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私って重い女…?

 ケイのドレス姿は私の乾いた目を潤いで満たしてくれた……。

 でもこれ以上私に恥ずかしい姿を見せたくないと、ドレスを二度と着ない宣言をされてしまった。

 本当にかわいいのだから恥ずかしがることなんてないのに。


 そうしてケイは制服姿で、隣にいたイヴちゃんと何か会話をしながら私たちの舞踏の練習を眺める。



「ケイは本当に参加しないのか?ユリアが踊ってる最中もお前の方を時々見てるじゃないか。あれが一緒に踊ってほしいサインだってことくらいイヴでもわかるぞ?」

「言われなくてもそれくらい分かってるよ……」

「カトレアのあの顔見てみろよ。どんな邪なことを考えてるんだか。ありゃいつユリアに手を出すかわからんぞ?」

「大丈夫。そんなこと、私がいる限り絶対にさせないから」



 あの二人は何を話しているのだろうか。少し距離があって聞こえない。話しながらもケイは集中して私を見てくれていて、そのこと事態は嬉しく思う。

 けど、今の気持ちは嬉しさと一緒に寂しさが付き纏う。


 以前のケイは私をいつもからかったり、スキンシップを取ることが多かった。でも学園に戻ってからは、そういうのもほとんど無くなってしまった。


 私がこうしてカトレアさんと練習をしている間もケイはこれといって反応がない。

 落ち着いていて、私たちに休憩を促す程度でそれ以上は介入しようとはしない。


 一体どうしてしまったのというのか。

 前までのケイなら、私が舞踏会に参加すると言ったら当然のように後を追って参加していたはず。


 確かにケイは掲示板を見た時は興味が惹かれないと言っていた。そうだとしても、こんなにも素っ気なくなってしまうの……?


 私は今ケイ以外の人と長時間触れ合っているのに、それでも何も感じないの……?

 嫉妬のひとつくらい向けてくれてもいいじゃない。


 ケイにとってはそんなにつまらないものだったのかしら…………




    ☆




 練習を終え、リルとクロエさんが練習している校舎の中庭に向かった。

 するとベンチで魂が抜けたように天を仰いでいるリルの姿があった。



「ちょっとリルどうしたの!大丈夫なの!?」

「あ……ユリアちゃん………見て、小鳥が自由に空を泳いでるよ………」


 これは大丈夫じゃないやつだ……。


「リル、戻ってきなさい!あなたにはまだやるべきことあるでしょ!クロエさんが他の人に取られてもいいの!」


 リルの体を揺らしながら呼びかけるも、リルの目は未だ光を失ったままだ。

 一体どうすれば………



「あら、ユリアさんじゃない。カトレアさんとの練習は終わったのかしら。ちょうど私たちも今日の練習が終わったところよ」

「あ、クロエさんっ、リルに一体何があったんですか!」

「心配しなくても、少し疲れているだけだから安心してもらって大丈夫よ」

「あれぇ~空ってこんなにオレンジ色だったっけ~?明日はどんな色になるのかな~。へへっ、楽しみだなー……へへ、へ……」



 これのどこが大丈夫なのかさっぱり意味不明なんだけど……



「ユリアさんはこれから夕食かしら。もしよければ私たちと一緒に――――」

「はい、ぜひ!」


 クロエさんに会食の提案をされたのが嬉しくて最後まで言い終える前に即答した。


「あ、ケイもご一緒してもいいですか?」

「もちろんよ。あなたたちは本当に仲がいいのね」



 仲がいい、か……。

 最近のケイを見ていてもそう言えるのかしら……。



「……………大丈夫よ」

「え?」

「先に食堂で待っているわ。起きなさいリル。あなたの大好きな食事の時間よ」

「やったぁ~食べるぅ~」


 リルはクロエさんに催促されると、ふわっとしたような様子で後を着いて行った。

 私もケイを呼びにいかないと。


 一度別れる前に待ち合わせ場所として決めていた噴水広場へ行くと、ケイが右足を抱えて座っていた。

 辺りには距離を置いてケイを眺める生徒たちもいた。


 生徒たちに注目の的になっているケイに話しかけようとすると、確実に私にも視線が集まってしまう。

 でもここで悩んでいたらきりがないし、待たせているクロエさんたちにも悪い。

 声を掛けようと近づこうとしたところでケイもこちらに気づき手を振った。


「ケイ、夕食なんだけどクロエさんに一緒に食べないかって誘われたのよ!早く行きましょ!」

「ふふっ、ユリアすごく嬉しそうだね。なら早速行こうか」



 ここまでは何でもないただの夕食に向かう私たちだ。

 でもこの時の私は妙に積極的になった。

 歩いている間、空いたケイの手を思い切って握ってみた。

 瞬間、驚いたように私に顔を向けた。



「何、嫌だった……?」

「ううん………むしろユリアから握ってくれてすごく嬉しいよ」

「そ、そう?感謝しなさいよねっ」

「うん、ありがとう……」


 ケイは笑顔で嬉しさを私に示した。でも私はもっとケイが喜ぶ反応が欲しかった。


 普通ならこれくらいの反応でも十分なはず。笑顔だけでも満足できないのなら、私はどうしてもらえたらケイが喜んだと認めるのだろう。


 手を握られた感想を聞く?ただ大きく体を使って抱き着かれる?

 例えそれらをしてもらっても、それでしか満足できない私って……。

 今の私は明らかに重い女だ……。



 クロエさんたちとの夕食は楽しい時間だった。

 王女のあるある話や学園での話で盛り上がり、リルもいつもの状態に戻ってとても有意義に感じられた。


 また近いうちに一緒に食事できたらいいな………

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