カトレアさんの秘密
私たちはイヴちゃんに呼び出され、カトレアさんの部屋の前にやって来ていた。何でも、前にここに移る時にカトレアさんの荷物の中に気になるものがあったらしく、念のため確認しておきたいとのこと。
別に私たちをわざわざ呼ばなくても一人で確認すればいい気がしたけど、まあ何か意図があるんだろう。
部屋は当然鍵がかかっていて、イヴちゃんが細い金具を取り出してカチャカチャと慣れた手つきで扱う。
その後ろ姿は、とても一国の王女の護衛をしている人間には見えなかった。
いや、今目の前にして止めない私も共犯か……。
「ゴクリ……っ、開けるぞ……」
イヴちゃんの妙な緊張に釣られ中へ入ると、沢山の人形が置かれてあった。
しかも、大小様々の同じ特徴をした人形だ。
ベージュ色の髪と白い服、首元に青のアクセサリ…………
あれ、これどこかで見覚えが……。
「ねえ、ユリア……。これ、もしかしてユリアの人形じゃないかな……?」
ケイは変な時に冗談を言うんだから……。
でも、言われれば確かにそう見えなくもない。
隅の方に置いてあるのは少し違うようにも見えるけど、机上やベッドの周りに置かれているのは、私の髪型や服装がそっくりだ。
…………え?
「待って、このぬいぐるみの衣装って……」
「ユリアが前まで着ていたドレスとほぼ一緒だね……」
うそ……私のドレスを覚えていたというの…!?
それも一つだけじゃない、私が幼少期に来てたドレスやアクセサリまで!
「イヴちゃん……これは一体……」
「…………去年の夏休みに入る前、カトレアが何か白い縫い物を作っていた。当時のイヴは、何か新しい趣味でも始めたのかと見過ごしていたが、まさか、これだったとでも言うのか……っ!」
私たちが精巧に作られた人形に目を奪われていると、後ろからカチャッと音がした。
「あら、あらあらあら~?三人とも、わたくしの部屋で一体何をこそこそとしていらっしゃるのですか?新しい娯楽に興じてらしたなら、ぜひわたくしもご一緒させてくださいまし……?」
カトレアさんの眩しくも影がはっきり表れた笑顔は、その後記憶から容易に消えることを許さなかった……




