カップリングセイバーズ
「皆さん、集まりましたね…………」
後ろ髪をひとつに束ねた小柄の生徒が、何やら真剣な面持ちで確認する……。
「各班リーダー並びに副リーダー、全員揃いました」
「それでは早速報告を…………」
横で話していた生徒は指示に頷き、ステージの中央に立った。
「先月半ば、ユリア様とケイ様は街に外出されました。その際に購入されたのはユリア様の好物であるサンドイッチと、ケイ様がユリア様にプレゼントして差し上げた髪留めになります」
「…………それだけですか?あの二人がわざわざ街へ出たのに、それだけで終わるはずがないですよね?」
問われた生徒はメガネをくいっと上になおした。
そしてそれを問われるのを待っていたかのようにニヤリと笑った。
「お二人はその後、学園の門の前で…………接吻をしました」
その瞬間、会場にいた生徒たちから歓声とも悲鳴ともとれるような声に沸いた。
話していた生徒は場を収めようとするが、誰もが興奮し聞こえていない。
そこへ、小柄な生徒が代わってステージ中央に立つと、騒いでいた生徒たちは徐々に静かになっていった。
「では次、第二班リーダー。報告を」
「はい。今月の頭、ユリア様はケイ様のためにとケーキ作りに初挑戦されました。完成までには多くの苦労をされ、時には悔しがられる表情も見受けられました……」
会場からは「ユリア様……」「なんと健気な……っ」と同情したり、涙する声が聞こえた。
「しかしここで、アザレアのユリア様の涙に誘われてか、ケイ様が颯爽と現れたのです……!!」
「キャーッ!ケイ様ーっ!」「ユリア様のお隣は貴女様だけです~~~!」
再び小柄の生徒が前に立ち、手を上げると会場は落ち着いた。
「続けて」
「ですが、ここで思わぬ事態が……なんとケーキの甘い匂いを嗅ぎつけたようで、イヴェル・アンフィニがお二人の間に入ってきたのですっ」
会場は一気にどよめきついた。
「そしてあろうことか、ユリア様がケイ様のために未完成ながらも丹精込めて作られたケーキを半分食べたのです……!」
生徒たちは顔を蒼白とさせ、ステージの上に立つ一人の表情を伺った。
その生徒は下に俯いたまま、肩をぷるぷると震わせていた。
「あのぉ……?」
顔を覗き込むように問いかけようとすると、床に力強く足を叩きつけた。
怒りの乗った荒々しい音が会場に反響すると、生徒たちはひぇぇと肩をすぼめた。
「イヴェル……アンフィニ……っっ!!」
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イヴェル・アンフィニが芝生で寝ているところに、大勢の足音が近づく。
その音が近くで止まり、イヴェルが目を開けると…………
「おぅわっ!?なんだなんだ!!」
「イヴェルさん。先において、ユリアさんと姉がケーキ作りをしているところに割って入ったようですね。それのみならず、そのケーキまで食べたとか……」
「あ~……あれは美味かったぞ~!見た目こそまだまだだったが、イヴには合格点ってところだったな~」
粛清……とどこからか声が聞こえた。
「連れて行きなさい」
「おい!イヴをどこに連れて行く気だ!!はにゃせ!話せばわかる!!あれは二人がいいっていったから―――――」
「問答無用ですっ!!」
こうしてイヴェル・アンフィニは、ワッペンを付けた生徒たちによって学園の奥へと連れていかれた。
その後のイヴェルがどうなったかは誰にも知らない。
こうして、ユリアとケイの日常は、また守られたのであった…………




