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第三話:五分ぶり三度目

「ごめんなさい! つい早とちりを……」

「早とちりで人生終わらせられたらたまったもんじゃないよ……」

「ねえディズくん。本当にフリアラちゃんのクラスってメイジなの? グラップラーじゃなくて?」

「ルカさんはちょっと黙ってて下さい!」


 まったく、今日は付いてない日だ。

 一日で二度も電気ショックを受けた人はこの世に存在するのだろうか。


「いやぁ、面白かったぞ。流石は酒場のアイドル、場の盛り上げ方を分かってるな」

「場を盛り上げる為に僕は命を落としかけたんですけど……」


 こんな事で命を落とすなんて冗談じゃない。


「まあ今日で良かったじゃないか」

「良くない!」

「ディズ。よく考えてみろ。今日は客が俺達しか居なかったからルカも思い切った事をできたんだぞ? もし客が大勢いる時にやったらどうなると思う?」


 神妙な面持ちを浮かべるスカイさん。

 客が大勢いる中で……さっきと同じ事を?

 うっ、考えたくもない。


「そういう事だ。今日で良かったって考えておいた方がいいぞ」

「そうだよ。私だって勇気を振り絞って言ったんだからね」


 だからって別に言わなくても良かったと思う。


(それに……。冗談じゃないのになぁ……)


 今小声でルカさんが何かを喋った様に聞こえたけど聞き逃してしまった。


「何か言いましたか?」

「何にも言ってないよ! 今度はお客さん達の前で言ってやろうかしら!」

「お願いします! それだけは勘弁して下さい!」

「冗談よ冗談。とりあえずゆっくりしていってね!」


 焦る僕の姿を見てクスクスと笑いながらパタパタと駆けて行くルカさん。


「さてと。それでディズ、大事な話って何だ?」


 今までとは一変して真剣な表情を見せるスカイさん。


「え? ああえっと──」

「ルカさんがディズさんを親に紹介したというのは本当ですか?」

「そこ!? ていうかその話ルカさんから聞かなかったの!?」


 フリアラってこんな空気読めない子だったっけ?ルカさんのご両親がこの酒場に来た時にたまたま僕が接客しただけの話なんだけど。

 それをフリアラに伝えると安堵の表情を浮かべていた。

 まったく、急に変な事を聞いてきたせいで変な汗をかいてしまった。

 一旦落ち着くために僕は手元の飲み物を口に含み──


「なぁ、ちなみに俺のディズがフリアラに告白するっていう推理は合ってるか?」


 ブーーーーッ!


 スカイさんの一言に僕は口に含んだ飲み物を思わず吹き出してしまった。


「な、何を言っているんですかスカイさん! そんなわけないじゃないですか! 全然違います!」

「そそそ、そうですよ! 大体さっきの流れから告白って……。いくらバカでマヌケでドジで鈍感で甲斐性なしなディズさんでもそんな事はしませんよ!」


 今フリアラに一度の言葉で何回か罵倒された気がする。

二人して全力で否定するがスカイさんはこちらの反応を見て楽しんでいるようだった。


「そ、それでディズさん。話っていうのは何ですか?」

「そ、そうだった! 話っていうのは──」


 あれ? 僕がフリアラに伝えないといけない話ってなんだっけ?

 ヤバい。ド忘れした。何だっけ──


「ディズさん? どうしたんですか?」


 思い出せ僕! 言葉を絞り出せ──


「えっと、ヘクナさんが封印で世界が大変だからロボットが物忘れ大会に出て桶屋が儲かると──」

「「は?」」


 まずい。二人の頭にクエスチョンマークが見えてる。


「──ごめんフリアラ。気絶している間にヘクナさんに呼び出されたんだけど、何を伝えるのか忘れちゃった」

「スカイさん。心臓はもう動いてますが脳がまだ見たいです。頭に電流を流しましょうか」

「ほい来た」

「待って待って! 謝るから! 謝るからその脳に影響を及ぼしそうな行動はやめていただいてぎゃああああああ!(バリバリバリー)」


 本日三度目の電流が流れた。




「──なるほどな。つまりそのロスヘルってやつの封印が解けたせいで悪魔が活発になるから、ディズ坊はヘクナ直々に討伐の旅に出ろと言われたと」

「ひゃ、ひゃい……しょうでしゅ──」


 頭に電流を流された僕はヘクナさんと話した内容を何とか思い出した。

 その代償として髪はチリチリになり口からはまだ煙が出ている。


「そして旅に出る為にまずは──」

「雨濡れの双葉と鳥籠のコウモリを手に入れろ……ですか……」


 二人ともすごく悩んでいる。

 恐らく何かの暗号みたいな物なんだろうけど。

 ヘクナさんもケチだよなぁ。ヒントとかじゃなくて答えを教えてくれたっていいのに。


「まぁとりあえずは分かった。ロスヘルとやらに関してはヘクナが言うのなら間違い無いだろうから、まずはギルド本部に伝えておこう」


 実はスカイさんはこの冒険者ギルドプレーヴォ支部の局長だ。僕達も話しててつい忘れそうになるんだけどね。歳は僕達の二つ上、側から見たら考えられないだろうけど、スカイさんはギルドの中でも指折りのお偉いさんらしい。


「でもって何とか双葉って奴には残念ながら心当たりはない」


 ──まぁそんなに都合良くは行かないよね。


「そうですよね。まぁ何とか僕達で探して──」

「だがコウモリの方に関しては心当たりがある」


 天才! スカイさん天才!


「これを見てくれ」


 スカイさんが取り出したのは王国全土が写っている地図。

 無知な僕達が世界中の国を知る為に良く見せてもらった地図だ。


「このパラディスク王国はそれぞれの土地を治める貴族が居てだな。お前らの故郷付近は除くけど、例えばこの土地一帯はフェンドンマンド卿、ここはシェリングブルム卿といった風に分担されているんだが──」


 ふぇ、フェルナンデス卿? シェービングクリーム卿?

 貴族の姓ってなんでこんなにややこしいのが多いんだろう。


「プレーヴォの一帯は代々ザギレバ家が継承してきた土地でな。そのザギレバ家に伝わる紋章が確かコウモリだった筈だ」

「つまりそのザギレバ家の人に近づく事ができれば──」

「ああ。もしかしたら鳥籠のコウモリが手に入るかもしれないな。憶測でしかないけどな」


 スカイさんの名推理で突然希望の光が差してきた。


「それにお前らがこの街を離れて旅に出るのは俺も賛成だ。常識は十分に叩き込んでやったからな。

旅に出る事でしか得られない物もあるさ」


 故郷の村からこの街に出てきて今日で丁度十日。

 外との関係をほとんど絶っていた僕たちの村では常識な事でも、村の外では非常識だと言う事をスカイさんには口を酸っぱくして言われていた。

 この街に着いてからは冒険者としての基本的な知識や常識を全て彼に教えてもらった。


「でも、この村を離れてスカイさんと会えなくなると考えると少し寂しいですね」

「そうか? だがいずれお前達はパーティーを組む冒険者や同じフレールに所属する冒険者と一緒に活動する様になるんだ。そんな寂しさはすぐに消えるさ」


 フレールとは僕達冒険者が仲間を募って作る集団だ。聞いた話によると百人が所属する大きなフレールもあるのだとか。


「フレールで思い出したが、今日はフレール対抗戦の抽選日だったな」

「フレール対抗戦?」

「フレール対抗戦はその名の通り、フレール同士で戦うトーナメント形式の大会だ。年に五回開催されるが、冒険者だけでなく世界中の人に人気がある大会だ。見てみろ」


 そう言ってスカイさんが取り出したのは見た事のない四角の形をした魔道具だった。


〜本日のトピック〜


パーティーとフレール編


パーティーは冒険者達がクエストをクリアするために組む集まりであり、基本的には報酬面等を考え五人までで組まれる事が多い

フレールとは冒険者の集団であり、同一のフレールに最大百人の冒険者が所属する事ができる

ただし個人が二つ以上のフレールに所属する事は許されておらず、掟を破った場合は厳罰に処される

余談だがフレール対抗戦で優勝しすぎてギルドランキングにて殿堂入りとなったフレールが存在するらしい

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