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メイクアップダンス

「あらユリアさん。そんなに緊張なさらなくても大丈夫でしてよ…。わたくしがしっかりとユリアさんをリードいたしますので…………ふへ、ふへへへ……」

「カトレアぁ……ユリアといる時のお前気持ち悪いぞ………」



 イヴちゃんは椅子にあぐらをかきながら肘をつき、半目でカトレアさんに指摘した。



「何を言ってますのイヴ。わたくしはただ、ユリアさんがバランスを崩されないようにと手を重ね合わせた上で、お背中をお支えてしているだけでしてよ。これは舞踏において基本中の基本。イヴもまだまだですわね……」



 いや、言い方はともかく、イヴちゃんは私が思っていることを代弁してくれた……。

 確かに基本姿勢としては何も問題はないが、カトレアさんは私を見る目が普通とは違っていた。


 何かこう……私を恍惚とした表情で見てくる。

 加えて、我慢しているのか口に力が入り、たまに口角が上がる。

 そして何かをすするような音が聞こえる……。


 あぁ、カトレアさんはいつからこんな風になってしまったのだろう……。



 そんなことを思いながら誰もいない空き教室で練習をしていると、扉静かに開き、一人入ってきた。

 私はその人を一見すると練習を中断し、その人の所へ駆け寄った。



「かわいい~~~~!!!ケイ、すっっっごく似合ってるじゃない!!」



 ケイは花の刺繍が入った白いドレスを身に着けていた。

 もともと素材がいいため化粧も自然な程度に抑えられ、髪留めも花飾りの仕様に変わった。


 黒髪と白いドレスの対称がそれぞれの良さを引き立たせ、結果的に全体が綺麗に映える。


 そして何より、普段慣れないドレスに若干恥ずかしそうに頬を染め、束ねた髪を指でくるくると遊ばせているケイ、かわいい!!


 私が追い打ちで褒めちぎると、耳まで赤くなり手で顔を隠した。

 かわいい、ほんとにかわいすぎる!!



 いつも何かと私に言ってくる割には、自分は言われ慣れてないんだ。

 だからどう反応したらいいのか分からなくて、言葉が出ずに顔を隠すことくらいしか出来ないんだ。


 ケイのお陰で、さっきまでの勢いで参加してしまい後悔しかけていた気持ちを相殺、いや、それ以上に引き上げてくれた。

 もうこれを見れただけで、私は今回の舞踏会に参加した意味がある……。



「お、ユリアさんに気に入ってもらえたみたいで何より何より♪」

「良かったですね、クラブ長!」



 ケイの後に続いて、メイクアップクラブの生徒が入ってきた。

 この人たちがこんなに素晴らしいものを……!


 私は無言で二人と固い握手を交わした。


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