


「いやよ、ガロー、死んじゃうなんて嫌!」


「ありがとうのぅ、ニナ。しかし、そういわれてものう」と、いつものように彼は困ったように笑った。


そして僕を見て


「魔法じゃが、最後まで見られんくてすまんのう。家のわしのかごの中に、試練後に渡そうと思っていたものがある。受け取っておくれ。


そして、そこに寝ている男の子がもし起きたら彼を責めないでやってほしい。もとはと言えば、わしが悪かったからのう。」


そういうと、倒れている男の子の方を見た。


ちょうどその時、男の子が目を覚ましたらしく、赤い髪の女の子をきょろきょろと探し、無事そうだとわかると安心した顔をした。


続けてガローの方をみて、絶望したような表情に変わる。


ふらっと立ち上がると、転びそうになりながら、焦った様子で駆け寄ってくる。男の子がガローの傍らまで来ると、嘘だろ……、とつぶやく。


「シュルク、無事でよかったのう」そう男の子をみて、ガローが笑うと、


「いいわけないだろ!ミラさん、じじいは助かるのか!?」とミラレスの方を見る。彼女が首を振ると、彼は俯いてしまう。


三人を見てガローが口を開く。


「三人とも聞いてほしい。いいかい、大事なことだからよく聞くのじゃよ。」


「おぬしらはみな、素晴らしい力を持っている。わしとは比べ物にならんほどのぅ。


だから、こそじゃ。


その力を自分の欲望や絶望、快楽や憎悪のために、そして、力なき人々を蹂躙するために、使ってはならない。それは、とても難しいことかもしれん。


だからこそ、力あるおぬしたちにやってほしいのじゃ。


わしは自分なりに頑張ってみたのじゃが、力が及ばずできんかった。」

そう言ってガローは申し訳なさそうに笑う。


「どうか皆が戦わず、笑って暮らせる世界のためにおぬしたちが絶望、憎悪、そして理不尽と戦う勇気ある者、勇者となってくれ。おぬしたちならできる。」


そう言って彼は僕たちに微笑んだ。


わしも生きてるうちにはおぬしらが作るそういう世界が見たかったのだがのう、と呟く。

ニナは嫌だ、死なないでと泣きじゃくり、男の子は悔しそうに唇を噛んで、涙を流している。


絶対にガローを死なせたくない。僕は何か手立てはないか、そう思って本を開いても無情な診断結果と、この状況では実現しえない治療法が記載されているだけだった。



僕は無力だ。


何もできない。自分を救ってくれたガローを、人生で初めて僕を愛してくれたガローを目の前で為すすべもなく失ってしまうのか。


それでも、諦めずに何かないかと必死に項目を探す。


「ジーク、いいのじゃよ」


そうガローが呟いた。僕ははっとガローを見る。

彼は僕を見て、笑った。


「そんな顔せんでもよい。生きとし生けるものは必ず終わりを迎える。きっとわしは今なのじゃ。


最期に、大切な者たちに囲まれて、これ以上の幸せなどない。」



そして彼は澄んだ青空を見る。彼の瞳には青い空が映っていた。







「ありがとうのぅ」


いつもの聞きなれた穏やかな、優しいガローの声。













ガローはそのまま目を閉じて、









それっきり目を開けることはなかった。






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