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第二話:電流走る──!

『──か──じょ──』


 誰の声だろう。

 僕に何かを語りかけている気がする。


『だ──じょぶ──か。きこ──すか』


 これは──どこかで聞いた事がある声だ。

 いや、聞いた事があるというより、聞き慣れている声。

 微かにぼやけて見えるものがある。

 そうか。僕の視界が段々と光を取り戻して──


「スカイさん! もう一発電撃石をぶち込みましょう!」

「よし来た。最大出力だ(バリバリバリバリ!)」


 アババババババババババ!

 かかか、体に電流がが痺しびしびびびび──


『あれ? 今もしかして起きてませんでした?』

『さぁ? 気のせいだろ』


 こうして僕は本日二回目の気絶を味わった。



            ☆



 いい朝だ……。

 窓から橙の日が差し込み、カラスの心地よい鳴き声が──


「その件はもう飽きた。しかも今は夕方だぞ」


 僕の身の周りには心を読める人で溢れているのだろうか。


「気分はどうだ?」


 僕の顔を覗き込んでいるのは一人の男性。

 名前はスカイ。僕とフリアラが村を旅立ってからこの街にいる間ずっとお世話になっている人だ。

 ゆっくりと上半身を起こすとスカイさんが心配そうに声をかけてくれる。

 

「ええ、まぁ──良くはないです」

「そうか──」

「スカイさん。ディズさんは起きましたか?」


 ここで僕が気絶する事になった元凶のお出ましだ。


「視界良好、言葉もちゃんと話せる。やらかしたかと思って一瞬焦ったが、どうやら後遺症はないみたいだぞ」


 ──ん? やらかした? 後遺症……?


「あの、もしかしてですけどスカイさん。僕に電流か何か流しました?」

「ああ。しかも焦げた体が更に焦げるほどに飛びっきり強いやつをな」


 良かった。夢じゃなくて現実だったんだ。

 それなら安心して胸を撫で下ろ──したらダメだ。


「あの、僕の意識が戻った時に電流が流れた気が──」

「気のせいだろ。夢でも見てたんじゃないか?」


 清々しいほどに白々しい……


「そんな事よりディズ──」

「今そんな事って言いませんでした? ねえ」

「少しは落ち着いて話せないのか。フリアラがディズに言いたい事があるそうだ」


 フリアラが僕に? むしろこっちから言いたい事があるんだけど。

 スカイさんに話を振られるとフリアラはモジモジしながらこちらを見る。

 いや、モジモジしてても今は可愛らしく見えないからね? 僕、命落としかけてるからね?


「えっと、その。すみませんでした! 魔獣を倒す為とはいえ、ディズさんを巻き添えにして倒すのは流石にやりすぎました……。反省しています」


 いつも何があっても飄々としているフリアラがこんな態度で謝ってくるなんて珍しい。

 裏があるんじゃないかと思いしばらく様子を見るが、冗談でしたとかそういうオチは無さそうだ。


 フリアラに嫌味の一つや二つくらい言ってやろうかと思ったけど、こんな表情を見たら何も言えない。


「別にいいよ。僕は弱いからいつもフリアラ頼りだし、むしろ良い判断だったんじゃないかな?」

「でも……」

「そんな事より、フリアラに大事な話があるんだけど」

「大事な……話ですか?」


 きっとフリアラも僕が一言や二言は言ってくると思っていたのだろう。キョトンとした表情を浮かべている。


「なあ。その大事な話っていうのは俺は聞いてて良いのか?」

「え? あぁ、はい。ヘクナさんからの伝言を預かったんですけど、多分スカイさんにも知らせておいた方が良いかもしれません」

「そうか。じゃあ酒場に行かないか?」


 酒場かぁ。スカイさんになら聞かせても良い話だと思うけど、他の人に聞かれるのは良くないかもなぁ。


「酒場……ですか」

「大丈夫だ。多分、今日の夜はいつもより客は少ない……いや、ほとんど居ないだろうからな」

「どうしてですか?」

「まぁ行けば分かるさ。宿屋の部屋に篭って話すよりは気分も良くなるだろう? 付いて来い」


 僕とフリアラは顔を見合わせる。

 理由が分からず二人とも首を傾げるが、とりあえずスカイさんに付いて行く事にした。




「「「かんぱーい!」」」


 グラスを打ち付けると三人で一気に中の物を飲み干す。


「やっぱり一仕事した後の酒場は最高だな。二人とも、今日は俺の奢りだから遠慮せず飲み食いしていいぞ」

「「ありがとうございます!」」


 酒場に来ると独特の雰囲気があると言うか、楽しくてついつい飲み物や食べ物を頼み過ぎることってあるよね。

 ここはプレーヴォの冒険者ギルドに併設されている酒場。僕がバイトをしている酒場でもある。

 夜になるとこの街に滞在する多くの冒険者が集まるため毎晩賑わっている。はずなんだけど。


「本当に今日は少ないんですね」


 フリアラが酒場の中をキョロキョロと見回す。

 普段はこの広い酒場、多くの席が冒険者で埋まるので料理を提供する僕達は大忙しなんだけど、今日は僕達だけしかいない。


「どうして少ないんですか?」

「あれー? ディズくん冒険者なのにそんな事も知らないんだー?」


 この声は……!


「ファイヤーチキンの唐揚げ! お待ちどうさま!」


 白いフリフリが付いた従業員服に身を包んでいる女性が注文した品を運んできた。


「ルカさん、今日はいらっしゃったんですね」

「ディズさん、この方は?」

「ああ、フリアラは初めて会うんだったね。この人は酒場の先輩の──」

「酒場のアイドル、ルカちゃんだよー!」


 満面の笑みでフリアラに手を振り挨拶をするルカさん。

 ご覧の通り酒場のアイドルと名乗り、愛想を振り撒く天才だ。

 だが酒場のアイドルというのは自称ではなく、橙色のサイドテールに翠の瞳、そして格好と発する可愛らしい声も相まってライブが始まるとお客さんの目が一点に注目するほどの人気だ。


「へー。もしかしてディズさんが冒険に出なかったのは、この方にお会いしたいが為だったのでは……?」


 今フリアラの方を向いたら殺されそうな気がしてならない。


「そ、そんな訳ないじゃん……。それはほら……! 僕達が泊まっている宿代を稼ぐ為であって──」

「そんな……。酷い! 私とは遊びだったのね!」


 手で顔を覆いその場に膝を突くルカさん。


「ちょっと待ったー! その発言は誤解を招くから今すぐ取り消──」

「あの時──私の親に紹介したじゃない!」

「だあああああ! くっ!」


 あれ? 急に目の前が真っ暗になった。


『許サナイ、許サナイ……。一生ユルサナイ……」


 その一生が今終えそうなんだけど……。

 僕が最期に見たのは鬼の様な形相をしたフリアラの顔だった。


〜本日のトピック〜


魔石編


魔石とはモンスターを倒した際に入手できる他

鉱山などでも見かける事がある魔力が込められた石である


モンスターから落とされる黒い魔石はただ普通の魔力が

込められているだけだがこの世界の営みは魔法によって

成り立つため普段の生活に多く利用されている


入手した魔石はギルドで換金できるため

クエストの報告ついでに持ち込む冒険者が大半である

魔石は大きさが大きいほど魔力も多いので換金額が高い


スカイが使用していた電撃石を含むマナ魔石はさらに高価

中にはとてつもない値段がつくマナ魔石もあるとか


魔法を使用できない人にも流れている微弱な魔力でも

マナ魔石に込める事により

対象属性の中級魔法程度の効果を発揮する


余談だが電撃石は止まった心臓を動かしたり

忘れた記憶を思い出させる為の使用は推奨されていない

───────────────────────────

最後までお読みいただきありがとうございました。

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