ケイの発作…?
高等部に上がって、部屋も別々の生活になり一か月余りが過ぎた。
中等部の頃に比べてケイと一緒の時間がかなり減ってしまった。
クラス内の番号で奇数と偶数に分かれた少人数の授業。
人気の選択科目でケイが抽選から外れてしまうなど、今までとは大きく環境が変化した。
会えるのは教室にいるとき、移動教室ですれ違うとき、放課後にそれぞれの部屋を訪れるくらいだ。
ここまでくると同じクラスだったのがせめてもの救いだろう。
当初はこの決定に大層不満をこぼし、遂には学園長に不服申し立てをしようとしたときには私も止めるのに苦労を強いられた。
最近になってようやく落ち着きを取り戻したかと聞いてみたが、本人は仕方がないで終わらせたつもりは微塵もないそうだ。
ケイといいカトレアさんといい、すこし私と離れるくらいで大袈裟なんだから。
でも、それだけ私を求めてくれていると思うと、悪い気はしない。
この日も移動教室があり、目的の教室に移動中、ケイが反対側から歩いてきた。
また目が合って挨拶程度の会話で終わるんだろうな……、とどことない物寂しさを感じていた。
すると突然、ケイが私の腕を掴んだ。
そのまま廊下の壁に引っ張られ、もう片方の手を壁についた。
にこやかな表情で脚の間に膝を入れ、身動きが取れなくなってしまった。
どうやら完全に逃がさないつもりのようだ。
そして、そのまま徐々に顔の距離を縮めてくるケイに、私は顔を逸らした。
「ダメ……誰かに見られてしまうわ……っ」
「それって見られない場所ならいいってことかな?」
「そ、そういう意味じゃ―――っ……!」
ケイは私の言い分を聞こうともせず、キスで口を塞いできた。
もう一度顔を逸らそうとしても顔をケイの方向に固定され、唇を離そうとしない。
それどころか、息継ぎをしようと開けた口に舌を入れてきた。
口の中でころころと搔き回され、溢れた唾液が下へと流れていく。
頭がぼうっとしてきた……。
このままだと授業も…………
…………授業…………授業っ!?
咄嗟に移動教室だったことを思い出し、ケイを突き離した。
「もうっ、いきなりしてくるなんて最低!ケイのばかっ!!」
・
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「ごめんってばユリア、どうしても我慢ができなかったんだ……」
放課後に私の部屋に来たケイは、ひたすら窓の外に目を向ける私に何度も謝ってきた。
私はもう許してもいいかという考えと、私の羞恥心を無視して強引にしてきたことに対する怒りで葛藤していた。
こんなこと易々と許していたら、いつしかみんなの面前で平然としてくるかもしれないからだ。そんなのケイは良くても私がたまったものじゃない!
……ただ、どうしてもと言うなら…………
「こ、今度からは、どっちかの部屋だけにしてっ……」
「っ……!ユリア……大好き!!」
この後、ケイは夕食の時間になるまでベッドから起き上がらせてくれなかった。




