入園しました!
私たちが学園に到着したのは日が傾き始めた頃だった。
正門から入ると、道の左右にある多様な花々がお迎えしてくれる。
広大な敷地の中央には本校舎があり、その大きさは数キロ先からでも確認できるほどだ。私たちの城と同じくらいだろうか。
私たちは本校舎に向かう前にまず荷物降ろしや身支度をするために寮に立ち寄る。
身支度というのは本日入園する者を祝う晩餐会が開かれるそうで、そのために各部屋に用意されているという制服に着替えなおしたり、化粧をなおしたりとまあ色々しなくてはいけないわけで、実に面倒に思える。
寮もかなりの規模でレンガ造りの重厚な造りが歴史を感じさせるが、非常に綺麗な状態で保たれていて、清掃員の技術と経験の高さがうかがえる。
中庭には噴水とその周りに花壇があり、こちらもよく手入れが行き届いている。
寮は三階層になっており、各部屋は二人部屋になっていた。私たちの部屋は東側の二階の角部屋で、室内には一応バスルームが備え付けられていた。
設備の確認などは今日はこのくらいにして、今は晩餐会の準備をしなくてはいけない。
早速着替えようと制服に手を伸ばしていると、ケイが私の方をじっと見ていた。
本人は「全然気にしなくていいよ」と笑顔で答えたが、何となく嫌だったため部屋を出て行ってもらった。
制服は白を基調としたロングスカートスタイルで、ケイのはロングパンツスタイルなんだけど……。
「どうしてスカートじゃないのよ!」
「どうしてと言われても……こっちの方が動きやすいし。それに私にはスカートなんて似合わないよ……」
ケイは普段からズボンを履いていたり、女の子らしい服装をしないから自分のかわいさに気づいていないんだ。
そのうち、ケイがいかにかわいいかを自覚させてやる……!
気づいたときには日が暮れかけ、外では本校舎に向かう生徒たちの声が聞かれた。
いよいよ他の同年代の子たちとご対面という一大イベントに出たくない気持ちでいっぱいになったが、ケイに促され渋々本校舎へと足を動かした。
重い足取りで向かっていると、他の子たちが私たちを見ながらひそひそと何かを話していた。
話している内容がとっっても気になるところだが、私は王女であることを自分に言い聞かせ、王女ユリアの自信に満ちたオーラを身にまとった。
ケイにはいつも通りの私で大丈夫と言われたが、人見知りが発動すると無意識にこの状態に変わってしまう……
顔を真っ直ぐに向けて歩いていると、私たちの前を歩いていた女の子が何かに気づいたように突然立ち止まり、こちらを向いた。
「…………?あら、あらあらあら~~~???ユリア王女とケイベル様ではありませんの~~!!お久しぶりですわ~!」
くっ…!
「あら~カトレア王女。相変わらずお元気そうで何よりです」
「え~もちろん!お気遣い痛み入りますわ~!ところでケイベル様、先のお茶会のお話いかがでしょう?わたくしが手作りした隠し味入りの菓子を用意してしてございますの。ですのでぜひ近日、いえ、明日にでも……!」
カトレア王女は不敵な笑みでケイに迫った。
ケイも少しは離れるくらいしたらどうなの……!
「『し・つ・れ・い』致しますカトレア王女。明日は一日、ケイは予定がありますので…そうよねケイ?」
「え、別に明日――――」
「そうよね、ケイ………?」
「っ………!!」
ケイは私の笑顔を見ると、顔から汗を流した。
「あら~それは残念ですわ。ではまたの機会にぜひ…うふふっ♡」
カトレア王女は妙な視線を私に向けながら先へと進んで行った。
「あの…ユリ――――」
「ケイ、部屋に戻ったら少しお話があります…」
私は立ち尽くすケイを置いて一人で先に本校舎に向かった。




