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プロローグ

 ここは未開の地に存在しているとある洞窟。

 自身の足音と水の滴るかすかな音だけが響く冷え切った暗闇の中を少女が怯えながら進む。


 とても冒険をしている途中などといった風貌ではなく、ボロボロの布切れ1枚を身に纏っている状態であった。唯一頼りになるものは片手に握る松明。暖かな火は少女に前へと進む勇気を与えてくれる。


 壁を伝いながらどれくらい歩いたのだろう。体は冷え切り、残る力も僅かだった。

 視界がぼやけ、少女は地べたに倒れ込む。それでも這いつくばって前へと進む。涙を流しながら。全身を傷だらけにしながら。


 内部を進むうちに少女はある事に気がつく。周囲の空気が一瞬にして変わった。人間としての本能がここは危険だと訴えかけている。


 しかし少女は迷う事なく立ち上がり、松明を翳した。目の前に現れたのは、不気味な出立ちの石像。


 手入れなどは一切されていないのであろう。  

 石像は風化し、ボロボロの状態であった。

 しかしどことなく邪悪さを感じさせる。

 少女はその石像に対して跪くと松明を置き、手を合わせる。


「ロスヘル様……どうかお助け下さい。私の愛する家族を……村の皆を……お助け下さい……!」


 涙を流し、声を震わせ、祈りを捧げ続ける。


「私の命は貴方様に捧げます……なのでどうか……どうか……! 私の愛する家族を……皆の事を……!」


 少女が強く祈ると突如として松明の火が大きくなり、激しく燃え盛る。


「ロスヘル様──」


 少女が顔を上げると同時に、燃え盛る炎は彼女の全身を包み込む。


「あぁ……ロスヘル様……! ありがとう……ございます──」


 炎は少女を燃やし続ける。しかし少女は炎の中で幸せそうに微笑む。


 やがて少女は消えた。この世に何一つ残す事なく──




 天使と悪魔。

 世の正義と悪の象徴とされているこの二柱は、下界に生命が誕生する前から争いを続けていた。

 いつからか天使は悪魔を討伐する役目を下界の民に託し、その見返りとして天使の加護を与えた。

 

 天使の加護により街や村はモンスターからの襲撃に守られ、襲いかかる敵に対し勇敢に立ち向かう者には、特別な力が与えられる。


 この世界では天使の力を授けられ討伐の旅に出かける者を『冒険者』と呼ぶ。

 武勲を立てた冒険者はやがて『勇者』と称えられるようになり、魔王やドラゴンを倒した勇者は『英雄』として崇められる。

 

 そしてこの物語の主人公。

 英雄に憧れる少年ディズ・フェルランは先日念願の冒険者となり、英雄へ近づく第一歩を踏み出した今──


「いらっしゃいませー!」


 酒場でアルバイトをしていた。



             ☆



 いい朝だ……。

 窓から温かな日が差し込み、小鳥の心地よいハミングが聞こえてくる。

 こんなに気持ちのいい朝を迎えた日は──


「二度寝するに限るよね──」

「どうしてそうなるんですか!」


 まるでタイミングを見計らっていたかのように部屋の扉を勢いよく開けてズカズカと入ってくる少女。


 目の前に立ち仏頂面で腕を組んでいる彼女の名前はフリアラ・パレード。僕の幼馴染だ。


「おはようフリアラ……」

「呑気にあくびなんてしている場合じゃないでしょう! バカなんですか!?」


 眠い目を擦りあくびをしていたらフリアラに罵倒された。


「む、バカだなんて失礼な。僕は今日の夜のバイトの為にたっぷり寝ておかないと──」

「だからバカだって言っているんです! 私達は冒険者になってから何をしましたか!? バイトを続ける日々ではないですか!」


 だってバイトしないとお金が手に入らないし……


「ほら、さっさと準備をして下さい」

「へ? 準備って?」

「決まっているでしょう! クエストに行くんですよ!」




 フリアラに急かされ支度を済ませた僕は彼女と一緒に冒険者ギルドへと来ていた。

 冒険者ギルドとは万国共通の組織であり、主に冒険者達のサポートを行なっている。

 世界各地の人からの依頼をクエストとして掲示板に貼り出したり、冒険に必要なアイテムの提供、さらには倒したモンスターから取れる魔石や素材の買取までしてくれているとてもありがたい存在だ。


 とりあえずクエストが貼り出されている掲示板に目に通す。どれどれ……


『──回復教会臨時術士の募集── ※ビショップかパトリックの方に限る』


 プリーストの上位職じゃないとダメか。次は……


『──王都までの護衛── ※冒険者ランクが翡翠級以上の方にお願いします』


 僕とフリアラのランクは最低の原石級。翡翠級は二つ上のランクだから難しい。他には……


『──夕飯を作りに来て下さい。もう腹ペコで──』


 うん。どれも大変なクエストと変なクエストばっかりだ。


「ディズさん。これなら簡単そうですよ?」


 フリアラが指差す依頼用紙を見てみる。


『──実験に付き合って下さる方を探しています── ※ただし命の保証はありません』


「殺す気!? 僕を殺す気なの!?」

「でもサクッと終わって大金が手に入るんですよ?」

「サクッと終わるのは多分僕の命だよ!」

「いいじゃないですか。面白そうで」


 悪魔だ……。ここに悪魔がいる……!


「あら、今日は珍しいわね。どうしたの?」


 でっかいおっぱい。

 

 間違えた。たゆんたゆんな胸に背中まで届くウェーブのかかった長い赤髪。泣き黒子が特徴的なセクシーな女性が話しかけてきた。


「あ、こんにちはコロンさん」

「ええ。こんにちは」


 こちらの挨拶に満面の笑みで返してくれるコロンさん。その笑顔を見ているだけでなんだかこちらが恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。

 コロンさんは僕とフリアラが初めてこの街、プレーヴォに来た時に冒険者になる為の登録手続きを担当してくれたギルドの受付嬢だ。

 それ以来何かと気にかけてくれている。


「実は今、安い命を犠牲にして大金を手に入れようとしていたんですけど……」


「僕のこと安い命って言った!? ねえ!」


 こちらにチラリと目をやるフリアラ。

 この目は本気だ……! やられる……!

 戦慄している僕を他所にコロンさんは笑う。


「あらあらフリアラちゃん。ダメじゃない安い命なんて言ったら……」

「そうだよフリアラ。人間の命はとても尊い──」

「そういう事は本人が居ないところで言うものよ」


 違う、そうじゃない。


「もう! フリアラの悪ふざけに付き合ってないで聞いて下さいよコロンさん」

「私は割と本気ですが」

「ごめんなさいね。それで、どうしたのかしら?」

「実は……」


 自分達の実力でもこなせそうなクエストを探しているが見つからないとコロンさんに伝えると……


「それなら丁度おあつらえ向きのものがあるわよ。どう? 受けてみない?」


 との返事が返ってきたので僕達は快くそのクエストを引き受けた。


 

〜本日のトピック〜


冒険者編


冒険者とは天使から加護と指名を受けモンスター

を倒し世界中を巡っている者達の総称である


冒険者によって階級ランクがあり、職業クラスが分かれており、各々が違う天使から加護を受けている


世に蔓延るモンスターは天使の加護を受けなければ倒す事はできないので、冒険者ではない一般人にモンスターを倒す事はできない


余談だが冒険者になる為のギルドがある場所は国によって定められているらしい

───────────────────────────

最後までお読みいただきありがとうございました。

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