私の知らない事実
さっきから一体何なの。
泣き出したかと思えば、今度はずっと昔の女王の末裔……?
勝手なことばかり言って、何か企んでいるに違いない。
「そんなの嘘よ。かつての王家が今の王家に移り変わる当時には子供や親族はいないって資料にもあって……!」
「それは改ざんを事実にすり替えるための材料に過ぎない。生き残りの私たちの存在は、今の王家にとって都合のいいように歴史の中に消されたのだ。私たちは何の罪も背負っていなかったはずなのに……!!」
地面を殴りつけ、お婆様とお父様に睨みを利かせる。
その目を向けられた二人は恐れるかと思いきや、下を向いて何か意を含んだような表情をした。
そんなことがあるはずがない。
私は二人に聞いた。
嘘なら即座に否定してくるはずだから。
「この人の言っていること、嘘よね? 私が今まで教わってきた歴史は改ざんされたなんてっ―――――」
私はそれ以上聞かなかった。
返されたのは言葉ではなく、悲しい表情で見つめてくるお婆様と、首を横に振るお父様だった。
こんな事って……
「かつての女王であり、私の先祖は当時の荒れた内政と他国との衝突を収めようと尽力していた。にもかかわらず、お前たちの先祖が女王の椅子から引きずり下ろすだけでなく、地位も全て奪い地の底へと落としたんだ!!!」
歴史を変えるなんて大きな事を私に隠していた上で、偽りの作った歴史を私に教えた……?
私だけじゃない。もしかしたらこの国の人達も同様に……?
「これが真実だ、ユリア・グレース・ルイス。私の大切な家族は偽りの歴史の中で誰にも知られることなくこの世を去った。その時に私は誓ったのだ……。今の王家を断罪し、驕り座る玉座から引きずり下ろすとっ!!!」
分からない、何も分からない……。
私が真実だと思っていたことが嘘で、お父様たちはそれを知っていて……。
どこまでが真実でどこまでが嘘で。
どうしてそんな大罪的なことを隠してきたの……。
どうして隠していながら普通に日常を送れてきたの……。
この事実が国民や世界に知られれば許されないどころの話じゃない。
私たちは世界に末代まで恨まれ、蔑まれ、呪われる。
「そうだユリア・グレース・ルイス。私たちは生まれた時から改ざんされた歴史によってその恐怖に襲われてきた。ようやくわかったか、私たちの苦しみを、怒りを、屈辱を……っ!!」
頭が痛い。息が苦しい。
色んな事を整理しようとしても混乱したままで、頭が今にも弾けてしまいそう!
「ユリ、ア……っっ!!!!」
汗が止まらない。涙も出てきた。
どうしたらいいの、私はどうしたら!!
「辛いだろう! 苦しいだろう! 私たちの絶望をもっと味わえぇっ!!!!」
意識が朦朧として。
まずい。もう、だめ…………――――――――――――
「ユリアさんんんっっっっっっ!!!!!!!!」
「!? お前たちは――――――っっ!!!!!」
「吹っ飛べぇぇぇぇ!!!!!!」
「ぐぅっっっ―――――!!!!」
今さっきまで私の隣にいたエリザは、
勢いよく飛んできた何かに押されて奥へと転がっていった。
「大丈夫……じゃなさそうだな」
「私たちが来たからにはもう安心でしてよ、ユリアさん!!」




