王女の私は一目惚れした女の子の騎士と結婚します!
「うぅ……っ。ユリア、どうしてもこれじゃないとダメかな?」
特注で仕立てられた純白のウェディングドレスを身に纏い、
鏡の前で恥ずかしそうに聞いてくるケイ。
「とっても素敵よ、ケイ! その証拠に……ほら!」
周りには私達二人を見つめながら感嘆し、ハンカチで涙ぐむメイドたちがいた。
そして…………
「お姉ち˝ゃ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝ん˝ん˝!!!! ひぐっ、す˝て˝っ、す˝て˝き˝た˝よ˝ぉ˝ぉ˝ぉ˝ぉ˝!!!!!」
「ユ˝リ˝ア˝ち˝ゃ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝ん˝ん˝!! ケ˝イ˝ち˝ゃ˝ぁ˝ぁ˝ん˝ん˝!! お˝め˝て˝と˝ぉ˝ぉ˝ぉ˝ぉ˝ぉ˝~~~~~!!!」
「わ˝た˝く˝し˝の˝っ、わ˝た˝く˝し˝の˝ユ˝リ˝ア˝さ˝ん˝が˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝!!!!」
「エミル、うるさい……」
「アリスさんの言う通りよ、リル。こっちが恥ずかしいわ……」
「カトレアもだ。あとユリアはお前のじゃないぞ~」
咽び泣く三人とは対称に呆れて溜め息をこぼす三人。
確かに騒々しいかもしれないけど、みんなのことを知っているからか、こっちの方が落ち着く。
私もウェディングドレスを着てからまた緊張が出てきたけれど、今のみんなの反応が可笑しくてそれも和らいだ。
「皆さま。ユリア様とケイ様は間もなく最後の準備に入るそうなので、私達は先に式場へ行きましょう」
ミリーちゃんが声をかけると、みんな一言ずつ残して部屋を出て行った。
メイドたちを除いて二人になった部屋は一気に静かになった。
私としてはもう少しいてほしかったけど、ミリーちゃんが気を利かせてくれたのだろう。
メイドたちに軽く指示を受けながら私達はメイクを施されていく。
ケイは慣れていないためか、体が硬くなって気恥ずかしそうに部屋の隅に視線を向けていた。
やっぱり恥じらって頬を赤らめるケイは昔から変わらずかわいい。
「それでは会場へと向かいますので、裾を踏まぬようお足元をお気を付けください」
部屋を出ると、等間隔にメイドや騎士たちが頭を下げ式場までの道を作っていた。
何だか大袈裟な気もするけれど、今日くらいはいいだろう。
一歩、また一歩と式場に近づく毎に胸が高鳴り、裾を摘まむ指に力が入る。
私は今、どんな表情をしているんだろう。
硬い表情になっていないだろうか。
歩き方は間違っていないだろうか。
だめ……どうしても緊張してしまう……。
パーティーや公務の式典とは違う、人生の華を飾るこの瞬間。
ケイとの一生忘れられない思い出にしよう考えると緊張が強まっていく。
このままじゃケイやみんなに不安を与えてしまう……
一体どうすれば……!
「っ―――――!」
ケイは私の手を握った。
ケイの方を見ると、ケイは優しい表情で私を見ていた。
「大丈夫、ユリアの隣にはいつだって私がいる。ユリアが私のために悩んでくれていることだって知ってるよ。そんな優しいユリアだから、私はこの瞬間、ここにいるんだよ……」
「ケイ…………」
「さぁ、行こう。私達の結婚式へ……!」
「うん……っ!」
ケイに手を繋がれたまま歩いた扉の先には、拍手と歓声で沸きあがる式場が待っていた。
白い床に敷かれた真っ直ぐ伸びる赤いカーペット。
途中には私達を指すアイビーの花が飾られていた。
みんなに見守られながら、私達はゆっくりと歩みを進める。
進んだ先の小階段を上がると…………
「えっ! リンツさ――――女王っ!?」
「うふふ、私、ハリスベンでは女王と同時に牧師のトップも兼任してるのよっ」
片目を瞑り驚いた私とケイを見て嬉しそうに小声で話すリンツさん。
まさかこんなサプライズを受けるなんて想像もしてなかった……。
するとリンツさんはコホンッと咳払いを一つつくと、
先程までとは雰囲気を変えた。
「我らが神の目下に与るこの瞬間、二人の永遠なる誓いを立てます」
ケイは半歩前に出た。
「ここにおりますケイ・イリアス・ベルカは、いついかなる時もユリア・グレース・ルイスただ一人を愛し、支えることを誓います……」
続けて私も前へ足を出した。
「ここにおりますユリア・グレース・ルイスは、ケイ・イリアス・ベルカと人生の行く末を共にすることを誓います……」
誓いの言葉を言うと、私達の前に二つの指輪が差し出された。
私達はそれぞれの指輪を手にすると、お互いの左手を出し、薬指にゆっくりと通した。
「では、ここに誓いの証明を…………」
ケイは私の方を向くと、顔を隠していたベールをそっと上げた。
私もケイのベールを上げ、メイク後の顔を初めて直接目にした。
ケイ、とっても綺麗……
普段がいい意味で女の子らしくない、格好のいい振舞いが多いだけに、一層美麗に見える。
私、こんな最高な人に一目惚れされたんだ……
今更だけど、嬉しい。嬉しすぎて泣いてしまいそう……。
ケイ。私ね、剣闘で初めて貴女を見た時に、本当は私も一目惚れしてたの。
でも当時の私はその胸の高鳴りが恋だと知らなくて、勝手に怒ってた。
婚約が決まってからも冷たい態度ばかりとってたけど、
それでも毎日顔を出してくれて、貴女と一緒にいる時間は本当に楽しかった。
私がどんなに我が儘を言っても、ケイは優しい笑顔で聞いてくれた。
私が世界をもっと見たいと言ったら、ケイはデートと言いながら色んな所に連れ出してくれた。
私が怒った時も、泣いた時も、貴女は私の側に居続けてくれた。
優しくて、かっこよくて、たまに可愛くて……
そんな貴女の側にずっと、ずーっと居たい。
私を選んでくれてありがとう。
私の全てを、貴女に捧げます―――――――――
ここまでご覧いただいた皆様、本当にありがとうございました!!
私の初めての小説だったこともあり分からないことが多く、ここまで来るのに時間をかけすぎたと思っています。
それでも日々読んでくれる皆様やブックマークや評価、時に感想に支えられながら書く事ができました!
ユリアたちのお話はここで終わりです。
ですがもし、またどこかで会う機会がありましたらその時はよろしくお願い致します!
改めて、「王女の私は婚約相手になったハイスペックな女の子の騎士に悩まされています!」をご覧いただきありがとうございました!!