ケイの悩みごと………?
「ユリアちゃんたちの劇すごかったね~!私ずっと釘付けだったよ~!」
「ありがとう。でも私の芝居変じゃなかった?」
「何も卑下するようなことはないわ、私の目から見ても短期間であれ程のクオリティは見事だと感じたもの。事実、企画別満足度で首位だったじゃない」
「あれはケイのファンたちの効果というか……」
そう、私たちのクラスの劇は大成功を収めた。
普段の私ならここで胸を張り、大いに自慢して高笑いをしただろう。
でもケイ以外の人前ではそんな品位の欠けたことはしない。
「ところでケイちゃんは?一緒にいないなんて珍しいよねー」
「ケイは演劇クラブに助っ人に行ってるの。私たちの劇を見たクラブの人が感化されたらしくて……」
「あら、ユリアさんは誘われなかったの?」
「誘われはしたけど、もうしばらくお芝居はいいかなって……」
二度とやらないと言い放ったものの、芝居はやってて楽しかった部分もあった。
でももう一度やりたいかと聞かれると首を傾げてしまう。
反対にケイは練習も人一倍頑張っていたし、少しでも興味が湧いたのだろうか。
☆
休み時間、私は教室の隅にある自分の机で睡魔に身を委ねようとしていた。
昼食でお腹を満たした上に、ぽかぽかと暖かい陽気に当てられ快眠の条件が整った状態だ。
鞄に入れていたタオルを枕にして頭を置いた時、近くにいたクラスの子の話し声が聞こえた。
私は特に気にすることもなく、そのまま眠りにつこうとしていた。
「ケイさんって最近またかっこよさが増したよね!」
ケイの話……?私は睡魔にストップをかけた。
「うんうん!何でも一生懸命で、応援したくなっちゃう!」
「私、ファンクラブに入ってみようかな~」
ファンクラブに入るのは考え直して……。
それは置いておいて、確かにここ最近の…というか二学期に入ってからのケイは何事にも気が入りすぎているような気がする。
そして休み時間には、その気が抜けたようにぼーっとしている姿も見かけるようになった。
一体どうしたのかしら?
気になった私は夜に部屋で聞いてみた。
「ケイ。夏休みが終わってから頑張りすぎじゃない?」
「そう…かな?」
「もしかして…………」
「っ……!」
「夏休みで怠けてたせいで、成績落ちてないか怖いんじゃない~?」
「へ………?」
ケイから腑抜けた声が漏れた。きっと正解なんだ。
ケイも意外と臆病なところがあるのね……
これはいい収穫をしてしまったかも!
「ふふん♪安心しなさい、ケイには特別にこの私が個別教師になってあげるわ!」
「えっと…………それじゃあ、お願いしようかな……」
ケイにはいつも余裕綽々とした姿を見せられているから、これは反撃する好機!
本来の私が如何に優れているのか、照明してやろう!
それから、私の特別授業が始まった。
「ユ、ユリアー、コレワカンナイヨー……」
「も~、ケイったらしょうがないわね~♪」
「なんだぁ、あれは…………?新しい遊びか?」
「ぐぬぬぬ………羨ましいですわ………」
ケイは授業が終わると、私にわからない所を頻繁に聞くようになった。私はそれを丁寧に教えてあげる。
はぁーっ……この優越感!!癖になりそうっ!
…………けど、どうもひっかっかることがある。
二週間ほど個別教師をやっていてケイが学力で不安になる要素が全くわからない。
小テストは全て満点。定期テストは悪くても上位5人には必ず入っており、とても問題にするようなことはないはず。
何より勉強で不安になっているのなら、どうして文化祭や色んなクラブの助っ人まで全力で取り組む必要があるのか?
ケイは何を考えているのか……………




