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10 町の魔女

3日目の朝がやってきた。今日はいよいよ町に行くことができる。


ワクワクしながら出発支度をしているとニナも同じようで、白い髪を揺らしながら用意をしていた。


昨日のこともあり警戒しつつ森を進んでいったが、森も大半を抜けていたようで日が真上に昇る頃には、僕たちは森を抜けていた。


森の外は草原が広がり、心地よい風が草花を揺らしていた。


しばらく草原を歩いていると、街道のようなものが見えてきた。街道は何か乗り物のわだちだろうか二本の線がずっと先まで伸びていた。きっとこの先に町があるのだろう。


わーっとニナが轍に沿って駆けてゆく。


青空の下、ニナが駆けている姿はまるで神話の一幕を切り抜いたようで、とても絵になっていた。


そこから歩き続けて、日が暮れる少し前には町についた。


途中ニナがいろんなものに興味を持って止まるごとにガローがそれについての説明をするのでかなり時間がかかってしまった。


おかげで僕も無駄に草花虫の知識が付いた気がする。


町は思ったよりもずっと大きかった。町全体がレンガの壁のようなもので囲まれており、その外側に深い堀があり水が貯められていた。ガローが言うにはここら辺は森が近く魔獣も来るので、この規模の町にしては大きめの街壁となっているらしい。


ガローは町に来るのに慣れているようで、金属製の3mくらいある町の入り口の門に立っている門番のような人にお金を渡して僕たちは町に入っていった。


「今日はひとまずもう遅いし、泊まるところにいくかのう」


そう言ってガローは、屋台などに目を輝かせるニナを引っ張っていく。


町並みは僕らが住む藁と木の家と打って変わって、レンガの家が多い。どうやらガラスは普及していないのか、窓はなく、どこの家も屋根から煙突がにょきっと生えていた。


ここら辺は冬は寒くなるので、木造よりもレンガの方が防寒という点で優れているのかもしれない。なんだか道を歩くと僕たちはじろじろ見られるようだった。恰好があまりに貧相だったのだろうか。


しばらく歩いているとあたりも暗くなってきた。徐々に建物に囲まれた薄暗い小道に入ってゆく。


「っっっ!」


ニナはこういうところが新鮮でワクワクするようで興奮しているみたいだったが、僕はむしろ薄暗いのが不気味で少し怖かった。ガローはひょこひょことついてくる僕らを横目で見ながらどんどん歩んでゆく。


「着いたわい」


完全に日が落ちたころに目的の場所に着いたらしい。そこは裏路地のようなところにひっそりとあり、扉に小さく何か看板が下げられていた。


ガローはノックもせずにその扉を開ける。カランカランとドアベルのようなものがなった。


そこは店のようだった。入ると右手にカウンターがあり、店の中にはよくわからないものが陳列してある。


店のなかを見回していると、奥から声がした。


「すみません~、今日はもう閉店です~」


「そんなこと言わんでくれ」


ガローがその声にこたえると店奥からタッタッタと女の人が駆けてきた。


若い女性だ。20歳くらいだろうか。彼女は蒼い髪にカチューシャを付けて、黒いマントのようなものを羽織っていた。手に魔法の杖のようなものを持っていた。


まるで魔女のようだ。


「あ~あ~、どうも、こんにちは。あれ?こんばんはですかね?そんなことはまあ置いといて、半年ぶりですね、ウルフ・ポルトさん」


魔女のような女性は笑顔で挨拶をする。相当美人である。そして胸が大きい。この世界の人々はなぜこんなに美人ばかりなのか。


一瞬誰に挨拶しているのかわからなかったが、「もうただのポルトじゃと言っておろう。ミラレス、久しぶりじゃの」横のガローが答えたので、そうかと僕は合点がいった。


ガローはこの世界の言葉でおじいちゃんという意味の言葉であった。本名はそんな名前なのだったのか、ちょっとかっこいい


真っ白い髪を左右に揺らしながら、ニナは店内を興味深そうに見て回っている。


店主らしき彼女はニナをみて微笑む。


「可愛いお姫さまも大きくなりましたね、本当に。」


彼女はニナを知っているらしい。


彼女は次に僕をみて言う。


「ところでこのお坊ちゃんはどうしたのですか」


大森林の中で拾ったのじゃ、と答えると、彼女は不思議そうな顔をした。しばらくして考えることをやめたのか、僕の方を見てこちらに寄ってきた。


「初めまして、ミラレスです。ミラでいいですよ」と僕の目の前に手のひらを上にして、手を出してきた。


「初めまして、ジークです」


僕は戸惑いながらそう答えたものの彼女の出す手の意味が分からなかった。


彼女は戸惑う僕の様子をしばらく見ていたものの、何かに気が付いた様子でガローに対し


「ポルトさん、さてはこの子に挨拶すら教えていないのですか!」


とぷんぷんしていた。


「すまぬ、なかなか人と会わぬので教えることを失念しておったわい」


ガローは頬をかく。もうっ、とミラレスなる女性はふくれながらもう一度僕の方を見る。


「ジーク君、初対面の挨拶について教えてあげます。よく聞いてくださいね。まず挨拶をする側は、こうやって左手を前に出して、手のひらを上に向けて差し出します。挨拶を返す人は同じく左手をその人の手の上に乗せるのですよ」


なんだか、Shall we dance? と誘って、それに応える、みたいな感じか。


僕はミラレスに従って、彼女の差しだした手のひらの上に左手を乗せる。


「やっぱり」


小さな声でミラレスが何か呟いた気がしたが、すぐに、よくできましたね、と微笑んで、三人を奥に案内してくれた。


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