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新しい先生はまじめすぎ……?

 春になると、新しい顔が見られるようになる。それは生徒だけでなく教師も同じだ。

 私たちの新クラスにも、新しく学園に赴任してきた教師が担任になった。



「初めまして、セルヴィア・アルテと言います。私はこの春に教師の育成学校を卒業し、教師として務めるのはリーリオン学園が初めてです。なのでわからないことも沢山あり、迷惑もおかけすると思いますが、精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!」



 初々しさが感じられるが、真っ直ぐで爽やかな挨拶に生徒から拍手で迎えられた

 先生はその反応が嬉しかったようで、目に涙を浮かべて深く一礼した。


 教師の経験はこれからということで、この先何かがあるかもわからない。

 でも、私の中では先生として好印象だ。


 


「…………?」




 先生が何故かこちらを見ながらににこにこしている。

 何かおかしなことでもしてしまっただろうか……?


 何となく横を見ると、ケイは真剣な表情で先生をじっと見ていた。




「ケイ?どうかしたの?」


「…………いや、何でもないよ」



 ここで授業終わりの鐘が鳴ると、ケイはすくっと立ち上がり、私の手をとった。



「次は移動教室だね。行こうか」


「え?うん……」



 いつもならゆっくりしてから教室を出るのに。

 さっきの先生を見る目といい、何か思うことがあるのかしら……。





        ☆





「待ってください、ユリアさんっ」



 呼び止める声に振り向くと、アルテ先生が小走りで近づいてきていた。


 

「急に呼び止めてしまい、すみません。先ほどは私がユリアさんを見たせいで気を悪くされたなら、謝罪しておきたいと思いまして……」



 先生は申し訳なさそうな表情で服の袖を握った。

 

 まさか、見られたあとに私がケイと話したから誤解させてしまったのか。

 悪いのはこちらなのに、わざわざ謝りに来るいい先生だけに余計に罪悪感が出てくる。



「そんなっ、こちらこそ先生にそのように感じさせてしまって、謝罪しなければならないのは私の方です!」

「それではお気を悪くされたわけではないのですね……っ。よかった~!」



 一安心したようで肩を降ろすと、先生の目には涙が見えた。



「実は私、ユリアさんと同国の者でして……。自分が受け持ったクラスの生徒にあのユリア王女がいらっしゃることを知って、少しでもいい顔をしようと出過ぎた真似をしました……。以降、このようなことがないよう細心の注意を払い、私のできる事がユリア王女の学園生活をより華やかなものにできるよう邁進いたします。しいては―――――」



 途中からアルテ先生の言葉遣いや口調がお堅いものに変わった。

 胸を手で押さえ、まるで忠義の宣誓でもされているような、そんな気分だ。


 廊下を行き交う生徒たちも不思議そうに見てくるが、先生のそれは一向に収まる気配がない……。


 このままでは次の授業にも間に合わなくなるし、他の生徒の先生に対する今後の印象に悪影響を及ぼすかもしれない。

 

 

「……せ、先生っ。お気持ちは十二分に伝わりましたので!どうぞこれからもよろしくお願いします!それでは……っ」




 半ば逃げるようにしてその場から離れると、先生は再びしょぼんとした顔で下を向いた。

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