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反対する理由

「認めない……!貴方がユリアの婚姻者になるなんて断じて認めないわ!!」



 前に出てきたお婆様は、ケイの顔を見るなり怒気を強めた。



 そういえば、私はまだお婆様がケイとの結婚を反対する理由を聞いていないんだった。

 

 思えばお婆様がケイと最初会った時は温和なお婆様だった。

 態度が一変したのは…………私がケイの紹介をした時……。


 紹介で言ったのは、ケイが私の専属騎士であり婚約者であること。

 あとは、名前……?


 推測しようにも判断材料が少なすぎる。

 もうここまできたら聞くしかない!!



「お婆様。どうしてそこまで私とケイの結婚に反対するの? ケイがお婆様に何かした? 何か不都合なことでもあるの?」

「不都合は……あります」



 お婆様は大きく深呼吸をし、目を開けると、ケイに向かって真っすぐに指をさした。



「貴方があの()()()()の孫であることが問題なのです!!!」



 お婆様は僅かに声を震わせた。


 ケイのお婆様、イリアス・フレイラさんが女王であるお婆様と何か関係が……?

 でも今までそんなことイリアスさんから教えてもらわなかったし、レイラさんも知っているような感じではなかった。


 イリアスさんは一般人でお婆様は生来の女王。

 とても接点があるようには考えられない……。



「お婆様。お願い、話して。でないと私は今すぐ王女の座を降りて、ケイと結婚するために国外に出る……!」



 宣言すると、周りにいた使用人たちから驚きの声がざわつき、お父様とお母様も動揺しているようだった。


 

「ユリア……」



 見えなくても、ケイが私のすぐ後ろで、私に王女の座を放棄させる決断までさせたことへの自省に駆られていることがわかる。


 それでも私はこの決断を変えるつもりはない。

 今の私にとってケイと結婚できることに比べれば、王家や富、権力といったものはただの飾りにしか思えないのだから。


 

 

「お願いします、お婆様。これ以上、私を失望させないでください……」

「…………ユリア。あなたは本当に大きくなったのね……」



 感慨深げに私を見ると、お婆様は壇から下りてすぐにあった横長の椅子の端に座った。



「これは誰にも話したことのない昔の話よ……」



 私とケイも壇から下り、同じ椅子の端に座った。



「幼い頃の私はとても手を付けられない子どもで、よく城壁の外に出ようとして使用人たちを困らせたわ。そしてある日、ついに城壁の外に出る事に成功したの」



 お婆様がそんな元気の溢れる子供だったなんて今からは想像できない。

 年月が経てばやっぱり人は変わるのだろうか。



「当時の王都は今ほど治安が安定しておらず、窃盗や事件も日常的に起こっていたの。そんなことを知らない子供の私は、街の路地裏を進んで行ったわ。そして、偶然にも事件の現場に遭遇したの」



 王女だった当時のお婆様は衣装も一般人が到底手に入らないようなものだっただろう。

 そうなれば当時の情勢と考えればほぼ必然的に……。



「私を一目見た相手は目の色を黒にして捕らえようとした。私は必死に逃げて、逃げて……道が分からない私は逃げているうちに迷路のような路地裏で迷子になったの。そしてとうとう行き止まりにあたり、相手のゆっくりと近づいてくる足音と影が、使用人たちの言う事を蔑ろにし城を飛び出した自分の浅はかな考えに対する後悔と、感じたことのない恐怖を植え付けたわ」



 きっかけは違うけど、ケイを探すために私が初めて王都に出た時のことを思い出す。

 私も走ることができなくて、どうにもできない後悔と絶望を感じた。



「そんな時よ。横にあった小さな小扉から誰かが私の腕を引っ張ったの。その中は真っ暗。突然のことで取り乱し大声を出そうとした私は口を強く押さえられ、身動きの自由を奪われたわ」



 次から次へと。金目に目がくらんだ人間はこうも残酷になれるのね。

 それほど昔は情勢が悪かったということだろう。



「おかげ追っ手は撒くことができたわ。けれど今度は別の何かに捕まったまま。外を見て押さえていた手の力が緩んだ隙を狙って、私は手を引きちぎる思い出嚙みついたの。そしたら痛がり唸る声とともに誰かを呼んだの。すると一つの灯りが点いて、相手と場所の様子が見ることができた。でもそこにいたのは、二人の女の子だった。私を捕らえていた子の名はイリアス、もう一人の子の名はヘンリー……」

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