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王女の私は婚約相手になったハイスペックな女の子の騎士に悩まされています!  作者: すきゆり
{高等部篇}春風と共に集う花々
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高等部にお引っ越し

 自分たちの部屋が別々な事に納得がいかないケイは、担当者に直談判した。


 でも、高等部の寮は一人一部屋が原則であり、部屋割りは無作為に決められるため、変更は困難と言われた。

 しかも、王族だろうと関係なく他の生徒と同等に扱うように、というお父様直々のお達しもあるとのこと。


 お父様も根回しが早い事で……。

 大方、私たちに公での触れ合いを自重するようになどと言っていたから、それも含めての処置だろう。


 自重って……それらは全てケイが原因だというのに、お父様は何もわかっていない。



 ほら、早速横でケイが廊下に手をついている。こうなったケイは元に戻るまで時間がかかる。

 エミルちゃんは必死に抑えているつもりだろうけど、拳を高く突き上げて肩が震えている。

 思っていることが丸わかりだ。


 本当にこの姉妹は、良く言えば退屈しない。

 そうこうしている間にも、中等部から運ばれる荷物が来る時間が迫っているというのに……。



 ケイに少し強めの言葉を使って、無理やりにでも立たせた。



 はい、そこの妹、鼻歌歌わない、スキップして回らない!







 エミルちゃんを中等部に返し、私たちの引っ越しも無事に終わった。

 やっぱり部屋に一人だけになると広く感じる。本も沢山置けそうだ。



 でも、二人部屋から一人部屋になると、慣れのせいもあって逆に落ち着かない。

 夕食まではまだ時間がある。


 これから何することもなく、学園内を散歩することにした。

 学内地図を見る限り、お城のような本校舎に食堂や出張の図書室があるようだ。


 私たちが今いる場所は、本校舎からすぐ近くのガーデニング広場。

 ここにいれば歩く距離も少なく抑えられる。





 ……それはそうと、ここ生徒たちが集中しすぎじゃない!?





 私たちが花々に視線を落としている間に、周りには生徒たちがきらきらとした目で私たちを見ていた。



 私たち、何か不味い事でもしてしまったかしら……


 置かれた状況に困惑していると、前にクラスメイトだった子を見つけ、こちらに呼び寄せた。




「あの、私たち何かしてしまったのかしら…?」



 その子は耳を貸すようにと手招きをした。



「君たち知らないのかね?高等部になると、外部生も一気に学園に入ってくるのだよ。し・か・も、君たち二人は今じゃ大陸中の乙女の羨望のカップル。特にケイ氏、君は王女に求婚した超美形凄腕女子という噂だけが独り歩きして、世の女子たちの高嶺の花状態にある。そんな二人と縁のなかった外部の女子たちが君達を見れば、無条件にこうなることも必然なのだよ!」



 ケイが高嶺の花って……。


 いつも付き添っているケイが、女子たちから高評価を受けているのは自慢できるし悪い気はしない。


 でもここまでじっくりと品定めされるように見られてしまうと流石に……。



 そのケイを見る人たちが、ほんの僅かでもケイの意識を向けられることに希望を持っているのだとすれば、嫌だ……。


 だってケイは、私にとって特別な人。

 その視線、声、意識、温もり……全部、全部私だけのものにしたい……!




「ユリア、大丈夫?」



 明確な理由は浮かばなかったが、気づいたらケイの服の裾を摘まんでいた。



「ここは、私目にお任せを……」




 そう言うとその子は大きく息を吸った。




「ケイ様がお通りになりますわよ~~~~っ!!!!」




 突然、カトレアさんを想起させる口調で叫ぶと、どこからともなく見覚えのあるトレードマークを付けた生徒たちが現れ、通り道を作り始めた。


 これって……



「ケイ様ファンクラブのみんなだよ。ケイ氏の事を大きな声で伝えれば、どこだろうと助けてくれるから困ったら今後使ってみなよ。便利でしょ?」



 ファンクラブの人達が手を繋ぎ合わせて、生徒たちを私たちに近づけないように防いでいる。

 どこかの逸話にあった、海を割ったという人物になったような気分だ。



 いや、これはほぼケイが中心に起こっている事。

 ということは、ここではケイが逸話の人物にあたるのか―――




「いたっ、もお~、急に立ち止まってどうしたのよ~?」

「ごめん、ユリア。でもわざわざ助けてくれたんだから、お礼言わないと……」

「え……?」




 ケイは通り過ぎた女子達に振り返り、微笑んだ。





「みんな、ありがとう……」






 その一言が発せられると、今まで騒いでいた生徒たちはしんと静まり返った。



 緩やかな風が吹くと、生徒たちはハッと意識を戻した。



 そして今起こったことを思い出したのか、恍惚とした表情でバタバタと倒れていった。




「あ、みんなどうしたのっ。何とかしないと!」

「もうケイは何もしないでっ!!」

「後の事は私に任せて。ユリア氏、ケイ氏を連れて校舎に!」



 

 私は言われた通り、ケイの腕を掴んで校舎へと走った。

 この時、あの子と私の間には確かな友情を感じた。

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