お姉ちゃんは私のって言ってるでしょ!!
私の名前はエミル・イリアス・ベルカ、十二歳。春からここのリーリオン学園に入園した中等部1年生。
今は新しい友だちもできて、勉強やクラブの両立は大変だけど、毎日頑張ってます!
そんな私には、一番楽しみにしていることがあります――――
「エミルちゃん、今日も行くの?」
「当然!それじゃ、お姉ちゃんが待ってるからっ」
そう、私がここに来た理由でもあるお姉ちゃんに会いに行くことです!
お姉ちゃんは容姿・人柄ともに完璧で、昔から老若男女を問わず魅了してきました。
もちろんそれは今もですし、むしろ魅力により磨きがかかりました。
お姉ちゃんは切っても切れない血縁の姉妹であり、誇りであり、私の愛すべき人です。
だから、こうして毎日愛を込めたお弁当を作って、お姉ちゃんに届けるのは至極当然なことなんです!
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「はい、お姉ちゃん、あ~ん♡」
「あーん…………うん、美味しい。エミル、私の為に毎日作って来てくれるのはすごく嬉しいよ。けど、エミルも忙しいだろうし、毎日会いに来てくれなくても……」
「ううん、私が好きでしてることだからいいんだよ!それに…………っ」
今日は50人ってところか……。
少しでも隙が出来たらお姉ちゃんに近づいて、あわよくばその優しさに付け込んで関係を発展させようと企む女たちが沢山いる。
そういう人達からお姉ちゃんを守るためにも、私は毎日お弁当を名目に来ているのです。
そして、私の最大の難敵が……。
「ケイ、お待た……エ、エミルちゃん、先に来てたのね……」
「ふふん、特等席は私がいただきましたよ、ユリアさん」
「べ、別に私はケイの隣じゃなくてもいいんだから……っ」
「私はユリアの隣がいいな……」
「ケイ……!」
くっ、私が目の前にいてもいちゃついて……。
愛の大きさなら絶対に私の方が勝ってるのに、私のお姉ちゃんをたぶらかした女、ユリア・グレース・ルイス王女!
お姉ちゃんがこの人に一目惚れしたと聞いた時は、三日間寝込んでしまいました。
初対面の時はそれほどお姉ちゃんに対する好意が感じられなかったのに、今となっては公然で見つめ合って食べさせ合いをするまで発展してるじゃないですか!
これもやっぱり、長い間私がお姉ちゃんの傍にいなかったのが原因に違いありません……。
でも、私が学園に来たからには、もう誰にもお姉ちゃんを好きにはさせません!
「エミル、何か考え事?だったら甘いものだね。これ美味しいよ、はい、あーん」
「あ~~んっ」
「ふふっ、口にクリームついてるよ」
ここではついてた、ではなく、つけた、が正解です。これは仕込みで本当の狙いは……
「お姉ちゃん、優しく……拭いて……っ」
「エエエエエ、エミルちゃんっ!?!?!?」
ふふふ、動揺してる…。それもそうでしょう、ただクリームを拭ってもらうだけなのに、膝の上に乗って目を瞑り、何かを待つように口を前に出しているんですから。
常人ならこれを見て、求めるものが何かすぐに察するでしょう……。
さあ、お姉ちゃん、来て………。
「ほら、じっとして……はい、取れたよ」
「あ~んっ、お姉ちゃんわかってるくせに~!」
でも、私にすぐに気を配ってくれるお姉ちゃんは優しくて最高です~♡




