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王女の私は婚約相手になったハイスペックな女の子の騎士に悩まされています!  作者: すきゆり
王女、婚約者の家族と面会する!?
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秋の嵐の前兆

「ユーーーリーーーーアーーーーさ~~~~~ん!!!!!」




 学園の寮に着くとカトレアさんの嬉々とした熱い抱擁を受けた。



「お会いしたかったですわ!もおーユリアさんのいない休日なんて退屈すぎて苦行でしかありませんでしたわ!!」

「あはは……私もカトレアさんと久しぶりに会えて嬉しいです……」



 カトレアさんに詰め寄られているとケイがいつの間にか横に立っていた。



「コホン……ユリアは長い道のりで疲れているので、続きはまた今度お願いします。行こうユリア」


 ケイは強めに私の手を引っ張った。



「ユリアさーん!今度はぜひわたくしの部屋にいらしてくださいませー!」



 カトレアさんも相変わらず元気な人だな……。私はそこまで疲れてはいなかったけど、ケイは気を利かせてくれたのだと思う。


 はぁ……これから忙しい毎日が始まるんだ………


 友だちのみんなと会えるのは嬉しいし、まだ学園で経験していないこともたくさんある。別に学園が嫌という訳ではないけど、どうもやる気が起こらない。

 時間にゆとりある生活から突如として時間の縛りがある生活に戻ると、緩い時間に慣れきった体を元通りにするにも時間がかかるというもの。



 荷物の整理も終わり、気分転換に廊下を歩いていると、壁に貼られていた明るい色のポスターを見つけた。



「リーリオン学園、秋の文化祭………?」



 ちょうど通りかかった子に聞いてみると、毎年9月には各クラスやクラブが文化に関わる創作や発表を自由に行う文化祭というものがあるらしい。


 これから9月はその文化祭に向けた準備で忙しくなるという。

 その子は楽しそうに話すが、私は見たことも聞いたこともないため、みんなと同じように意気揚々と身を据えることが難しいかもしれない。




 翌日の授業は午前中で終わり、午後からはクラスの文化祭の出し物を話し合うことになった。出したいものを聞かれるとみんな勢いよく手を上げ、次々に案を出していく。

 ゴーストハウス、カフェ、化学実験、動物との触れ合い、芸の披露会、創作即売会、劇………開始から間もないうちに20個以上もの案が出された。



「ユリアさんは何かやってみたいことなどありませんか?」

「えっ!私はその……まだ文化祭がどういうものなのかちゃんとわかっていないし……」



 私が口籠らせているとケイが手を挙げた。



「9月はユリアの誕生月です!」

「ちょっ、ケイ!?」

「なな何ということですの!?!?こうしてはいられませんわ………皆さん!ユリアさんのお誕生日がより絢爛豪華に飾られる文化祭にいたしますわよ!!」


 カトレアさんの掛け声とともにクラス全員がおーっ!と声を上げ活気づいた。




「どうしてくれるのよケイ!!みんなおかしな方向にやる気づいてしまったじゃない!」

「おかしくなんてないよ!ユリアの誕生日だよ!本来なら国を挙げて祝うべきなのに、学園にいるからできない…。それならせめて、学園を挙げてユリアの生誕祭を祝福しないと!!」

「せ、生誕祭!?」



 みんなして大袈裟がすぎる。私が王女ってだけでたかが誕生日じゃない……。

 でも、私のことでみんなが盛り上がってくれるのは凄く嬉しい。ここは気恥ずかしさを抑えてみんなの好意にあずかろうかな。



 今回の話し合いで私たちのクラスの出し物は演劇に決まった。


 内容はとある小説を題材にした恋愛ストーリーで、捕らわれたお姫様を騎士が救い出すというものらしい。

 これ………私たちとは関係ないわよね……?



 後日くじ引きでそれぞれの役が決められた。あるはずがないと思っていたけど、私はお姫様役で、ケイは騎士役になった。

 まさか仕組まれたのかと思い、みんなの顔を伺うと、一人を除いてにこにこと不自然なまでに満面の笑みを向けられた。


 これで全て察した。やっぱりこれは仕組まれたものだったのだと………





    ☆





「あぁ、姫よ……その美しさに魅せられた醜い魔女に囚われてしまおうとは………あと少しだけ私目に一刻をお与えてください。必ずや、この月明かりの下へ連れ出してみせましょう……っ!」



「キャーーッ!!!!ケイ様ーーッ!!!!」



 劇場のステージでケイが台詞を言った直後、客席に所狭しと見物に来た、自称ケイ様ファンクラブの生徒たちがケイに黄色い声援を送った。


 そのファンクラブの生徒たちは、鼻血を出しながら恍惚としている者、後ろに倒れゆく者、運ばれていく者などとても練習だけを見た後とは思えない惨状になっていた。



「カット!カァーット!!!これでは劇の練習どころではありませんわ!」



 不満を漏らすとカトレアさんはステージの中央に立ち、手を叩いて生徒たちの注目を集めた。



「皆さん、今ここで劇の内容を知ってしまえば当日の面白みと感動が削がれましてよ?よって、当日まではわたくしたちの練習期間の劇場の出入りを禁止いたしますわ!!」



 カトレアさんが忠告すると、生徒たちから不満の声が投げられた。

 ここでは身分とか関係ないとはいえ、一応カトレアさんも一国の王女なんだけどな……



「まあ、皆さんのお気持ちも痛い程理解できますわ。そこで!今の言葉を約束していただけた暁には、当日にケイさんのオリジナルグッズの引換券をプレゼントいたしますわ!!」




 て……っ!はぁああああああああああ!?!?




「ちょっと待ってくださいカトレアさん!!ケイのグッズって何なんですか!!」

「ご安心ください、グッズで得た収益もクラスの利益として還元いたしますわ」

「そういう意味じゃありません!!ケイからも何か言いなさいよ!!」

「ちょっと恥ずかしいけど、みんながそれで喜んでくれるなら、私は問題ないよ」



 ケイは照れくさそうに頬を指でかきながら許可を出してしまった。

 そして、ケイの優しさを目の当たりにし、刺激された生徒たちが再び湧き上がる……。

 



「もぉ!私どうなっても知らないんだから!!」

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