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花散らす剣

 私は鍛錬していたときによく体力の不足を指摘されていた。

 そのため実戦では短期決戦に持ち込む必要があると言われた。


 ナーシィさん相手だと、遅くても5分以内には決着をつけなければかなり不利になるらしい。


 自分なりの戦い方を試したかったけど、実戦経験が遥かに豊富なケイの言う事だから素直に聞いておくべきだろう。


 よって私が最初にとる行動は……!



 私は初手から全速力で間合いを詰めていった。

 まだナーシィさんに動きはない。

 きっとイヴちゃんの時と同様にカウンターを狙っているんだ。


 でも、私はナーシィさんにはくせがあることをケイに教えてもらった。

 カウンターの体勢に入るとき、一気に力を入れるために一瞬だけ腕の力を脱力する。

 そこでナーシィさんの剣を、飛ばす!



 

「ここ……っ!!」


「うそっ――――!」



 ナーシィさんの剣を弾き、すかさず切り込もうとした。


 しかしナーシィさんはすぐさま体勢を立て直し、後方に回転しながら飛んでいた剣をキャッチした。


 ワタシの一番の一手が相手の技量に伏した。


 どうしようどうしよう……!



 次の攻め方を考えないと―――――




「私からのプレゼントですっ!!」



 ナーシィさんは今のキャッチした剣を今度は投げて飛ばしてきた。


 豪速で飛んできた剣に避けきれず、考えなく剣を前に出した。

 勢いづいたナーシィさんの剣は私の剣を弾き飛ばし、宙を舞った。


 ナーシィさんは反動で戻ってきた剣を再びキャッチして、何も持たない私に向かって駆け出した。

 

 まずい、死ぬ……!


 いや、軽装してるし死にはしないけど負けてしまう!


 剣は後方だけど取りに行くにも距離があって、その間にナーシィさんやられる。

 体術で……だめだ、隙ができてそこを狙われたら即アウト。


 終わる、このままじゃ終わってしまう……。

 どうすればいいの……ケイ……っ!




 「ユリアァァァァァァァァッッ!!!」




 叫び呼ぶ声に振り向くと、ケイが手を大きく横に広げていた。



「っ―――!」



 思い出した。あれは相手に捕まらないようにする鍛錬で、ケイがふざけて私を抱きしめようとしてきて、それを必死に逃げたときの……!あれなら希望はある!


 でもまさか、あんなふざけたお遊びが役に立つ時が来るなんて……。

 ちょっと腹が立つ!



 至近距離になるとナーシィさんは連撃をくり出した。

 私はそれらをひとつひとつかわしていった。


 レイラさんに教えてもらった、早く動きたいときは体が空気のように軽く、水のようにどんな形にも順応するイメージを持つこと。


 このイメージを固定させて鍛錬すれば、自然と体がついてくるって……!




「私の連撃がかすりもしない!?ユリア様、さすがケイちゃんがとっておきと言っていただけのことはありますねぇ……」




 私も剣を取り直し、構えるとナーシィさんは下を向いたまま両手で剣を握っていた。


 さっきまでと雰囲気が違う。

 何か嫌な予感がする。


 どうして隠すように剣を持っているの。

 どうしてそんなに前のめりになっているの。



 どうして、そんなに睨みつけているの……。




――――――――――――――――




「ナーシィはキメる気だ!ユリ――――」

「待ちなさい。ここであなたが助言したところで彼女のアレに対策しようがないわ」

「でもこのままではっ!」

「一番長く付き添っているあなたが、ユリアさんを信じてあげなくてどうするのよ。ユリアさんを見て、何か考えがあるみたいよ……」




――――――――――――――――




 この雰囲気どこかで……。


 そうだ、初めてケイがクロエさんと戦ったときに、クロエさんが最後に仕掛けた感じと似ている……!


 あの時ケイは何をした?どうやってクロエさんに勝った? 

 あの時のやり方、今の私にできる……?


 違う。できるかできないかじゃない。やらないと負ける。


 今回の交流戦が最後の実践なんだから、ここで一か八かだろうとやらずに後悔するよりやって後悔した方がマシ……!




「ユリア様、楽しい時間でした……。終わりですっっ!!!」




 ナーシィさんの蹴った地面は抉れ、後ろに土煙をあげながら一気に距離を縮める。

 それに対応して私も全速力を出しただただ走った。


 このままいくとぶつかって、互いに重傷を負う羽目になる。

 でも、私はこの目でケイの剣筋を見た。


 私ならやれる。私ならやれる。



 私なら、やれる!!




「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」




 会場は静まり返り、勝敗はどっちに決まったのか息をのんで見守った。


 砂埃が風に流され、徐々に私たちの姿が見え始めると、一人また一人と声を上げていった。

 そして十秒も経ったころには観客全員が叫んでいた。





「勝者、ユリア選手っ!!!」

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