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16本目

「何、これ」

 佐須刑事が差し出した1枚の写真、それは、面妖というほかに言葉が見つからない代物だった。

 ひとりの女性が写っている。彼女はレオタードを着ており、そのレオタードはすごいハイネックで口元まで覆っていた。

「……もしかして、水戸さん?」

 私は言った。目元しかわからなかったが、そう見えたのだ。


「やはり、そう見えるよな」と刑事。「その写真は監視カメラが捉えた画像で、写っているのが『ブラックオニキス』のメンバーだ」

「ブラックオニキス……?」

「裏社会で暗躍する窃盗団の名だ。レオタードを着て、パラグライダーに乗って空を翔け、高価な絵画や美術品ばかりを狙う」

「キャッツ●イじゃないか」多々木所長が言った。

 ちょっと何を言っているか、わからない。たぶん所長の好きな昭和のネタだろう。


「つまり、水戸さんがその窃盗団のメンバーてこと?」

「証拠を(つか)みたかったが、彼女の部屋からは何も見つからなかった」刑事はとても残念そうだった。「露見することを恐れた他のメンバーが証拠、たとえばレオタードなどを処分したのかもしれない。彼女の遺体発見が遅く、しかも匿名による通報だったこともめちゃくちゃ気になっている。オレは、ブラックオニキス内部のもめごとが原因で彼女が殺されたんじゃないかと踏んでいる」


「水戸さんは、その、どんな殺されかたをしたの?」

「すまんが企業秘密だ。ふつうじゃない、とだけ言っておくよ」

「ケチ」言って所長は視線を逸らした。

 だが、ふつうじゃないというのは大ヒントだった。たぶん爆死だろう。であれば犯人は星影ということになる。それくらい私にもわかった。


「最後に水戸と連絡を取ったのは、いつだ」

「水曜の朝。水戸さんは調査対象である星影の写真すら持っていなかったから、ボクは、それを撮って彼女に確認してもらうところからスタートしなくちゃならなかった。で、彼女に星影の画像をメールで送って、そのあとオーケーの返事をもらった。それが最後」

「ふむ……、水戸と星影はどんな関係だったのかな」

「わからない」所長はきっぱりと言った。「彼女が窃盗団のメンバーだったとしたら、その絡みかもしれないし。(星影が)ただのストーカーという線もあるし」


「星影の調査で何がわかった」

「企業秘密、ときみの言葉をそっくり返したいところだが、ボクもやつには借りがあるんでね。全面的に捜査に協力するよ」

 そして所長は調査で得た情報を惜しげもなく佐須刑事に伝えた。ゆうても星影の住所、勤め先、顔写真くらいだったが……。

 爆弾ネックレスのことは、もちろん伏せた。所長はこれを切り札にしたいようだ。


「よし、じゃあさっそく、その宝塚スターみたいな名前の男に会いに行くか。タッキン、あんたが案内しろよ?」

「へいへい」言って所長は腰を上げた。「……若林くん、ボクはこれから刑事さんのお(とも)をしなくちゃならないから、あとはよろしく(・・・・)

「は、はい」


 ふたりの中年男性を見送ったあと、私は速攻でめんそーれ吉田さんに電話した。この世でもっとも頼りになる女性占い師に。


「もしもし、吉田さん?」

「芽衣か。どうした」

「たいへんなことになりました。水戸かず子さんが殺されたと、佐須刑事が」

「……そうか、残念じゃが想定の範囲内とも言えるの。爆死か」

「おそらく、としか言えませんが、ふつうの死に方じゃないと刑事さんは言っていました」

「十中八九、爆死じゃな。……芽衣、ワシが探偵に聞きたかったのはな、水戸という依頼人が星影と接触したか否かということじゃ」

「それについては、わからないと所長が」

「ふむ。結果は見てのとおり、水戸は星影と接触し、そのときに死のネックレスをかけられたんじゃ」

「じゃあ、前の世界線の所長みたいに、それを外そうとして水戸さんは……」

「そうかもしれんし、あるいは爆弾自体に時限(リミット)があったのかもしれん。数日後か1週間後かわからんが、いずれ爆発する仕組みだったと」

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