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お・と・も・だ・ち 、ですわ!

 最近、私には悩み事がある。



「ケイちゃん!今度私たちのクラブに来てくれないかしら!」


「ケイ様…手紙書きました!読んでくださいっ!」


「ケイさん。近々私とお茶会でも…」「カトレアは何でユリアも誘わないんだ?いつもあんなにユリアを…んんっ!?」「おほほほほこの子の事は無視してもらって構いませんわっ!!!」



 とまあケイは何かと大人気で、休み時間には他のクラスの生徒もケイを見に来る始末だ。もちろん私も友だちなら今となっては多くいるし、孤独感のようなものはない。


 が、ケイの優しい性格が裏目に出て、他の子のお願いをつい引き受けてしまう。そしてそれがケイの容姿端麗、成績優秀、安心できる包容力と相まって人気に拍車をかけている。

 そのせいで私は休み時間、昼休み、さらには放課後まで一緒にいる時間が減ってしまったのだ。


 寮に戻ってもケイは疲れた様子でシャワーを浴びたら早々に寝てしまう。いくらケイが優しいからといって疲れているのにわざわざ無理やりにでも私事に付き合わせるほど私も野暮ではない。


 しかし、この状況は……由々しき事態である!

 アザレアである私を差し置いて、他の女の子と仲良くしているなんて!


 ……いやこれは訂正しよう。

 ケイが疲れている様子なのに、アザレアの私が見て見ぬふりなんてできない!

 何か解決策を考えねば…




 <策その1>


「あななたち、ケイから離れなさいっ!!ケイが引き受けてくれるからといって自分たちの要望を押し付けて…恥を知りなさいっ!!!」


 こんなこと言えるわけがない……

せっかく順調に友好的な関係を築き上げているというのに、一気に崩壊させるようなリスクを取るべきではない。それに王女の私の品位が問われる。これは無い。




 <策その2>


「ケイ……私と、デートしてみない…?」


 ああああああああああ~~~~~!!!!私は何てことを考えているんだ!!

 こんな考えが浮かぶなんて私も相当に疲れているんだ……

 こんなこと言うのは万が一にもあり得ないけど、もし、もしも何かの間違えで私の口から言ってしまった場合、軽く死ねる。




 <策その3>


「ケイ、最近動いてばかりで疲れているでしょう?人助けもいいけど、たまには自分のことを優先して断ることも大事よ」


 よしっ、これだ!流石私、これなら自然にケイを他の子たちから引き離すことができる!





 私は早速実行に移すためにケイに近づいて行った。

 話かけようとしたちょうどその時、カトレアさんがケイの隣に立った。



「それではケイさん、参りましょうか…」


 声をかけようしたところでタイミング悪くカトレアさんに連れていかれてしまった。



「何なのよ……ケイのバカ……」




 ☆




 私はカトレアさんとケイの後を見つからないようについて行った。


 するとしばらくして、学園を一望できるほど眺めのいい校舎上階のオープンデッキに着いた。

 そしてカトレアさんは慣れた手つきでテーブルの上にティーセットを準備したかと思うと、ケイの方を見ながらもじもじし始めた。


 頬を赤く染め、何かに恥じらうように人を見る。

これは本で何度も見かけた反応…


 そう、恋する乙女!





 …………ん?





 こここここ恋っっっ!?!?!?




 そそそ、そんな嘘でしょ!!カトレアさんがケイを!?


 いやいや…確かにケイは生徒たちからの人気は絶大だし、誰にも優しいし、少し身長もあってスタイルいいし、真面目な顔をしてる時はかっこいいし……


 って、何を考えているんだ私は……。一度落ち着こう。まだそうと決まったわけではない。



 私は二人が話している内容を聞き取ろうと出来る限り聞き耳を立てた。でも少し距離があるせいで上手く聞き取れない。



「ケイさん、今日あなたをお誘いしたのは、わたくしがかねてよりお伝えしたいことがあったからですわ……」

「私に?……ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。聞かせてください…」

「……あ、あのっケイさん!わたくし……ずっと前からっ…!!」



 とその時突然風が吹き、カトレアさんの告白?が聞こえなかった。



「……カトレアさんの気持ちは十分伝わりました。私で良ければ…」


 もう一度目線を戻すと、ケイは笑顔でカトレアさんと握手をしていた。



 ……え……ケイはカトレアさんの告白を了承したの……?

 そんな……ケイは私を愛しているんじゃなかったの……?

 今までの私への言葉も、キスもただの気まぐれだったとでも言うの……?



「え、ユリア?どうしてここに…?」

「ユ、ユリアさんっ!?」

「……ケイは……っ……ケイにとっての私はその程度だったのっっ!!?」

「ちょっと待ってユリア。何を―――――」

「もうケイなんて知らない!!!」

「ユリアッ!カトレアさんすみません。この続きはまた…」



 私はその場から走り去った。

 長い階段を駆け下り、地上階に着くとひたすらに林の方へと走った。


 林に少し入ったところでケイに追いつかれ、腕を掴まれた。



「ユリア!私の話を聞いて!」

「嫌だっ!聞きたくない!嘘つきの人間の話なんてもううんざりよ!!」

「ユリアッ!!!」



 ケイは私の腕を引っ張り強く抱きしめた。



「ユリア聞いて。何を勘違いしているのかユリアのことだから大体わかったけど、ユリアが考えているような事は絶対ないから」

「じゃあカトレアさんと何を話していたの!」

「……カトレアさんに申し訳ないし言いたくなかったけど、カトレアさん、ユリアとずっと前から友だちになりたかったんだって」


 え……


「ユリアの前だと緊張して、いつもの自分でいられないからって私に協力をお願いしてきたんだ」



 そんな…私、早とちりして勝手に勘違いして、取り乱して……



「ごめんなさいケイ……私、また…」

「ううん、ユリアに勘違いさせるようなことをした私が悪かったんだよ。ごめんねユリア」

「ケイは悪くない!何でもすぐに決めつけて、勘違いする私が悪いの!」



「本当にお二人は仲がよろしいのですね。羨ましい限りですわ……」


 後から来たカトレアさんは木の幹に背中を預けていた。


「カトレアさん…すみません、ユリアに話してしまいました」

「よろしいのですケイさん。一時とはいえ、ケイさんとの時間を奪ったわたくしに原因があるのですから…」

「なっ…!?」


 カトレアさんは私の方を見ながら鼻で笑った。



「それで、その……ユリアさん。わ、わたくしとおお友達になっていただけませんかっ!!」



 カトレアさんは顔を赤らめながら振り絞るようにして私に告げた。


 こんなに人間らしいというか、飾り気のないカトレアさんを見るのは初めてだ。

 今まで私はカトレアさんの事を面倒な人、いつも気取っている人などと思っていた。

 しかし今私の目の前にいるカトレアさんは女の子らしく恥じらう気品にあふれたお嬢様だ。


 自分の記憶にあるカトレアさんと目の前のカトレアさんが違っていて別人じゃないかと疑いたくなる。


 そして、そんな人柄が変わるほどに私と友だちになりたいと言ってくれているカトレアさんに対して断る理由もない。



「えぇ、私でよければぜひよろしくお願いしますカトレアさん!」


「はぁ……っ…!!ユリアさぁぁぁ~~~~ん!!!」



 カトレアさんは何とも嬉しそうな表情に変わり、私に抱き着いてきた。


 私としても友だちが増えるのは嬉しいし、何より苦手だったカトレアさんと仲良くなれるのは有意義な学園生活を送るためにも有益だ。

 こんな形とはいえ仲良く友だちになれるのは一つの運命だろう。

 ゆくゆくはクロエさんとも友だちになれたらと思う…




 それにしてもカトレアさん…ちょっとハグする時間長くないかしら…?

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