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戻ってきた日常

 私たちは3年生に進級し、ケイとも無事に同じクラスになれた。

 3年生からは今まで以上のテストや特別授業があるのだそう。

 ますます忙しくなりそうだ………


 ケイが隣に戻ってきた安堵と新しい学園生活への若干の不安を感じながら、寮から校舎に続く道を歩いていた。

 園芸クラブによって綺麗に育てられた花々が、私たちを校舎へと誘う。


 私は勉強をするのは嫌いじゃない。けど出来ることならしたくないし、可能ならその時間を読書に割きたい。

 あとちょっとはケイとも……。


 そんなあれこれと頭を悩ます私を花たちは静かに微笑みかける。

 あぁ、ありがとう花たち。お陰で今日もいい1日になりそうです。


 何となくケイに視線を移すと、ケイも私に微笑みかけていた。



「どうしたの、ケイ。何かついてるかしら?」

「ううん、私がここに戻ってきたときの事を思い出して………ふふ」

「なっ……!もうそのことは忘れてって言ったじゃない!!!」





 ――――――――――――――――



 ~10日前~





「ケェ~~~~~イッ!!!!」

「ユリア!あははっ!………ただいま……」



(私を見つけるなり名前を叫んで飛び込んでくるなんてね)

(だってそれは……そう!一年ぶりに会ったからであって!その………)

(嬉しかったんだよね?)

(…………っ…………もぅっ!意地悪はやめてよ!)

(あはっ、謝るから叩かないで。…………でもその後も私から離れようとしなくて、正門前でそのまま…………)



「私がいない間、風邪とか引かなかった?」

「うん……」

「辛いこととかなかった?」

「………あった…………ケイがいなかった………」

「っ……!…………ごめんね、もう一人にしないから…………」

「…………っ…………うん…………」



(外でもあんなに大胆になるなんて、ユリアも成長したんだね)

(厳しい訓練に耐えたと言うから労ってあげただけよ!あと私の活躍ぶりを見せられなかったのが残念って意味で………べっ、別に寂しかったとかそんなのじゃないんだからっ!勘違いしないでよね!!)

(ふふ、わかったわかった………あ、成長したと言えば…………)



「ユリア、少し背が高くなったんじゃないかな?」

「一年経ったんだもの、背くらい伸びるわ…………」

「……………あと他にも成長したところがあるみたいだね…………」

「………?……………っ~~~~~~!?ケイのばかっ!!!変態!!!最低っ!!!」



(ケイったらほんと最っっ低!)

(ごめんごめん。でも前よりも成長したのは確かだよね。少し筋肉がついて全体がすっきりしたし、動作の移し方も無駄がなくなってる。本当に頑張ったんだね。すごいよ、ユリア………)

(いきなり褒めるなんてやめてよ…………ケイはずるいわ……………)




 ――――――――――――――――




 そう、ケイは本当にずるい。弄ってきたかと思えば甘い言葉ですぐ懐柔しようする。

 人に好意を伝えておきながらすぐにどこかへと行ってしまう。

 そしていつも変わらない優しさで振舞う。


 私がこの一年間、どんな気持ちでケイのことを考えていたかも知らずに…………




「おーい!ユリアー!ケイー!これ見てみろよー!」



 校舎前には人だかりができており、私たちに気づいたイヴちゃんが大きな声で来るように手を振りながら急かした。


 イヴちゃんに言われた通りに近くに行き、指さされた入り口横に立てられた大きな掲示板を見た。

 そこには『参加者募集』と派手に色付けされた見出しとともに、その下に説明が記されていた。



 えーと………ペアで彩る花の舞踏会……?



 『淑女たるもの、祝賀の場において色を飾ることが求められる。そのため、新たな行事として舞踏会を開催し、所作やマナー等基礎から発展までの範囲について教養を深めることを目的とする。なお、参加は任意のものとする。』



 後に記されていたのは日程と講師の紹介などだった。

 私は幼少期よりその手の教育を受けていたため、参加するにしても特に不安材料はない。まあ、みんなの前で披露するのは恥ずかしいけど……



「ケイは参加してみたい?」

「うーん、あまり惹かれないかな……ユリアはどう?」

「私もよ。それに舞踏会なんていい思い出がないし……」

「じゃあ今回は不参加で決定かな」

「えぇっ!二人とも参加しないのか!?こういうのすっっごく興味あるんじゃないかと思ってたのになー」

「イヴちゃんは参加しないの?さっきあんなにはしゃいでたけど」

「はしゃいでなんかないぞ!それにイヴはひらひらしたドレスとか苦手なんだぁ……」



 イヴちゃんはドレスの話になると急に顔に影が出てきた。



「あら、イヴちゃんかわいいからすごく似合うと思うんだけど」

「それが嫌なんだ!カトレアのやつ、昔からパーティーがある度にイヴを着せ替え人形にしやがって!ニャーッ、思い出したくもない!」



 ドレスに対するトラウマ?を訴えたところで、体を震わせて地面に座った。まるで猫のように小さく丸まった姿はなんとも愛くるしい。


 私はイヴちゃんの頭を撫でようと手を伸ばした。

 直後、その噂の人が来るタイミングを見計らっていたかのように遠くから笑顔で走ってきた。



「ユリアさんもこちらご覧になりまして??ぜひわたくしと『愛』と『情熱』に溢れた舞を踊りませんこと!!」

「え、でも私……」

「せっかくですしこの機会にケイさんもドレスを着てみてはいかが?」



 ケイの…………ドレス…………!?!?



「カトレアさん……………そのお誘い、受けますっ!!!」

「え!ユリアっ!?」



 私はカトレアさんの手を取り舞踏会への参加を決意した。


 こうして私たちの舞踏会への準備が始まった………

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